3-11 「使用確認とかないらしい」
「……すみません、お二人とも、少し医務室の方へ……」
お?大雅が説明もそこそこに俺とソウさんを医務室の方に促してくる……俺の耳には特段なにも聞こえないけど、もしかして誰か来た?
「……大雅」
「大丈夫です。手加減のやり方は覚えてますから」
んー……やっぱ誰か来た、しかもあんまり嬉しくない訪問者って感じだな。手加減とか言ってるから万が一ってことはないんだろうけど。ソウさんと一緒に医務室の方へ移動すれば、大雅は扉を閉める前に一度にこりと微笑んだ。
一応、前に一回出来たからやろうと思えばあっちの状況は把握出来るんだよな俺。ただ完全無防備状態になるのはちょっと怖すぎるから……よし、壁をモニター代わりにしよ。
「藍沢先生、ここにあっちの様子映していいです?」
「ああ良いぞ。扉に張り付かれないんだったらなんでもいい」
ソウさん、一応張り付いてはないんだけど……いや目を離した隙に張り付きそうな動きしてるなこの人、大雅は心配させないように微笑んだんだろうけど、全然ソウさん納得してないなこれ。
ソウさんが隣に座ったのを確認してから、壁に映像を映し出す。音も一応調節……できそうだな、うん。監視カメラのイメージ、戦闘中じゃないからかもしれないけど全然疲れなくて楽。
「大分使いこなしてるな」
「頑張りました!」
定期的にシエルさんとか陽翠さんにしごかれた甲斐があったぜ……!戦闘に関してはやっぱりまだひよっこらしいけど、それ以外ならそれなりに出来るようになったからな!
「あれ?シエルさん……」
「…………」
おかしいな、見間違いじゃないなら大雅と対峙してるのシエルさんなんだけど。もしかして普通にソウさんに話聞かせたく……いや、さっきの手加減ってくだりがかみ合わなくなるから……どういうこと??
シエルさんも大雅も、何も言わないし向かい合ったまま何の反応も見せない。大雅の長い髪だけが少しだけ揺れて……急激に世界が動き出す。
「っ……!?」
『手加減はしてあげますよ。正気じゃない相手を怪我させるほど見境なしじゃないので』
『はは……お優しいことで』
正気じゃないってどういうこと!?ノーモーションで襲い掛かってきたシエルさんに大雅は一切の焦りを見せずに対処して、それどころか余裕そうな反応してる。シエルさん、会話は出来てるけど様子は間違いなくおかしいし、何というか、苦しそう……?
「……趣味の悪い」
「どういうことですか藍沢先生!?」
「”傀儡”っていう……自意識残して対象を操る人工的に抽出された能力だ」
人工的に?抽出?言葉通りに受け取ると作られた能力だけど今は汎用性がある、あるいは使用者が違うみたいな意味合いになってない?どういう意味?
俺が首を傾げてる間にも大雅はシエルさんの攻撃をいなし続けてる。大雅、能力なしで身体能力高かったから物理攻撃相手だと全然危うげがないんだな……。シエルさんも抵抗してるのか時折不自然に動きが止まるし。
『気絶でいいです?適当に縛って転がしておいても一向に構いませんが』
「すっげー物騒なこと言ってる……」
「傀儡の解除って時間がかかるん……恭也くん、シエルに何か変なものがついてたりしない?」
「変なもの?」
ソウさんに言われて目を凝らしてみるけど……少なくとも今は特に何か見えてたりはしないな。これがモニター越しだからなのか本当に見えないのかはちょっと断言できないけど。
「少なくとも今は見えないっすね……」
「見えるとしたら糸だろうな。マリオネットの糸が近いと思うが」
「糸……」
んーーー????マリオネットってことは背中とかについてるはずだよな?こんだけ激しく動き回られてると糸なんて見えようがない……これ普通なら千切れない?
『え』
『え?』
ガクンとシエルさんが本当に糸が切れたみたいに倒れこむ。……今二人揃って困惑してたよな?タイミングがタイミングだったからか、藍沢先生とソウさんの視線がすごい。
「……取り敢えず、現場に行け」
「はーい……」
言いたいこと飲み込んで藍沢先生が隣の部屋を示す。糸の話して糸が切れたみたいに倒れこんだシエルさん……これ無意識に糸が切れるイメージが実行されたっていうことで合ってる??
「大雅ー」
「あ、恭也さん。まだ待ってた方が……」
「や、状況は分かってる」
「ならまぁ……?」
ソウさんは一応待っててもらって、大雅の方へと向かえば……ほんとにシエルさんの背中から糸っぽいの垂れてるや。垂れてるし切れてるなこれ、もしかしなくても俺のせいです?




