3-2 「理由は表記が楽だから」
「悠人さーん」
スマホも買ったしカスタマイズしたいからって思ってヘレティックに来たけど、オフィスには誰もいなかった。無人……じゃないな、机の上にえっちゃんとくーちゃんがいたわ。
「あ、えっちゃんとくーちゃん」
俺の声に反応して顔を上げる二人。手元……というか二人の足元?にはパソコンが置いてあったから、悠人さん一時的にどっかいってるのかな。ポケットに入ってたチョコレートを二つ渡せばいそいそと包み紙収納して食べ始めた。いつも通りいっぱい食べるな……。
「悠人さんは?今どっかいってる?」
無意味と思いつつもソファーに座って二人へと問い掛ける。この二人、別に喋ったりはしないんだよな……はいかいいえくらいならジェスチャーで分かる……とか思ってたらおもむろに二人がパソコンのメモ帳を開いた。
『悠人ならこんびに』
『余たち留守番』
「あー悠人さんコンビニ……一人称余!?!!?」
『余』
『余』
普通に会話するのかよ二人とも!!あと器用だな二人とも!漢字変換まで使いこなせるのすごいな……でも一人称は余なんだな……。
『すぐ帰ってくるぞ』
『今こんびに出たところだぞ』
「へ、へぇ……」
悠人さん、貴方の能力訳分かんなすぎて怖いっす……悠人さんはえっちゃんとくーちゃんの動向あんまり把握してないっぽいのにえっちゃんとくーちゃんは悠人さんの動向ばっちり把握してるっぽいんですけど……?
『今日の用件を聞こう』
『全て聞き流そう』
「聞き流すんかーい。ええと、前に悠人さんがスマホに対怪異用のカスタマイズをしてくれる人がいるって言ってたから、してもらおうと思ったんだけど」
『ぽてとか』
『ぽてとだな』
「ポテト?」
えっちゃんとくーちゃんだけで納得してるけど、ポテト、ってあだ名の人がカスタマイズしてくれるって認識でいいのか?まぁ聞き流すって言われてたからそこまで期待してたわけじゃなかったけど、やっぱり案内とかはしないらしい。ここから動いたら悠人さん困っちゃうもんな。
「ただいまー……ってあれ、恭也くんが増えてる」
「こんにちはー」
「こんちはー」
レジ袋をガサガサさせながら帰ってきた悠人さんが俺を見てきょとんとした表情を浮かべる。普段からぽやっとしているというか、ぼけっとしているというか、ややぼんやりとした表情が多いからそんな変化らしい変化ではないけども。
「どしたの恭也くん」
「前に言ってた対怪異のカスタマイズをしたいんですけど」
「ああおっけーおっけー。えっちゃんとくーちゃんは……そうね、とりあえず食べてていいよ」
レジ袋漁ってお菓子を取り出した二人はせっせと食べてる。ああポッキーが恵方巻みたいな食べられ方してる……。ちっちゃい手でばいばいと見送られたので悠人さんについて部屋を移動すれば、地下の広い空間とは別の部屋に辿り着いた。
「布袋さーん」
「おーう。ん?悠人と……誰?」
「初めまして、恭也です」
おおエンジニアっぽい人いる……。布袋さんだからポテトさんなのか、それとも髪色的なあだ名なのか、単純にえっちゃんとくーちゃんが呼んでるだけなのか。全部ありそうなんだよな……。
「新人さん?なんか……緑でも青でもなさそうだけど」
「あ、色彩は赤です」
「赤ぁ!?もしかしてリューイからの移籍……」
「いや、奏さんの友人」
「奏の友人????」
わーすっごい反応。リアクションが良すぎて逆に困惑だな。さっきから表情がくるくる変わるし声のテンションも分かりやすいし、ある意味ポーカーフェイスとか向いてなさそー……んでもってヘレティックに所属してる人の中だと断トツで嘘つくの下手そー……。
「で、今日は対怪異のカスタマイズお願いしたいんですけど」
「俺の疑問に答える気はないのね?」
「布袋さんが納得するなら説明しますけど……」
「あーその感じだとややこしいのね!?取り敢えず先にカスタマイズだけしちゃうか!」
「これはそう丁度一か月前……」
「カスタマイズするって言ったよねぇ!?」
遊ばれまくってるなー……。悠人さんノリノリでからかうじゃん。




