2-1 「世間は狭い(確信)」
「あ」
「うん?」
気のせいかもしれないけど呼び止められた感じがした。人混みの中で立ち止まったから玲士がよろけて俺に寄りかかってきて、奏さんと樹は先に進んじゃった。きょろきょろと周囲を見渡せば、がっつりとあう目と目。
「きょーくん?」
「あー……」
先に弁明しとくと別に知り合いじゃないんだよな。……知り合いの知り合いのはずなんだよな、多分。ややこしいから玲士には樹たちの方に向かっててもらうとして、取り敢えずまだ立ってる相手の方へと方向転換する。
「えーと、ハジメマシテー」
「……ハジメマシテ。ここじゃなんだからカフェにでも行くか」
流石に大学内で話すのは厳しいか。スタスタと歩いてった大雅の知り合い……確か恵斗って言ったっけな?の後を追いかける。あの反応からして関係者ではあるんだろう、多分。
恵斗が入ってったのはこじんまりとしたカフェ。中では優しそうな店員さんが二人だけ。お客さんは俺達だけみたいだった。へにゃっと笑った店員さんが奥のテーブルへと案内してくれる。
「えーっと、恵斗……だよな?大雅の友人の」
「ん。そうだよ。お前は恭也だったよな?」
「うっす」
それぞれ飲み物頼んで、確認のために名前を聞けば合ってたらしい。大学内では大雅と恵斗、不仲っていわれてるんだけどな。ある意味有名だから知ってる。俺の名前が知られてるのに関しては色々思い当たる節しかないから良いんだけど。
「大雅から聞いた。ヘレティックに新しく所属した色彩赤の同級生がいるって」
「あーやっぱ大雅経由なんだ……不仲説って嘘?」
「嘘……とまではいかないけど、別に仲が悪いわけじゃない。ただ、表向きは不仲だって言っておいた方が色々と楽なんだよ」
「ほえー」
何か事情があるんだな……大雅が認識阻害して見た目誤魔化してるのも関係あるのかな。どこに向けての誤魔化しなのかは分からないけど、俺にばらすってことはヘレティック関係じゃないんだろう。
「恵斗、ヘレティック所属じゃないけど能力のこと知ってんの?」
「知ってる。俺は色彩黄色だからリューイに所属してるんだよ」
「リューイ……あ、人が作った組織とか言われてたとこか」
「そう。本来は能力開花して真っ先に所属するのはリューイなんだよ」
あー何だっけ、リューイの方がヘレティックより歴史があるし、ヘレティック自体がはぐれものの受け皿みたいな感じだからかな。
「色彩黄色だからリューイ……あれ、もしかして黄色はリューイとかある感じ?」
「別にないから安心しろ。……正確には、俺は色彩が黄色だから残っても違和感がなかったから残ったってだけ。……そのせいでソウさんには怒られたりもしたけど」
ソウさん。大雅も言ってたなソウさん。共通の知り合いっていう認識で良いんだろうか、体調優れないとか言われてたんだけど。体が弱いご友人?
「ソウさんって誰?」
「……リューイにいたころに呪いを受けて、今も苦しんでる俺達の友人」
呪い!?え、体が弱いとかじゃなくて呪いで死にかけてるってことか!?ずぅん、と一気に表情を暗くした恵斗にこれ以上聞いていいものか悩んだけど、なんとなく聞いた方が良い気がして先を促す。
「雪代さんの事件は知ってるか?」
「あ、まぁ」
「雪代さんがいなくなった後、本当に数日も経たない頃の話だよ。……雪代さんがいなくなってシンさんが荒れて、誰も彼もが必死だった。そのタイミングでソウさんはリューイに所属する同業者によって攫われて、大雅が滅茶苦茶な方法で助け出したときにはもう、手遅れなくらい呪いに侵されてた」
おい攫ったの同業者かよ……!しかも当時で言ったら同じ所属の仲間、ってことになるよな?それまではゆっきーがいたから手を出さなかっただけ……ってことかな、でもそのゆっきーだって人為的な可能性があるって言われてたし……。
「その呪い、解けねぇの……?」
「……今まで誰も解けたことがないってことは知ってる。雪代さんがいればどうにかなったかもしれない、けど……」
「……」
「俺がリューイに所属してるのは、あの呪いをかけた奴を探し出して本体を見つけようとしてるから。呪いをかけた媒体があれば、きっとどうにかなるかもしれないから……」
前例がなくても、僅かな可能性に縋るしかない。そんな悲痛な叫びが聞こえてくるみたいだった。多分恵斗がここまで追い詰められてるの、ソウさんを助けたのが大雅っていう部分も少しあるんだろうな。同じ友人だったはずなのに、自分だけ何もできなかったって言う後悔がずっと恵斗のことを責め続けてる。
「……湿っぽい話しちゃったな。悪い」
「別に良いよ。……話聞いた感じ、俺もなんか手伝えるかもしれないし」
「え?」
「いつだって想像するのは大勝利の自分ってことだよ」
「???」
呪い、見えないもんだから分からないけど媒体なり本体が分かればどうにかできそうな感じがするよな。今度ちょっとソウさんに会わせてもらえないか大雅に聞いてみるかな、俺もまだ自分の能力を完全に信頼してはいないけど、何か出来るならやるだけやってみる価値はあると思うし。
「あ、じゃあ大雅との不仲説ってリューイへの偽装?」
「そうだよ。表向きは、ソウさんの事件で仲違いしたことになってる」
おーソウさん自身が聞いたら気にしそうな理由……。でもそっか、元々仲良かったんならそのタイミングしかねーよな……。
「……良くわかんないけど、お前、大分変わってるんだな。流石奏さんの友人」
「お?褒められてる?」
「褒めてはない」
えー別に褒めてもらっても構わないんだけどなー?冗談を言えるくらいには恵斗も表情が穏やかになったから、別に気にしてないけどさ。




