いざ帰還!!!
皆で箱を覗くと確かに女の子が眠っている。
長く綺麗な黒髪。歳は7.8歳くらいであろう。
何故か巫女さんの服装をしていた。
桃太郎「何で箱に女の子が?!」
浦島「んー、分からないけど、ここに置いていく訳にも行かないね。」
確かにその通りである。
こんな小さな女の子をこんな危険な場所に置いておく訳にはいかない。
それにこの子が何故箱に入っていたのかも気になる。
桃太郎は女を抱き抱え、みんなでタールの元へ帰る。
もちろん宝の山は回収してモンク達が運んでくれている。
帰りはサキュバス達が出てこなかった為スムーズに帰ることができた。
竜宮城を後にし地上に戻る。
戻った時には太陽は消え、既に夜になっていた。
桃太郎達は寝場所が無い為、浦島の家にお世話になる事にした。
桃太郎「ありがとな浦島! 危うく野宿するところだったぜ」
浦島「気にしないでよ! むしろ乙姫の件ではこっちが助けてもらったんだから。それよりもこの子は一体何者なんだろうね?」
藁のベッドで眠る謎の女の子。
この子が起きない事には、その真相はわからない。
考えても埒が明かない為、一先ず今日のところは皆で眠ることにした。
朝日が昇り、陽の光が桃太郎の顔を照らす。
しかし、それで起きる訳では無い。
桃太郎(・・・・・・苦しい、なんだ?!)
桃太郎は胸が苦しく、目を開くと目の前にはなんと
美しい女性がいた。
桃太郎「・・・・・・誰?」
桃太郎には見覚えがなかった。
しかし、体の方を見ると巫女さんの服を着ていた。
そして黒い長髪。しかし、歳は桃太郎と同じくらいだ。
そこから推理すると「・・・・・・誰?」
浦島も目を覚ましたようで2人に驚いていた。
浦島「おいおい桃太郎・・・・・・人ん家に女なんか連れ込むなよ。僕は最愛の女に裏切られたばかりで傷心しているというのに・・・・・・」
浦島もその女が誰なのかわからず、揶揄う様に桃太郎にそう話した。
桃太郎「おいおい、俺がそんな空気読まない奴に見えるのかよ・・・・・・っていうか降りて頂けませんかね?」
謎の女はずっと桃太郎の上に乗っかっている。
真顔で桃太郎の顔をずっと見ていたが、急に笑顔になりようやく口を開いた。
夜叉姫「玉手箱から私を解放してくれてありがとね♪ 私の名前は夜叉姫!」
夜叉姫の言葉で昨日助けた女の子と同一人物だと理解する2人。空いた口が塞がらない。
桃太郎・浦島「・・・・・・ええぇぇぇッ?!!!!!! 大きくなってる!!!」
昨日助けた時には8歳位の外見をしていた。
しかし、起きると18歳位の外見に変わっている。
目はくりくりお目目で整った顔をしている。
スタイルもよく非の打ち所が無い。
元の世界に居れば間違いなく、美少女図鑑1位になるだろう。
桃太郎「こういう人をまるで人形みたいって言うんだろうな」
浦島「夜叉姫って呼んでいいかな?どうしてあの箱にいたんだい?」
訳の分からないことを言っている桃太郎は置いておいて、浦島は気になっていた事を聞いた。
夜叉姫「えぇ、いいわよ♪ 実は私は鬼退治に向かおうと思ってたの! 龍の予言によって導かれてね! その内容は、私が5歳の時に、鬼を破る者が産まれたと聞いたわ。それでその人を探す為8歳の頃、旅に出たのよ! そしたら乙姫とかいう女性に、その人の居場所は分かるって言われてね、着いてったらあのザマよ! 助けてくれたって事はあの人は殺したの?」
浦島「・・・・・・あぁ、ソイツは殺したから大丈夫だ」
浦島は苦い顔でそう話していた。
やはり初恋相手というだけあって多少は引きずっているようだ。
桃太郎「ちなみに言うと鬼も退治したぞ!なんなら仲間になったしな! ほら」
桃太郎はエルザを指差す。
すると夜叉姫は目を見開き、2本の短剣を構え急にエルザに飛び掛った。
いきなりの事で驚いたが、桃太郎らすぐ様その攻撃に割って入り防ぐ。
桃太郎「おいおい、こいつは仲間だって言っただろ?」
夜叉姫「・・・・・・私の両親は鬼に殺されたんだ・・・・・・生かしておけない」
さっきまで笑顔で話していた夜叉姫の目は、殺意の目へと変わっていた。
目の前にいる鬼を殺す。
それしか見えていない。
桃太郎「お前の両親を殺った鬼はこいつなのか? 確かに辛いのはわかる。でもな、一体の鬼に殺されたら皆殺しにするのか? なら、人間が俺の仲間を殺すと言うなら俺は、人間を絶滅しなきゃいけないな」
桃太郎はとてつもない殺気を放った。
夜叉姫は大量に汗を吹き出し、膝はガクガク震え、立つことさえままならなくなっている。
それは周りに居る仲間達も感じていた。
張り詰めた空気。
まるで誰かに首を絞められているかのように苦しかった。
桃太郎は仲間を大切に思っていた。
そして、頭に血が昇っている夜叉姫を落ち着かせる為に殺気を放っていたのだ。
夜叉姫が戦意喪失したのを感じ桃太郎は殺気を抑える。
夜叉姫「はぁ、はぁ、はぁ、」
夜叉姫の顔は真っ青になっていた。
浦島「君の殺気は人を殺せてしまいそうだね」
浦島は他のものよりは平気そうであった。
それ以外のみんなはクタクタになっていたようだ。
桃太郎「どうだ夜叉姫・・・・・・こいつはお前が殺さなきゃいけない相手か?」
夜叉姫は押し黙ったまま俯いていた。
そして一滴の涙を流す。
夜叉姫「ち、違う・・・・・・では、どうすればいい?!!! 鬼はお前が退治したと言う! この鬼はお前の仲間だと言う!それなら私は・・・・・・私はどうやって親の仇を取ればいいんだッ!!!」
夜叉姫は泣き叫んでいた。
当てようのない思い。ポッカリ空いた埋められない心の穴。
両親の仇を討てないまま夜叉姫の旅は終わってしまったのだ。
夜叉姫が泣き崩れていると、エルザが夜叉姫に近付いた。
エルザ「夜叉姫よ・・・・・・済まなかった・・・・・・私の責任だ。皆を纏めることが出来なかった私の責任だ。お主の気が晴れると言うなら、私を殺してくれ。ただ、どうか全ての鬼が同じとは思わないで欲しい。人間と同じように悪い鬼も居れば、良い鬼もいるのだ。だから、鬼を恨むのは私で最後にしてくれ・・・・・・頼む。」
エルザは土下座して、首を差し出した。
桃太郎「エルザ・・・・・・」
浦島「これはこの2人が決める事だよ桃太郎」
桃太郎はただ拳を握り待つしか出来なかった。
夜叉姫「・・・・・・殺せるわけないだろ・・・・・・」
小声で呟いた為、エルザにはよく聞こえなかった。
エルザ「えっ?」
夜叉姫「お前を殺せる訳ないだろ!!! お前からは両親を殺した鬼達の様な気配は感じられない・・・・・・私が間違っていたんだ・・・・・・」
エルザ「夜叉姫・・・・・・」
夜叉姫は理解したのだ。
例え、エルザを殺したとしても心の穴は塞がらない。
むしろ、大きくなるだろうと。
エルザの言っていた事は尤もだった。
現に夜叉姫の住む村でも鬼狩りを楽しんでる人間も居たのだ。
どっちもどっち。
そう思わざるを得なかった。
しかし、両親が殺された事には変わりない。
その為、夜叉姫はもう生きる意味を見失っていた。
夜叉姫「鬼の者よ・・・・・・私も殺してくれないか?・・・・・・私には家族も居なければ生きる意味もない。いっその事家族の元へ送ってくれ」
夜叉姫は逆に自分を殺せと頼む。
それにはエルザも驚いていた。
そして、エルザにはそんなこと出来なかった。
エルザが断るも夜叉姫が折れる事はなかった。
浦島もどうしたものかと考えていると、桃太郎がいきなり
驚く発言をしたのだ。
桃太郎「なら夜叉姫、俺の家族になれ!!!」
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