3-5 「初任務(同伴)」
「丁度良いし任務に連れてって良いです?」
「構わないよ」
「今さらっと俺の意思無視しましたよね??」
ああ聞いちゃいないなこの二人。一志に当然の如く促されたから諦めてついていく。……まぁ、明確に任務についていくのこれが初めてか……樹関連で一緒に行ったりソウさんの青の呪いで戦闘だったりはしたけど。
「俺も任務は割と久し振りだしなー」
「実はそんなに任務って多くない……のか?」
「ん?いや、リューイから目をつけられたくないから絞ってるだけって言ってた。実際うちを知ってる人ってシエルさん達がリューイ時代に懇意にしてくれた相手ばっかだからさ」
「ああ引き抜き」
「そういう感じ」
やっぱどんな仕事でも人脈って大事だな……。あと青系統が忌避されてるって言っても一部には支持されてるっていう認識で良いんだろうか。いや分からんな、怪異の対処を依頼するってことは相手は見えるんだから青系統で非戦闘向きの人が依頼する可能性とかもあるし。
「奏さん、大学ではどう?あの人目立つの嫌がるから話題にならなくてさ」
「目立……ってはないけど、……いや目立ってないか?話題にはならないけど常になんか騒動に関わってる感じはある」
「あー成程ね」
そう考えると良い隠れ蓑にされてるな俺。ちょくちょくあの人がやったことも俺の実績にされてたけど、あれわざとかぁ……。
「あ、着いたよ」
中身があるんだかないんだか微妙な雑談をしてれば目的地に着いたらしい。特に警戒する様子もなく自然体で歩いていく一志についていく。今のところ怪異は影も形もない。
「……実のところ、俺の能力って大分”らしくない”って言われててさ」
ぐわ、と怪異が目の前に飛び出してくる。驚いて構える俺に対して何一つ、どれひとつ警戒する様子のない一志は軽い調子で手を上げた。
「ああほら、どうせ気付かない」
……それを、その瞬間を辛うじて見えたのはある意味奇跡だったかもしれない。一志が故意にみせた可能性はあるけど。
怪異の右半分が抉れたように消え失せる。その事実にすら気付かないという風に怪異は一志に襲いかかろうとして……不自然に動きを止めた。奏さんと比べても遥かに青い、海のような瞳が穏やかな色のまま怪異を映している。
「怖いかな?混乱の方が勝ってる?ああ、別に答える必要はないよ、もう君死ぬし」
一志の後ろに、何かいる。奏さんのマフラーみたいな感じではないけど、多分何かが蠢いてる。怪異の右半分を抉って、怪異が目の前に対峙するまで一切気付かせなかった謎の何か。俺だっていつこれが現れたのか分からない。
「”無貌の怪物”。……それが、俺の能力だよ」
音のない笑み。事実を淡々と告げるような、そこに付随する感情など存在しないとでもいうような。そのままなんでもないように一志は同じトーンで言葉を続ける。
「…………恭也、振り向かないまま右斜め後ろに赤い丸出して」
「赤丸……?」
赤い丸、丸か……風船とかトマトとかじゃないんだろうし……目玉とか?いや流石に物騒すぎ……あ。
ぐりん、と。思いっきりイメージしたことで現れた人間大はある赤い目玉が回転する音が聞こえた。これが能力のムラ……っ!風船より目玉の方がイメージする難易度低いのかよ。
「ほっ」
動揺する俺なんか一切無視して、多分俺が何を出したのかも気にすることなく、一志が気配を消す。もしかしなくても俺ごと囮にされてね?やっぱこいつも青だわ……。
「さあさあお兄さんちょっと話そうな?」
奇襲と迎撃。確信犯みたいな……というか確実に狙ってたよなあれ。例の写真に写ってた謎の人物が一志の攻撃を受け止めて嫌そうな顔してる。まぁそうだよな、普通に考えてもあの奇襲嫌すぎる。
「……」
「ああ逃げない逃げない。いい加減俺もコソコソされるの腹立つからさ、今ここで逃げるってんなら……相応の覚悟を持ってくれよ?」
脅しじゃん。脅し方に慣れが見えるんだけど実はヤのつく自由業だったりします?




