2-7 「形勢、逆転からの急転」
ツタの増殖は止まったけど、回復速度はあんまり変わってない。多分これ新規に生み出すリソースを回復に充ててるんだろうな。増えないだけマシかな、全部割り続ければいつか限界は来る筈なんだけど。
「これ、落ちてる破片をリソースにしたりしないよな?」
「そういうのフラグって言わない?」
足元ザリザリして痛いなーとか思ってたらうっかりフラグ立てちゃった。ツタが急に地面を這うように突進してきて、慌てて縄跳びの要領で飛び越えた。……あー本当に欠片なくなってるじゃん、フラグ回収はやすぎぃ!
「割って、欠片を回収……?」
「んー……一応あるけど。お掃除ロボット」
なんでも出てくるじゃん悠人さんの……まさかポケット?カバンですらない!?
ストンと置かれたお掃除ロボット(二台)にそれぞれえっちゃんくーちゃんが乗り込んで、スイッチが押される。大丈夫?結構鋭利な破片なんだけど……。
「取り敢えず破壊続行しよっか。ひっくり返ったらえっちゃんくーちゃんがどうにかするし」
「どうにか出来るんだ……」
えっちゃんくーちゃんって悠人さんの能力だよな??能力だけが自立活動してるの、ちょっとよく分かんないんだけど青系統ってそういうのアリなの?奏さんのマフラーも勝手に分離する感じ??
もう一回最強のツルハシをイメージしつつ、出来るだけ派手にツタを破壊していく。本体の方は大雅に補足されてるから邪魔はされない、欠片を回収しようと迫ってくるツタより先にお掃除ロボットが通過するからリソース自体は確実に削れている。……これ良い感じじゃない?
『アア、アアアアアアアアアア!!』
「おや騒がしい。ただ喚くだけの有象無象と成り果てましたか?」
大雅はまだまだ余裕そうだ。ぶっちゃけ有効打がなかっただけで実力的には敵じゃないだろうなこの呪い……。さっきから思ってたけど、戦ってる間大雅の目は黒いままだから……素の身体能力でコレ、ってことになる。ちょっと強すぎない?
『呪アレ!禍アレ!苦アレ!』
気配が変わった。背筋がゾワッとするような感覚に警戒度を引き上げる。発狂モードってたいていの場合初見でクリアさせる気がねーからな……。
『我ガ美二跪ケ!』
「うべっ!?」
「み゛っ」
急に体が地面に張り付いたぁ!?重力が強く……いやこれ……。
「あいつの……美しさに、圧倒された、ってことか……!?」
「暴……論…………」
体が動かねえ!なのに視界はあの呪いから外せねぇ!これその内圧力に負けて首が折れるんじゃねえかな!?そういう方向性で呪い殺してくる可能性が浮上したの嫌すぎるんだけど!?じわじわ重くなってくのが拷問めいてて怖い!
「たい……が、……は……!?」
さっきまで呪いの近くにいたんだから見えてもおかしくないはず、そう判断して周囲を探す……ツタで視界確保出来ません!集まってくるんじゃねーーーよ!
「圧死する未来もあるなァ……」
「怖いこと言わないで悠人さん!?」
くっそこんなところで死んでたまるか……概念バトルなら俺だってやってやるからな一番美しいのは俺調べ俺インタビューで玲士一択だ覚えとけ!!!
「ぬぐぐぐぐぐ……!」
俺が圧力と格闘してる横で完全に地面とお友達になってる悠人さん。ぺしぺし欠片を呪いに向かって飛ばしてるけどそれ意味あるかなぁ?掃除ロボットが飛ばした端から回収してますけど……。
「んんん……大雅くーん」
悠人さんが間延びした声で大雅さんを呼ぶ。反応はない、けどツタがざわざわうごめいて少しだけ視界が良好になった。青の呪いの眼前、跪いて俯く大雅。
「大雅!?」
「あ、不味い感じ……」
見るからに分かる危機的状況。青の呪いが歪に笑い、大雅がツタで吊り上げられていく。無抵抗な大雅に一瞬嫌な想像がよぎったけれど、ぽつりといういやに静かで、でも無視できない音が俺の意識を向けさせる。
「何……?」
「……あめ?」
『……?』
ぽつぽつがしとしとに、ざあざあとなるには少しだけ弱弱しいけれど、確実に振り続ける室内の雨。冷たさはなくて、静けさと神秘性を携えた雫が世界を濡らしていく。




