1-10 「調査報告と何故か巻き込まれた俺」
「結論から言うと、呪庫にある筈の呪いが幾つか失われていた」
「複数?」
「ああ。今時系列や詳細を確認中だ」
ジュコ、ってなんだろ。呪いが~って言ってたし呪いの倉庫で呪庫かな。っていうか呪いって物質なの?呪いを保管してるってそれ中で蟲毒になりそうなんだけど、そういうのが目的なのか、単純にあっちこっちに置いとくのが危険だからまとめてるだけなんだか。
「あと、何故雪代だったのか……という点についてなんだが。寧ろ雪代に対するやっかみが多すぎてだな」
「雪代、森羅万象シンか否かで判断してたもんな」
「本人もそうだしシンに至っては雪代以外はただの障害物扱いだぞ。思い当たる節が多すぎる」
おおう……あの二人いつだって互いしか見えてないのか……今も若干その名残あるの相当じゃんか。それなのに互いの認識クソガバなの何で???
「雪代に呪い……一応効きはするんだっけ?」
「一通り効きはするが対抗策練られて潰されるのがオチだな。実質ほぼ全ての呪いに耐性を有していただろう」
「シンが呪いどころか概念的な因果ですら喰らう性質を有していたからなー」
奏さん延々に訳分からん性能してるな……。その番してた樹も話だけ聞くと正気じゃねーや。だから二つ名狂気の魔術師とかになるんだぞ?
「因みに、関連性は?」
「ないとは言いきれないが……確証はない」
「まぁそっか。シエルがヘレティックを設立したタイミングだった訳だし」
何の話してんだろ。関連性ってことは樹みたいに何か被害食らった人……?
「ところで……」
あ、紫狼さんの視線がこっちに向いた。取り敢えず大人しくしてただけなんだけど、なんか今関われることあったっけ?
「奏の友人ということは、それなりに実力は高いのか?初心者且つ筋が良いというのは理解したが」
「オレにもよく分かんない!」
そうですよね!多分というか確実に俺の能力知ってるの奏さんだけじゃん。他のひと、名前と内容くらいじゃない?下手したら色彩だけのひともいそう。
「座学だけで伸ばすのも限界だろうと思うぞ」
「んーでもちょうど良いのがないんだよなー。オレに来るやつはちょっと難しいだろうし」
「……俺の任務に同伴されるのは論外だからな。シエルに言っておいた方が良いか」
シエルさん、代表者なだけあって任務の斡旋とかしてるんだ……スケジュール管理もやってたっぽいし、頭良いんだろうな。
「”解析者”って結構特殊だよな?」
「……サポーターだったのか?」
「え、戦闘員寄りって言われましたけど……」
「は?戦闘員で解析者???」
え、なんか変なこと言った?奏さんが言ってたから合ってると思うんだけど。藍沢先生にもシエルさんにも特段何か言われた訳じゃなかったし。
「……解析者なら大抵本質や弱点看破の方にリソースを割くから目の方に力が集中するんだ」
「そこは自力でやってイメージ力で色んなことできます……」
「その能力は”具現者”……いや理解度でバフが乗るなら解析者で正解か」
ややこしいな……紫狼さんあんまり説明はしてくれなかったけど一人で納得して解決しちゃった。
「オレ良くわかんないけどさぁ、恭也の能力ってイメージすれば良いんだろ?じゃあ最初に願ったのが攻撃系なのか?」
「最初……は、人形の髪の毛燃やそうとしたから……」
燃え盛るような、全て焼き尽くすような炎が最初だった。そう言い切ろうとしてふと言葉が止まる。何だっけ、あれが最初で間違いないはずなんだけど、そのはずなんだけど。
「恭也?」
「……えーっと、多分そのはずなんです、け、ど……」
「…………」
紫狼さんがゆっくりと俺の前に立ちふさがる。青みがかった真っ赤な瞳が俺を射抜いて、何かを見透かすように俺の向こうを見ている。ぐわんぐわんする頭が、思考をかき混ぜて俺はただぼうっと目を合わせるしか出来ない。
「お前、兄弟はいるのか?」
「三、兄弟の……長男です」
紫狼さんの言葉がすとんと意識の奥に入ってくる。ぼやぼやと俺と俺だったものの輪郭が溶けて曖昧になって、遠い日のまだ俺じゃなかった頃のおれが俺を介して言葉を吐き出す。
「じゃあ弟達と遊んだのか」
「家の……裏山、で、……でも、おれ、お兄ちゃんだからあの山に一人で登って……」
ちがう。長男だからあの山によくのぼってたわけじゃない。おれが一番つよかったから、一人でもあの山にのぼって良いっていわれてたんだ。
「ほこら、に……ともだちが、いたから……おれ、たくさんつくって隠してた」
「……祠に友人がいて、その友人を隠すために祠を沢山生み出した……ということか」
「さ…………は、でられないから、あぶない、から、……いまは、おれが……」
子供だった。まだ何も知らなかった。確かにおれはつよかったけど、こどものあしじゃたどりつけない。こどものままじゃまだたりない。
「いつか、あいたいひとがいる、って、……いっしょ、に……」
一緒に、一緒に会いに行こうって約束した相手がいた。だからそのために、おれはもっと強くなろうとして、それで。
『また、いつか』
「っ……!?」
バチン!っていうでっかな音がして意識が無理やり引き戻される。どっか叩かれた気がする!けど、目の前にいる紫狼さんは驚いたように目をまんまるにしてるし陽翠さんは距離的に遠いし、周囲見回しても二人以外にはいないし。え、幻覚?
「痛かった気がする……?」
「え、何もしてないぞ……?」
「…………びっくりした……」
紫狼さんが驚きすぎて子犬みたいになってる……。そんなびっくりする?俺、何が起こってたのかあんまり把握してないけど。
「あー何でしたっけ、俺の最初のイメージ?多分髪の毛燃やそうとしたから炎ですね!」
「……そうか」
あれ?さっきも言った気がするけどまぁいっか!紫狼さんまだ子犬っぽいし、陽翠さんも驚きすぎて若干大人しいし。
「恭也、頭痛くないか?めまいしたりしてないか?」
「え、大丈夫ですけど……むしろスッキリしてます。……もしかして座ったまま寝てました?」
「んー……うん!」
そんな俺眠かったのかなぁ!?紫狼さん、起こそうとしてくれたのかもしれないのに寝ピクで驚かしちゃったの可哀そうだな……。




