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交流

自分たちの競争を、お客様たちにもっと見てもらうおう。

ルルドはディアンにひらめきを話した。


今まで、お客様は大人ばかり。

でも、競争の見学目当てに、子どもも来てくれるのじゃないか。

そうしたら、ルルドは他の国に行かなくても大丈夫。ここにいながらにして大勢と会える。


ディアンの瞳が嬉し気に輝いた。ルルドが他に行かなくても良い、というところを喜んでいる。

「うん、じゃあ、それをしようよ!」

「よし!」

両手を上にあげ、二人でパン、と手を合わせたところで、あれ、とルルドは思った。


「でもさ、基本的に僕の方が勝つだろ。今のところ」

「うん。ルルドくん、運転が上手いから」


「いや、運転はディアンくんが上手いよ。でもまだ僕より小さいから、動かしにくいんだと思う。部品を手に合う小さいのにしたらいいと思う」

「そうしてみる。ありがとう!」

話がずれたが、頷き合う。


「話を戻すけどさ。僕が大体勝つって分かると、何度も見るの面白くないよなぁ」

とルルドは首を傾げた。

「初めて見る人たちはそれでも良いのかも?」

とディアン。


「うーん。この国って人が少ないっていうし、一度見て満足されても困る。何回も来て欲しい。仲良くなれないだろ」

「そっか」


少し互いに黙って考える。


ディアンが顔を上げた。

「じゃあ、船に、子どものお客様を乗せてあげるのはどうかな。楽しいと思う」

「一緒に競争って事?」


「うん。ルルドくんと競争は無理だと思うんだけど、一緒に乗ってスピードを楽しんでもらうとか」

「そっか。良いかも」


「お客様用に、簡単なコースを作って、お客様同士で簡単な競争を楽しんでもらうのも、良いかも」

「凄い! それ良い!」

ディアンのアイデアに、ルルドも前のめりになる。


「そうしたら、俺たちの遊び相手も増えるぞ。みんなうまくなったら、大勢と競争できるしさ! 女の子いっぱい来て欲しいけど、男の友達もいっぱい来て欲しい!」

「うん」

ルルドの様子に、ディアンも嬉しそうに笑う。


「でもそうするとお客様用に船が欲しいけど、お父様たち、さすがにこれ以上は買ってくれないよなぁ」

自分たちの船は、コツコツと改良し続けている。

ルルドとディアン専用になっているので、他の人には難しいと思う。


うーん。


「やりたいことがあれば言ってってお父様が言ってたし、相談しに行こう」

「うん」


***


忙しいという事で、その話は昼食の時になった。

とはいえ、ルルドとディアンと、2人の父だけの時間にしてくれた。


2人の希望を聞いて、父2人はそれぞれ少し考え、

「良いと思う」

とルルドの父が言う。

「そうですね」

とディアンの父も頷いた。


いろいろ話し合った結果、安い子どもの船を新しく買うより、大人も参加したい人がいるはずだから、ルルドとディアンと同じ船を追加で3つ買うという話に決まった。


参加費用を貰おうかという話も出たが、目的は、ルルドたち子どものために、子ども同士の交流を増やす事だ。だから費用は無しと決まった。

大人の対応が必要な時は、親を呼ぶ事。


「何かあったらみんなで相談だ。良いね」

「うん! ありがとう、お父様!」

「ありがとうございます、ブルドンおじさん!」


「むしろ頼もしいよ」

父たちが嬉しそうに笑っていた。


***


父たちはお客様に宣伝してくれた。

まだお客様用の船が無いので、ルルドとディアンの競争を見せる。

希望があれば、一緒に乗せた。


そして新しい船は、注文してから1ヶ月後に2つ来た。残りの1台は出来上がったら持って来てくれる。


自分たちの船は2ヶ月待ったのに、と不思議に思ったルルドが尋ねたところ、お店の人はルルドにウィンクした。

「必要になるんじゃないかと思って先に作り始めていたのさ」

「すごい! ウーティリッシュさん!」


「きみたちも、先を読む目を養いたまえよ」

楽しそうにご自慢の長いひげを撫でるお店の人。


お店の人も宣伝してくれる、という事だ。


ちらほらと、道具よりもルルドとディアンに会うために来るお客様も増えてきた。

父たちの道具や、ディアンの母の売り物であるぬいぐるみを見つつ、陸の船の競争を見ることを楽しんでいる。


丁度、ルルドとディアンが9歳と6歳の誕生日を迎えた頃だった。


***


ルルドはお客様に人気が出ていた。

気さくに話しかけるのが良いみたいだ。色んな説明もできるし。


ルルドに恥ずかしそうにしながら握手を求めてくる女の子もいて非常に嬉しい。めちゃくちゃ嬉しい。

だけど3,4歳だったので、可愛くて嬉しいんだけど、もうちょっとルルドに近い年齢で来てくれて良いのになー。


一方のディアンは人見知りのため、初対面の人と話すのが苦手だ。

お客様も礼儀正しさを崩せないようだ。


ちなみに、ご老人方も遊びに来る。

皆貴族だから、自分の家にも陸の船はあるはずだ。しかし、話題のものに参加したいようだ。それが優雅な大人の貴族である。いかなる時も子ども心を忘れない。

ルルドも見習おうと思う。


小さな子から老人まで、ルルドにモテ期が来ている。

残念ながら、まだルルドに近い年齢の女の子があまりいない。たまに来ても、恥ずかしいらしくて見学だけだ。

今、初心者向けに、安全でかつ面白いと思うコースを家から見える野原に作っているところなので、完成したら船に乗ってくれればいいなぁと思っている。


***


「ルルド=アドミリード様、お久しぶりですわ」

「お久しぶりです、キッシュ=イリージウム嬢」

ルルドは声を上げて駆け寄った。後からディアンもついてくる。


お客様は、来る時に先に連絡をするから、今日、この子が来ることは分かっていた。名前を言えたのはそのお蔭だ。

ちなみに、このキッシュ嬢のお陰で、ルルドとディアンは、競争を見せる事で家に人を呼ぶことを思いつくことができた。本人は知らないだろうが。


「競争を楽しむためのコースが出来たばかりなんです。キッシュ=イリージウム嬢、お試しになりませんか」

ルルドは、父から言葉遣いの注意を受けている。小さな子や老人は許されるが、ほどほどの年齢になった場合、貴族としての言葉遣いが求められる、と。

いろいろ学ぶことが多い。


「えぇ。楽しみにしてまいりましたの。案内してくださる?」

「よろこんで」

ニコニコしてルルドはキッシュ嬢をエスコートする。

ちなみにディアンは、彼女の弟を案内だ。挨拶はもう済んでいる。


「陸の船を運転されたことはありますか?」

「あるわけないわ。運転手がいるもの」

「では、今日はどうされますか? 運転、僕がしましょうか。同乗されます?」

「えぇ。お願いするわ」


ちなみに、ディアンの方の様子を見ると、弟の方は、自分が運転したい、と主張している。ディアンが困っている。小さいからだ。

ルルドはそちらに声をかけた。

「フィト=イリージウム様。キッシュ=イリージウム嬢は始め僕と同乗なので、彼と同乗でいかがですか。その後、運転の仕方を教えて差し上げます」

「ほんと!? 約束だよ!」

「うん。約束した」

言葉を砕いて笑ったルルドに、弟が嬉しそうに目を輝かせる。彼は話しやすい方が良いタイプだ。


***


キッシュ嬢と一緒に車に乗り、事実上、ルルドとディアンの軽い競争だ。お互いに手を抜くので難しい。

最後のコーナーでルルドが先行し、そのままルルドが先にゴールした。


弟が怒っていて、ディアンが謝っている。

しまった。手を抜くので、逆にルルドもディアンも上手く行かないのだ。


一方、キッシュ嬢は嬉しそうだ。

「もう一度、もう一度いたしましょう!」

「構いませんよ」


「次、ルルド=アドミリード様が僕の船に乗ってください!」

弟がルルドに訴えてきた。


「嫌ですわ。私は彼と乗ります」

「ズルイよ、僕もルルド=アドミリード様と乗りたいよ」


困ったな。何が困ったって、ディアンが気を悪くしていないと良いんだけど。

心配になってディアンを見ると、ルルドに向かって少し苦笑をしてみせた。大丈夫そうで安心する。


「えー。あの、キッシュ=イリージウム嬢。あの、僕は彼より年上なんです。それで、フィト=イリージウム様もキッシュ=イリージウム嬢より小さいので、二人にハンデをあげてみませんか」

「ハンデ?」


「はい。僕たちの方が、3秒、遅くスタートします」

「まぁ! それで勝てますの?」


「分かりません。あ、僕がキッシュ=イリージウム嬢と同じ船の場合です」

皆が不満そうだ。

困ったなぁ。


「待っている間に、やってしまった方が速いので、ハンデつきでやりませんか」

とディアンが少し様子を伺いつつ話を進めようとした。

「そうね。じゃあやりましょう」

「うん。次は勝ってよね!」


姉弟が頷いたので、ルルドとディアンと目くばせしつつ、また船に乗り込んだ。

次はディアンに勝ってもらいたい。しかし。大負けではいけない。難しいなぁ。


***


3秒の差は結構大きい。

いい勝負に見せるために、ルルドは途中でスピードを上げた。

「キャア!」

と驚きながら、隣のご令嬢は喜んでいる。スピードを楽しめる人なのだろう。


早く早く、と急かす声に合わせてスピードを上げる、が注意を払う。

今度は弟に勝ってもらわないと多分ものすごくややこしくなる!


無事、追い上げたけどギリギリハンデがあったから無理でしたー、という形で負けることができた。

ルルドはしみじみと思った。こんな時のためにも技を磨くべきだ、多分。微調整っていうか。


「負けてしまいましたわ!」

隣で、ご令嬢が悔しそうに両手を握りしめている。

ルルドは苦笑した。

「負けず嫌いなんですね」

「当たり前ですわ! 勝負は勝つためにするものです!」

「本当だ」

納得したルルドに、ご令嬢はふと目を留めたようになり、そして笑った。


「でも、ルルド=アドミリード様は素晴らしいですわ。あんなに距離が開いていましたのに、グィッと詰めて追いつきましたもの。素敵でしたわ!」

「あ、有難うございます・・・!」

隣でキラキラした目で褒められるとルルドは照れる。


「また来ても宜しいでしょうか?」

「はい、是非! 僕も楽しみです」

「まぁ」

ふふ、とご令嬢は上機嫌で笑った。


***


ルルドとディアンの競争と、陸の船の安全コースでの競争遊びは人気が増す一方だ。

そんな様子に、ディアンの母が思いつき、陸の船スピード大会を開く事になった。


お客様は貴族が多い。

半年経った今、自分たちで陸の船を買い、その船を空の船で持ってきて、ルルドとディアンに勝負を挑む人も出てきている。あくまで遊びだが。


だったら、お祭りみたいな日を作ってしまおう。


船の店の人が大喜びで、積極的に協力してくれた。

なぜなら、ルルドとディアンが買った陸の船を皆が欲しがり、大儲け中だから。

お陰で、お客様のために買った3つの船の料金は半額にしてくれた。



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