いざ手を汚さないで!!!
爺さん「何故じゃ・・・・・・何故止めるんじゃすずッ!!!
そこを退け!!! コイツはお前の・・・・・・お前の舌を切った悪魔じゃ!!! 頼むから退いてくれ・・・・・・うぅ・・・・・・」
泣きながらも爺さんは鎌を強く握りしめる。
しかし、すずは頑固としてその場を退かなかった。
泣きながらも、痛みに耐えながらもその場に立ち尽くす。
その間、婆さんはと言うと「人殺し!!!」と何度も狂ったように叫んでいた。
桃太郎「・・・・・・そうか!」
夜叉姫「旦那様?!」
桃太郎は何か閃くとそのまま外へと走り出した。
少しするとすぐに戻ってきて、その手には木の枝があった。
桃太郎「ほら、これを使え。この枝で下に字を書けば伝わるだろ?」
そう。桃太郎はすずが舌を切られたことにより話せない事に気付いたのだ。
その為、すずは何も言えずただその場に立ち尽くすことしか出来なかったのだ。
書くものを取りに行こうにも、その間に爺さんが婆さんを殺しては意味が無い。
その為、取りに行く事も出来なかったのだ。
すずは桃太郎にお辞儀をすると、その場にしゃがみこみ
地面に枝で文字を書き始めた。
爺さん「・・・・・・お、じ、い、さ、ま、が、ひ、と、ご、ろ、し、に、な、る、の、は、い、や、だ、っ、た。
や、さ、し、い、お、じ、い、さ、ま、の、て、を、よ、ご、し、て、ほ、し、く、な、い。
い、つ、も、わ、た、し、の、あ、た、ま、を、や、さ、し、く、な、で、て、く、れ、る、だ、い、す、き、な、て。・・・・・・すず、うぅ・・・・・・すずっ、本当にすまんかった・・・・・・ワシがお前から目を離さなければ・・・・・・うぅ・・・・・・」
爺さんは鎌をその手から落とし、その場で泣き崩れた。
それと同時に婆さんは外へと逃げて行ってしまった。
そんな爺さんの肩にそっと手を添えるすず。
爺さんが顔を上げるとすずは笑っていた。
舌を切られ痛みで気を失いそうになりながらも笑っていた。
まだ幼い女の子が爺さんを気遣いわらっていたのだ。
桃太郎は2人を見つめ、ある決心をする。
桃太郎「爺さん・・・・・・今後は2人で暮らしていく事は可能か? 2人だけで暮らしていけるか?」
突然の問になんの事か驚くも、爺さんは何か勘づいたのか
「あぁ、大丈夫じゃ」と強い眼差しで桃太郎に返事をする。
爺さんの答えを聞くと桃太郎も強く頷いた。
それと同時に桃太郎はその場を離れる。
夜叉姫「待って桃太郎!!! ダメよ!!!」
夜叉姫も気付いたのだ。
桃太郎はあの婆さんを殺す気だと。
だが、桃太郎にはすずを看てやってくれと頼まれた。
確かに血は流れ続けている。
応急処置をしなければ、出血多量で死んでしまう。
夜叉姫は残らざるを得なかったのだ。
村の近くの森の中。
婆さんは1人森の中を歩いていた。
婆さん「あの爺め・・・・・・私が居るというのにあの子ばかり可愛がりおって・・・・・・」
しばらく歩いていると、目の前に大きな箱と小さな箱が置かれていた。
そして、そこにはすずに良く似ているがもう少しすずよりも年上の人間が立っていたのだ。
突然現れたすずに瓜二つの人間に驚く婆さん。
婆さん「な、なんだいアンタは?! あの子の姉妹か?!」
驚いた婆さんはすずに瓜二つの者に問いただすと、その者は
ゆっくりと口を開いた。
「どちらか好きな方を選ぶがいい。この箱の中には金銀財宝が入っている。」
婆さんの目は一気に見開かれた。
この金があれば1人でも十分暮らせる。
婆さんは小さい箱には目もくれず、大きい箱に飛び付いた。
「そちらでよろしいのですね。それでは」
そう言うと小さな箱と共にすずに似た者は消え去ってしまった。
だが、婆さんには最早眼中になかった。
今見えるものは目の前に置かれた巨大な箱だけ。
婆さんはワクワクしながらその箱を開くと、中からは金銀財宝等ではなく、魑魅魍魎が飛び出してきたのだ。
いきなりの事に腰を抜かしてしまう婆さん。
これは天罰である。
確かに、すずに瓜二つの女は、この箱の中には金銀財宝が入っていると言った時、小さい箱を指さしていたのだ。
だが、婆さんはその時から既に大きい箱しか目に入っていなかった。
その為、欲を出した婆さんには天罰が下ったのだ。
10体程の妖怪達が飛び出し、一気に婆さんに飛び掛る。
婆さんは腰を抜かしている為、逃げ出す事が出来ずにいた。
「ザシュッ!!!」
婆さんが殺られそうになったその時。
後ろから桃太郎が妖怪を斬りつけたのだ。
桃太郎「ちっ!!! 婆さんを殺ろうと思ったのに、まさか妖怪退治をすることになるとはな!」
桃太郎は悪態を吐きながらも妖怪を倒していく。
それほど強くはなかった為、1分も経たないうちに全滅することが出来た。
桃太郎「くそがっ・・・・・・おい婆さん、二度とあの二人の前に現れるんじゃねぇぞ! すぐにこの村から立ち去れ! もし見掛けたらその時は絶対殺すからな」
物凄い眼光で睨み付ける桃太郎。
妖怪を退治してもらい安堵していたが、妖怪よりも恐ろしい思いをしてしまった。
婆さんは何度も頷く。
そうして、桃太郎は婆さんを殺すことをやめて爺さんやすずの居る村へと戻るのであった。
婆さんは桃太郎が村の方へと歩いて行くのを見据えている。
婆さん「余所者がふざけた事を抜かしおって!!! 何が立ち去れじゃ!!! 絶対に許さない。あの侍もあの養子の女も、ワシを殺そうとした爺さんも!!! 皆が寝静まった頃に燃やしてやるとしよう。」
デカい独り言を言った後、後ろを振り返り進もうとしたその時、
「グサッ!!!」
婆さん「・・・・・・えっ?」
目の前にはあまりにも冷たい目をした男が居り、何か胸に熱い物を感じた。
よく見るとその男は自分の胸に刀を刺していたのだ。
振り返りざまに刺された事により、何が起きたのか理解できなかったが、ようやく痛みが込み上げてきた。
婆さん「ぎゃああああッ!!!!!!!!! さ、刺された!? 痛いーッ!!!」
婆さんは胸に感じる痛みに悶え苦しむ。
だが、刺した本人は何やら不気味な笑みを浮かべていた。
浦島「あんなに家で騒いでいれば、嫌でも耳に入るよ。
それで後をつけてみればあの有り様だ。でもよかった。
桃太郎の手がアンタみたいな汚物で汚れてしまうのは
勘弁だからね。こういうのは僕の仕事だからさ。
それじゃあおやすみ。」
浦島はその刀を抜き去ると婆さんはその場に倒れ息絶えた。
またも暗躍する浦島。
なんの為にこんな事をするのか。
それはまだ誰にもわからなかった。
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