4-3 「願いとは誰が為か」
ひゅ、と息を吸い損ねて喉が鳴る。色彩がない、それはつまり玲士だって被害にあう可能性があるってことじゃねえか。
「待ってください、この結界の範囲、この街全体でしたよね?そんなの、いくらなんでも雪代さん以外が出来る訳がない!」
「本来ならな。ただ、複数人且つ生死を問わないなら……」
「……!!だから、色彩を持たない者が対象……」
「恐らくはな」
全員言葉が出ない。わざわざ自分たちは生き残れるようにして、そうまでして楽園を開いて、血に濡れてでも楽園に行きたい理由って何なんだよ。
「止める方法はないんですか!?」
「直接止めるのはまず無理だ。とにかく人手が足りねえ。……だから、術式の中継地点を叩いて時間を稼ぐ」
ピロンとスマホが音を立てる。藍沢先生から送られてきた地図は、規則正しく印がついていて、言ってた中継地点だろうっていう予測がついた。
「まずは六ケ所。全て叩けばリソース不足で遅延が発生する。そして遅延が発生すれば、術者を炙り出すことも可能になる」
「六ケ所……」
「青藍、紗弥、ノエルが今動いてる。大雅もいけるな?」
「はい」
「俺も行きます!」
「お前を単独行動させるのは認められない。お前はまだ一度も一人で戦ったことないだろ」
「でもっ……」
玲士まで巻き込まれてるのに何もしないなんて納得できねぇ!色彩赤が単独で戦うことはあんまりないって言われてたのは覚えてるけど!あんまりってことはゼロじゃねえんだろ!
「一人がだめなら、俺が一緒に行くよ」
「っソウさん!?」
「え、ソウさん!?」
「お前……」
ソウさん、ずっと寝てたんじゃなかったのか……まだ本調子じゃないだろうに、毅然とした表情で立つ姿に大雅も藍沢先生も反論出来ず口を閉ざす。
「……言っておくが奏じゃないんだぞ」
「はい」
「本調子でもない上に本気も出せないだろお前」
「俺が強いこと、藍沢先生も知ってるでしょう?」
「…………ああそうだな」
もしかしてソウさん、本来だと無茶苦茶強い人だったりする?いや、前の戦い方見る限り生半可な相手じゃ傷付けるどころか触れることすら出来ないんだろうなって思ったけど。
「とにかく優先するのは中継地点の妨害だ。最悪相手が倒せなくても、六ケ所全ての中継地点が一瞬でも無力化されればいい」
時間稼ぎなら自信あるぞ。ひたすら邪魔したり煽ることだけはすっげー得意。不本意だけど戦闘するよりも得意かもしんない。不本意だけど。
「良いか、絶対に無茶はするなよ。まだ例の緑もいるんだからな」
「はい」
「分かりました。……恭也さん、ソウさん、お気をつけて」
「大雅も気を付けてね」
シエルさんと藍沢先生に見送られて外に出る……なんか普段より怪異多くね?右みても左みても上みても目が合いそうなんだけど!?
「なんだか……怪異活発すぎません?」
「大規模に能力を使ってる影響だね。いつもより活発だから目が合わなくても襲ってくるかも」
ソウさんの言葉の途中にも怪異が一体飛んできて大雅に処理されてた。普通に邪魔だしもしかしなくても辿り着くまでも一苦労なパターンだな?
「移動しながらだけど少し説明しようか。恭也くん、色彩の俗説とか知らないっぽいし」
「あ、助かります」
俺は走りながら、ソウさんは空中を飛ぶようにして移動する。ソウさんのそれ、目の色に変化ないってことは能力じゃないんです……?
「色彩には意味があり、役割がある。青は人外、緑は生贄、紫は楽園……そんな俗説を未だにリューイの上層部は信じているし、だからこそ紫を黙認する。彼らは楽園を天国か何かだと思っている節があるからね」
青は人外って俗説なんだ……。奏さんみても納得しかなかったんだけどな……じゃあ人間でも色彩青だったりするのか。肩身狭そう。
「色彩に絶対はない。能力の傾向の指標になれどそれが全てな訳ではないし、意味はあれどその色彩を持つ全てに適応されるわけじゃない。……本当に、馬鹿げた噂だよ」




