3-14 「継ぎ接ぎの操り」
「あの子は傀儡使われてなかったね。ただ……あんまりあの子に勝つのは現実的じゃなさそう」
「と、言いますと?」
「こっちの動きが読まれてる……未来視とか持ってるっぽかったんだよねぇ。フィジカル強い子に予知系つけるのは反則だと思わないかい?」
「どれくらい強いのか、体感を聞いても?」
「大雅くんとおんなじくらいには動けるぜあの子。全体的に高水準で、特にテクニックと威力が凄い」
「……あんまりおんなじタイプとはやりあいたくないですね」
んーシリアスな話してら。鎮さん、本来の姿があの姿なだけで普段はちゃんと人型だった。……能力使ってあの姿じゃないっていう部分は、もうそういう妖怪なんだなっていう納得で済ませておこう。妖怪なら人の形してなくてもおかしくないもんな、うん。
「シエルさんに鎮さん、それに推定悠人さん……特定の色彩、という訳じゃなさそうですよね?」
「そうなんだよねー。うちへの嫌がらせ……だとしたら、ちょーっと手が込みすぎてるし、何より朱鳥くんにちょっかいかけてる辺り、冗談じゃすまないでしょう?」
現状、事態が解決するどころか謎が謎を呼んで混沌と化してるんだよな……。カギを握ってるんであろうリューイ所属の緑、見つけたところで無力化出来るか厳しいところっていうのが一番の問題点かもしれない。
「因みに、ルマさんはどうしてあんなところに?」
「んー?あのね、綾華の気配がした!」
「え」
「え?」
「おやぁ?」
大雅と鎮さんが明らかに変な声出したな今。このパターンだと……本来この辺りにいないとかそういうやつ?
「あの、綾華さん少し前に華蓮さんと長期任務に出てるって聞いたんですけど」
「俺もおなじー」
「そうなのよー!だからびっくりして追っかけた!」
「えと……つまりそれって……?」
どういうことだってばよ。同じ気配なのに本人別のところにいるはずとかドッペルゲンガー?普通にルマが勘違いしたっていうオチ?
「……可能性としては、勘違いか何らかの事情で本当に帰ってきていたか、……それ以外か」
「前者二つのどっちかであってほしいよね。流石に二度目がないように全員警戒してるはずだし、華蓮くんが何も言ってないから大丈夫だとは思うけど」
……それ以外、って何だろうな。言葉を濁しただけで明らかに特定の何かを指してるんだろうけど。気配同一で勘違いと本人以外だと……双子とかそういう能力とか?でもそれだったら別に言葉を濁す必要性はねえよな……。
「取り敢えず……私と恭也さんはヘレティックに戻りますけど、お二人はどうします?」
「ミコ待ってるからおうち帰る!」
「んー……一旦情報持ち帰るかな。青藍から呼び出しくらってるんだよね俺」
なんでも、鎮さんはその青藍さんなるひとからの連絡に気を取られて襲撃を受けたらしい。タイミング的に生存確認のタイミングかな。返信してないらしいから騒ぎになってそう。
「恭也くん、また今度じっくり話そうねー」
「はなそーねー!」
「うっす!」
鎮さんとルマと別れて、大雅と一緒に今度こそヘレティックへと向かう。鎮さんとのおいかけっこで相当路地進んじゃったからな……帰り道が長い!
「なぁ大雅、さっき言ってたそれ以外って……なに?」
しれっと何でもない風を装って聞いてみる。俺に言いたくないんだったら誤魔化すだろうけど、ま、そのときはそのときの精神でぶつかってみれば、意外にも大雅は一切言い淀むことなく返答してきた。
「能力の抽出。簡単な話傀儡のような事例ですね」
「能力の抽出……藍沢先生もいってたな、傀儡が人工的に抽出された……とかなんとか」
あれと一緒の事例、そんでもって鎮さんが言ってた”二度目”。……それはつまり。
「傀儡は元々ヘレティックにいる関係者の誰かが持ってる能力だった?」
「当たらずとも遠からず、ですね。……傀儡は元々、私が使う能力の一種だったんです」
当人!!?!!!!?いやでも大雅、能力を使うことはあんまりないだけで使ってはいるよな?能力の一種ってどういうこと??
「私の能力は守護者、守護に特化した戦闘能力です。傀儡となった技は不可糸……自由に糸を操り、拘束などを行うものだったんですよ」
「あ、最初っからあんな能力じゃなかったのね……」
「やろうと思えば出来ましたけど、正直自分で戦った方が早いので」
強者のセリフじゃん。まぁ大雅の素の身体能力的には大正解なんだろうけど。
「ソウさんが青の呪いを使われたとき、それこそ全て投げ出す勢いで助けに行きました。罠があると分かっていて飛び込んだようなものです、当然対策も練られ痛手も負い、代償として能力の一部を抽出され今こうして利用されている、という訳です」
大雅は自嘲してるけど、内容は全然笑えねえ……。ソウさんを救うのがどれだけ大変だったのか、っていうのが情報明かされる度にイメージの上を超えてくんだよ。
「じゃあ大雅は今、その不可糸は使えない感じ?」
「そうですね」
ひっでぇ!能力盗むのはドロボーだぞ!?青系統への仕打ちが酷すぎるって!!というか恵斗からすれば友人の一人は死にかけてもう一人は能力の一部奪われたんだろ?そりゃあんだけキレもする。会話しているうちに路地の出口が見えた。
「……あ」
踏み出した足が違和感を捉える。水中とか空気圧が変わったときとか、そんな感じの気配が踏み込んだ足から上へ、上へと全身に纏わりついてきた。
「こ、れ」
いつもより気持ち悪い。手触りが悪いっていう訳じゃなく、寧ろぬるんってしてるけど……どこまでいっても静電気で離れない梱包材みたいな、そんな気持ち悪さがある。
隠すためだけじゃない、これは多分、逃がさないためでもある。今すぐ引き剥がしたい感覚が全身を襲っても逃げ場がないだから仕方ない。ああそっか、いつもは本当にいやなやつにだけ隠してたから、寧ろ手放そうとしてたから。
「ちがう、じゃん」
違うんじゃん。嘘つき。誰でも出来るっていったの、やっぱお前普通を分かってなかったんだよ。だからおれ、一緒に行こうって言ったのに、どうして。
『ここから先は』




