4-8 「雲をつかむような」
唐突に足元すり抜けるよりは分かってて落下する方が心構え出来て良いな、当たり前だけど。ずるりと入り込んだその先で……見つけた、今度は逃がさねえ!
「一歩踏み込み――――」
二歩目で背後!よし決まったァ!
「っ」
「っ来華!!」
フミは俺の腕から飛び出して緑の奴……来華へと手を伸ばす。俺のなんちゃって瞬間移動じゃ眉をちょっと上げた程度だったのに、フミが飛び出したのを見て明確に……苦しそうな顔してる?
「っ…………、乱入者と接敵、排除する」
「待って……!」
くっそ普通に俺狙ってきやがって……!両手フリーな俺はちゃんと防御も反撃もすっからな!?何なら両手塞がってても暴れるぞ俺は!!
「おう逃がさねーからな……!」
「…………」
はっはっは動揺するのはフミ相手だけってか!それならそれで好都合フミ相手なら確実に動揺するんだろお前ぇ!未来視がなんぼのもんじゃい!
「……りだ」
「逃がさん!」
俺に攻撃してきた時点でお前に逃げる選択肢なんてねーんだよ!!!全身トリモチトラップ発動!!因みに俺も動けねえ!
「っ!」
「来華!」
フミが何度も名前を呼ぶ。……がらんどう、って聞いてたけどちゃんと苦しそうな顔するじゃんお前、戦うことしか知らないとか言われてたのに、ちゃんとフミのこと見てるじゃん。
「来華。もういいよ」
「…………」
「このままじゃお前が消えるだけだよ。リューイはお前のこと、駒としか思ってないじゃんか」
「…………それでも」
伏せられた瞳が色を帯びる。コイツ、この場に及んでまだ逃げる気か……!
「らいっ……」
「っフミ!?」
まずい攻撃がフミの方に行った!咄嗟に手を伸ばしたその先で、フミは被弾する前にその場から消える。
「……子供相手に攻撃するの、どうかと思うんだけど」
わ、知らない人。何か気配がどことなくシエルさんに似てる人が、フミを助けてくれたらしい。それでホッとする暇もなく、俺は反射的に拳を握る。
「子供相手に何やってんだお前ぇ!!!」
あ、思ったよりストレートに入っちゃった。能力とか一切使ってなかったのに、アイツ、避ける気配すらなかったぞ。
「……離脱する」
「あっおい!」
クッソ殴ったせいで逃げられた……!いやでもあれで殴らない選択肢なんてねーから結局気絶するまでボコるしかなかったじゃねーか。
「怪我無い?大丈夫か?」
「うん……」
フミの表情また暗くなったじゃねーかあのヤロー……!やっぱ次会ったら何が何でも殴る。フミは殴らないだろうからフミの分まで殴る。
「お前恭也か?俺ノエル!取り敢えず移動する!」
「うっす!恭也っす!」
ノエルさんって確かキレた紫狼さんを止めた人!人懐っこい笑みを浮かべてる姿からシエルさんが連想されるはずないのに、なんでかシエルさんがちらつくなぁ!迅速に走り出したノエルさんを追ってフミを抱えて走り出す。
「あの緑の奴、お前の知り合い?」
「いや、こいつ……フミの探してる相手です!」
「でもあいつ、フミのこと攻撃した!」
「ほんとそう!」
ノエルさんもぷんすこー!みたいな感じで怒ってることを伝えてくる。感情分かりやすくていいな……初見クール系に見えたけども。そんなこたぁなかった。
「…………来華」
拒絶されて、あまつさえ攻撃されたらそりゃショックも受けるよな……!正直すぐ追いかけなきゃヤバいんだけど、フミのメンタル的にそれどころじゃなさそう。
「恭也、ソウと一緒に別の中継地点に行ったって聞いてたんだけど?」
「あ、俺のところは敵倒して捕まってた樹助けて色々あってここに来ました、ハイ」
「おー流石だな!青じゃ倒せないから俺は捕まってたえっちゃんとくーちゃん引っ張り出そうとしてた!」
「え、えっちゃんとくーちゃんいるんすか!?」
「悠人もいるぞ?」
おい衝撃の事実来たぞ……!!しれっと辿り着いた先に座り込んでる悠人さんと、結晶の中を泳いでるえっちゃんとくーちゃんがいたし。泳いでるのは訳分かんねーって。
「悠人さん!」
「あれ、恭也くん。へるぷー」
あ、悠人さん足結晶に取り込まれてる……一度えっちゃんとくーちゃんには下の方に移動してもらって、上の方をハンマーでカチ割る。うーん別に内部が液体だったりはしないんだけどな……ちゃんと泳いでるなえっちゃんとくーちゃん……。
「たすかったーありがとー」
「悠人さん、捕まってたんすね……」
「緑の子に襲撃されて、逃げたはいいけど野生の結晶に取り込まれた」
「巻き込まれ事故じゃねえか」
「ほんとだよ」
悠人さん、来華相手に逃げ切ったのか……逃げ切った先で結晶に取り込まれて動けなくなって?えっちゃんとくーちゃんが結晶内に取り込まれた結果悠人さんは能力が使えなかったらしい。そんなことある???
「スマホ落としたのが痛かった……」
「あ、スマホは拾ってヘレティックにあります。多分布袋さんが持ってる」
「わーい」
うーん悠人さんと会話すると緊張感がどっか行く……。口調がゆるゆるっていうよりかは、常におんなじテンションで話してるからなのかね……。
「今の状況は?」
「俺はフミ……コイツと一緒に例の緑を追ってます」
あ、フミがえっちゃんとくーちゃんに絡まれてる!?やめてあげてフミが困惑してるから!!
「んー……あの子の情報は?」
「えと……名前が来華で色彩が緑、何か訳アリで能力は未来視系?でフィジカルがつよつよ」
「なるほどー……能力に関してだけど、”演算者”って出たよ」
「オペレーター?」
「うん。色々試してみた感じ……演算結果の強制とか、そういう感じでこっちの行動を制限してくる」
悠人さん、逃げ切るだけじゃなくて色々試すだけの余裕があったんだ……いや余裕なのかは分かんないけど、少なくとも色々検証できるくらいの時間は稼いでたってことだよな。やっぱこの人つえーわ。
「あと、訳あり……に関係あるのかは分かんないけど、あの子、実質人形だよ」




