2-3 「考察、そして」
クッキー三枚と飴玉と牛乳パック一本とウインナー三本に目玉焼き。なんとびっくりそれぞれが食った量である。悠人さんとこのえっちゃんとくーちゃんが食った総量まじでどこに消えてんだろう。あれかな、能力って言ってたし悠人さんの方に流れてんのかな。それはそれで悠人さんが大食いってことになるんだけど。
「あれ、今日は早起きですね悠人さん」
「こんちはー」
大雅がにこりと……多分にこりと笑う。こう見ると緑にしては悠人さん青寄りの性質なんだよな……俺が知ってる緑は軒並み常識人……というか苦労人。
「ソウくんは?」
「ソウさんなら今日は奏さんに治療してもらってます。体調は良くないんですけど、能力との均衡が揺らいじゃって」
「そっかぁ……そろそろ治療出来るかなーって感じでもなさそうだね」
ソウさんがリューイにいた頃に呪いを掛けられて、それが原因でソウさんと大雅がヘレティックに移籍したってことは知ってる。けど奏さんや悠人さんが治療してるっていうのは初耳で首を傾げてしまう。悠人さんは分かんないけど奏さんって治療とかそういう能力ではないよな?
「奏さんが治療?」
「治療というよりは能力の沈静化かな。奏くんの闇、能力すらも喰べれちゃうんだよね」
確かに奏さんのマフラーは悪食。ホント何でも食べる。やっぱ能力由来の生き物は大食いなのか……。
「それ言ったら僕だって治療というよりは採掘になっちゃうからね」
「あれ鉱石なのでそうなっちゃうのは仕方ないですって」
「鉱石なんだ?」
「はい。青の美という……青い薔薇を模した宝石ですね」
青の美……なんか抽象的すぎる名前だな。普通にバラの形してんならバラって名前に入れればいいのに。いやそもそも宝石だけど呪いなんだよな?どういうこと?
「宝石かぁ……怪盗がいれば盗めたりするのかな」
「え」
「あ」
「む?」
ぽろっと口から溢れ出た言葉に三者三様の反応を見せる。何か変なこと……いや言ったわ、急に怪盗とか言い出したらそりゃこんな反応にもなるわ。
「……可能では?」
「宝石は盗まれるもの、かぁ。確かに」
「試す価値はありそうだね」
いやいやこっわ!?急に何!?シエルさんがいなくなったと思ったらアホみたいな量の書類持ってきたし目の前に大雅が陣取った。ほんと何……?俺は怪盗じゃないぞ……??
「ソウさんが受けた呪い、解くために手伝ってくれますか?」
「え、あ、はい」
あ、これマジなやつだ。どこにやる気スイッチがあったのか分かんないけど大雅は書類をパラパラとめくって俺に示してくる。これは……宝石の詳細?
「青の美というのは、実際のところ実在する宝石です。呪いとしての名称は”青の呪い”といいます」
青の呪い……なんか色彩青のひとばっか狙ってそうな呪いだな。宝石自体がすっげー複雑な青の色彩を湛えてるからこその名前なんだろうけど。
「詳細はそこに書いてあるので要約すると宝石の美しさに魅せられた者達が手段を問わず入手しようと争った結果、青の美は呪いの媒体となるに至り……最終的には破壊されました。しかし、呪いと化した宝石は最早この世のものではなく、かつての姿と執念、怨念を纏った姿で破片一つ一つが呪いの媒体となり、そのうちの一つ、花弁がソウさんに使われている……という訳です」
「花弁のひとつ……」
欠片で相当ヤバイとかどんだけ呪いを溜め込んだんだろう。というかいくら綺麗だからってそんなに争い続けるもんなのかね?何か最初から怪しい気がする。
「ソウさんに使われた青の美……もとい、青の呪いは、ソウさんの体内に埋め込まれています。徐々に宿主を衰弱され、色彩そのものを奪う悪質な呪い。しかし対象となるのは色彩が青の者のみ……故に、呪いとしての強度が強い」
「成程……」
えげつねぇ呪いだな。呪いをかけられる対象を限定することで呪いを解かれにくくしてるってことだろ?それで実際解かれた前例がないんだから……そりゃ恵斗も悲痛な決意抱えて犯人さがしに行くわ、うん。
「体内にあるはずの青の美ですが、実のところどこにあるのか分かりません。レントゲンでも写りませんでしたし、悠人さんの採取でも入手不可能だったんです」
埋め込まれた破片、青の美、ソウさん、呪い、生命力。情報が何かを導きだそうとしている気がする。何だか目の前がちらつく気がして、考えが纏まらなくてそのまま口から溢れ出る。
「選ばれて……最初から?魅了して、喰らう。その途中で壊れたから新しい宿主を……」
これは不味い気がする。具体的にはソウさんが。犯人がどうとかいってらんないな、狙いすまされて攫われて、そうして埋め込まれたそのたった一欠片だけで、あまりにもでかい被害を出そうとしている。
「根っこなら……ああでも宝石か。分離させなきゃ始まらないから……ぎりぎりまで色彩を落とせばいける?」
本質は多分思念だ。操って力を貯めて乗り移ってまた進化する。だから分離して叩かないといけないし、叩いただけじゃ終わらない。一回壊されてるってことは破壊も下手したら意味ないよな?どうすんだこれ、お祓い?
「ん~将来有望」
「奏くんが色彩を落とせるよ?」
「多分青に乗り移ろうとすると思うんですけど」
「なら奏くんにはソウと一緒に退避してもらおっか。増援は……」
「いえ、私と悠人さんで叩きましょう。……最近の体調から見ても、恐らく時間がない」




