4-2 「誰が楽園閉ざしたか」
どんよりと曇る空は今が何時かを把握させる気が全然ない。何も出来ないってのは精神的に結構きついんだけど、流石に独断で動いて迷惑かけるのは本意じゃないから大人しく話し合いが終わるの待ちだ。
「恭也さん、ちょっといいですか?」
「ん、話終わった?」
「ええ。……恭也さんにも関係があるので、話だけでも」
なんだ?大雅が凄い言い淀んでる……?もしかして思ってた以上にこの状況ヤバかったりする?まだ動けないシエルさんの傍へと集まれば、シエルさんの表情も硬い。
「今回の騒動、青藍くんが捕まえた相手からの証言で楽園教、ひいては魔術研究会が手をくんだらしい」
「楽園教……は、分かりますけど、魔術研究会……?」
楽園教の方はちっさい頃家に勧誘が来てたし、結構有名だから知ってるけど、魔術研究会の方は聞いたことないような……あるような?ぶっちゃけ魔法とか魔術とかを使えるようになるーみたいな勧誘するとこ、絶妙に名前が似てるところばっかで覚えてねえんだよな……。
「どちらも楽園への到達、融合を目的とする組織ですよね。ただ、彼らの提示する手段からして思想が噛み合うとは思えませんが……?」
楽園。詳しくはないけど知ってるぞ。人類の到達するべき最終地であり、人類が最初に生まれた地……とかなんとか。全然興味がなくても小学校とかで習うからほぼ確実に名前だけなら聞いたことあるはずだ。……まぁ言われなきゃ思い出せない程度には俺興味ないんだけど。
「楽園教は鍵を用いて楽園を開くことを目的とした組織、そして魔術研究会は、聖杯を用いて楽園を呼び出すことを目的とした組織だよ。別の言い方をすれば、楽園教は歴史的観点から再現することでの実現を模索し、魔術研究会は学術的観点から理論を組み立てることでの実現を模索している」
「鍵……に、聖杯?」
鍵、鍵……あー習った気はするけど覚えてねえぞ。楽園は……閉ざされてる理由があったんだっけ、あれ?違うな……追放されたんじゃなかったか?違う?何か別のモン混じってね?
「旧時代では楽園から追放された、という通説がありましたが。世界の改革と共に常識などが再定義された今の時代、『楽園はほかならぬ楽園の子によって閉ざされた、故に神とヒトは隔絶しヒトは存続のために奇跡を行使する』、と言われていますよね」
「博識ぃ……」
「奇跡を行使するための起爆剤、あるいは後の時代普遍となりうる力の前借り。未来を先取りするその具象化を、聖なる遺物になぞらえて聖杯と呼んでいて……厳密にいえば聖杯というのは膨大な奇跡を集積し実行することを目的とした器、なんだよね」
……話を聞く限り過去から学んだ奴と未来に学んでる奴とじゃ殴り合いのけんかになるよな?どうやっても手を組めなくね?てか、奇跡っていわれてるの、ある意味能力みたいなもんか……。
「楽園、鍵、聖杯……正直人手がいくらあっても足りないのは事実。リューイで囁かれていた通説を踏まえた上だと、……緑の色彩を外に出すのはリスクが高すぎる」
「でも、四の五の言ってる場合じゃないでしょう。あれだけ青系統を忌避していたリューイが紫””だけ””は黙認していたんです、今は無事でも、確実に狙われる」
「紫……」
そういやヘレティックで青と緑はいっぱいいたけど紫は見てない気がする。紫……人外でテンション型ってことだよな?実は色彩って能力の指針以外にも何か別の意味合い持ってたりする?青の呪いとか、まだ良く分かんないけど緑も何かあるっぽいよな。
「っおいシエル!」
「藍沢先生?どうし……」
「どうしたもこうしたもねぇ。……不味いことになった」
スマホ持って飛び込んできた藍沢先生が苦々しい表情で画面を見せる。何か数式みたいのがいっぱい書いてあるけど……なんだろうなこれ。シエルさんも少しだけ目を細めて聞き返してるし。
「それ、解析結果ですよね?」
「ああ。……この結界は、『範囲内にいる色彩を持たないものを生贄として』聖杯を起動させる」




