4-15 「奮戦、赤は■と出会う」
「じゃあ恭也、気をつけてな」
「おう。一志も気を付けて」
リクに対する反応は怪しかったけど流石にそれ以上追及することはしなかった。一応地図だけ共有して術者を無力化したらそれぞれ状況に応じて動くっていう打ち合わせだけはしておく。
「まぁやばそうだったら逃げて良いからな?複数人いるんだったら極論どっちか無力化すればどうにかなると思うし」
「そういうもんなの?」
「ケースバイケースだけどね、まぁどうにかなるって」
適当だな一志……いやでもこれくらい肩の力抜いといた方が楽なのかもしれない。一志と別れて地図に示してあった場所へ向かう。間違いなく戦闘になるだろうから緊張はしすぎない程度に、でも気を抜いてやられましたじゃ話にならない、ほどほどの警戒と余裕でいこう、うん。
「この辺り……あそこか?」
別の位相に行く……訳じゃなさそうだな、一見するとただの公民館みたいなところなんだけど……人の気配はしない。あれやっぱ位相違う?
「入口なさそうなんだけどな……」
何度も移動してりゃ気配でなんとなく分かる。とはいえ、見落としてましたじゃ話にならないからじっと目を凝らしてみたけど……それらしい場所はないよな?
「どうなってんだ……?」
考えられるのはここは囮で実は一志の方が正解だった、或いは巧妙に隠されすぎてて俺が気付けない、あとはもう純粋に俺が地図を読み間違えた。
「んー?これ、は」
微かな物音と、ぺとりとした嫌な気配。振り返るより先に本能が距離をとらなきゃいけないと俺に回避行動をとらせる、大きく前方へ飛び込むような形で回避と反転、振り返って見えたのは明らかにでけぇ化物!
「おいおい……流石にこいつは……」
おいコイツが術者だったらあまりにも筋肉詐欺だぞ。でも通りすがりの怪異なんだとしたら色んな意味でタイミングが悪すぎる!
「こちとら一般怪異に構ってる暇はねーんだよ!」
実は怪異とソロで戦うのなんざ初めてだってのに!!力こそパワー!!!みたいなやつの弱点って何だろうなァ!!!
「筋肉に弱点属性ってあんのかねぇ!!」
取り敢えず筋肉痛って痛いよな!痛がれ!!
「おおおおお前その筋肉は飾りかよ!?」
普通に殴ってきたぁ!?威力はちゃんと高いですねぇ!!じゃあ痛みに鈍感なのかな!?怪異がタンスに小指ぶつけて転げ回ってたら笑う自信はあるけどさ!
「あやっべ」
うっかりイメージしちゃった。クソデカタンス。
「上から来るぞー!!!」
お前サイズのタンスだからデケェ!!!あの速度で落ちてきたら床に穴開くね!?そうなったら流石に怒られそう!!
「タンスとお前、どっちが強いか勝負といこうやぁ!」
頭上から結構なスピードで落ちてくるタンスを、流石に怪異といえども無視は出来なかったらしい。あの大きさじゃそこまで速い動きは出来ないだろうという推測が当たったのか、怪異は両手を広げてタンスを受け止める体勢に入る。……これチャンスだな?
「お前、関節とかあるタイプかなぁ?」
イメージはダルマ落としのハンマー!くらえ全力の膝カックン!!
タイミングは丁度怪異がタンスを受け止めた瞬間。踏ん張るために普通は膝を使う、その曲がった場所がお前の膝だ!クリティカルヒットで怪異がぐらついた!
「そのまま下敷きになれ!」
如何な筋肉といえどタンスの重量には敵わないだろ!少なくとも俺はそう思ってるからそういうことになるはず!今この瞬間だけは俺がルール!!
「やったか!?」
あ、フラグっぽい。衝撃でほこりが舞い上がって視界が悪いけど、見る限り動く影はない。これで……いやこいつ通りすがりの怪異でしたわ、まだ目的達成出来てねえわ。
「さっさと探してとっ捕まえねえと……」
いやホントどこにいるんだろうな……あ、さっき地面抉れてたけど地下室とかない?
「んー……」
抉れた地面を覗いて見るけど、別におかしいところはないな……また透視でも使ってみようかと意識を少し逸らした瞬間、穴から何かが飛び出してきた!
「っ」
くっそ油断した!意識と意識の隙間で発生されちゃ対応に間に合わな……。
するり、涼やかな風が吹く。風というには少し重いけれど、人が通ったと認識するだけの重さは感じられなかった。くすんだ金色が視界を過る、俺と飛んできたものの隙間を縫うように白刃は煌めいていて、地面に宝石のような影を落としていた。




