4-10 「開戦、赤と緑は対峙する」
「あなたの隣にAI運送!どうもギルベルトだよ」
「押し売りは間に合ってまーす」
十人中九人は不審者と認定しそうな人に絡まれた。流れるような自己紹介をされたけどその程度じゃ不審者認定は覆せねーからな……。
「いやあ躊躇いのない不審者判定!照れちゃうねっ♪」
「おまわりさんこいつです」
「あ、ごめんごめん冗談冗談。布袋からの荷物届けに来ただけだから!」
ずるーっと明らかに質量無視したカバンから取り出されたのは一見シンプルな人形。え、会ったことないはずなのに造形そっくりなのちょっと怖……フミも感心するレベルでそっくりなんですけど……?
「あとこれはサービス、有効に使ってね」
ギルベルトさんから手渡されたのは……ドが付きそうなほどシンプルな人形?こっちに関しては辛うじて人型、ってレベルなんだけど、何に使うの?
「まぁ使い方は説明しなくてもなんとなく分かると思うよ!注意することがあるとすれば一つの依り代に二人以上の中身が入るとバグるから気を付けてね!」
「あ、うっす!」
定員オーバーしたらそりゃバグるよな!今回に関してはそんな気にすることはないと思うけど、覚えといて損はないだろ。
ギルベルトさんと別れて向かうのは次の中継地点!分かってたけど来華、中継地点にいるヘレティックの妨害をして回ってるんだろうな、このまま逃し続けてたら全部の中継地点回っちまうぞ。
「次でぜってー止める……!」
「大丈夫だよにーちゃん。もう来華逃げないから」
いやに確信を持って告げられた言葉。根拠を聞くようなことはもうしないけど、フミがいうんならもう実質最終対決ってことなんだろう。それならそれで対策するだけだ。
「おれ、にーちゃんに会えてよかった」
「別れの挨拶なら聞かねーぞ」
「違うよ。言っときたかっただけ」
本当だな?嘘だったら全力で泣き喚くからな??俺の全力の泣き喚きはあの森羅万象に関心がない奏さんですらドン引くんだからな!?
どうせ上空に出るから足場のイメージだけは頭の隅っこにおいて世界に潜る。どの世界よりも空気が軽い……違うな、乾いてるのかこれ。
「火ぃつけたらよく燃えそー……」
やらないけど、流石に今やる必要ないからやらないけど!大体燃えそうなモンがないから難しいってもんよ。
「逃げないって聞いてたが……マジで逃げねえんだな、お前」
「……」
ちょっと作戦があって今対峙してるのは俺だけだ。因みに作戦立案は俺じゃないから詳しいことはなんも知らない。まぁ好きに暴れて良いって言われてるし、俺はノエルさんの分の一発を託されてるわけだしでやること自体は決まってんだが。
「悪いが、俺ァ手加減とかそういう器用なことはできねぇししねえぞ。全力でお前を叩きのめす」
「……敵対するなら、容赦はしない」
お?お前もやる気か???無抵抗じゃないなら大歓迎だぞ???
来華が手にしてるのはツルハシ。……もしかして俺が知らないだけでツルハシって主要武器トップ3に入ってたりする?まぁ鋭いもんな先っちょとか。剣で良いような気はすんだけど。俺は勿論片手剣で相手するがな!
「最初からフルスロットルだぁ!」
一歩目から加速して一気に距離を詰める!鍔迫り合いなんてまどろっこしいことはさせねぇ、お前が構える前に叩く!そもそもツルハシの鍔の位置を俺が知らねえからな!
「……俺と対峙するのに、速さは無意味」
「っ……!言ってくれるじゃねえの……!」
絶対懐に入ったはずなのに、寸前でツルハシが間に割り込んでそのまま弾かれる。筋力的にはトントンっぽいんだが……演算者がある限り、多分”絶対”以外の全ては相手の有利な状況に持ち込まれる。実力に激しく差があれば消耗させて粘り勝ちとか出来るらしいんだけどな、生憎俺じゃ先にへばるのは俺の方だ。
遠心力、重力、ありとあらゆる力を利用してひたすら来華を攻め立てる。イメージは一番簡単な足場となんちゃって瞬間移動だけに留めて、とにかく相手を観察する。対応速度、能力を使うライン、戦い方の癖……こいつが反応出来ない、反応出来ても対処出来ない一撃をイメージするために来華の理解を深めなきゃいけない。
「普通にフィジカルつよつよしやがって……!」
こいつ初動に反応した時点で能力使わずに対処してくるなぁ!!反応速度激早なのに対応力も高いの、戦闘経験が活きすぎてるのかそれとも元々才能があるのか。どっちにしろ爆速で選択肢叩きつけると逆に難易度あがるのは理解した。




