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再会――再開

 目を覚ます。


 体の節々が痛かった。


 頭に靄もやがかかっているようですっきりしない。気分も悪い。


 まぁ、それもそうだろう。


 人を殺した夢など見れば、当たり前のことだ。



 体を起こし、カーテンを開く。


 窓の外には、どんよりした厚い雲が広がっていた。


 小雨の降る音が微かに聞こえてくる。パジャマだけでは肌寒さを感じる朝だった。


 ――今日はずっと雨だろう。直感的にそう思った。



「おはようございます。やっと起きたんですね」



 そんな聞き慣れない声を、僕は幻聴だと思った。



 なぜなら、この家には僕以外に誰も住んでいないのだ。



「無視しないでくださいよ、ねぇ」



 しかし――幻聴にしては、あまりにもリアルすぎる。



 まるで誰かの息遣いが、僕の背後から伝わってくるかのような――



「現実ですよ、何もかも。目を逸らしたって無駄なことです」



 耳元で、誰かの声が囁いた。


 

 声自体は少女のものだが――その落ち着きようには、妙齢の女性を思わせる妖艶さがある。



 僕は、意を決して訊ねた。


 

「お前は――なんだ?」



 少女はフフッと小さく笑う。



「あなたが昨日殺した女の子だって言ったらどうします?」



 少女は僕の肩をポン、と叩いた。



 そして、音もなく僕の目の前に移動する。



 綺麗な女の子だった。長いまつ毛に、透き通るような黒い髪。白くて柔らかそうな肌。お淑やかで凛、とした雰囲気を持つ、白いセーラー服姿の少女。



 そのシルエットは――僕が夢で殺した女の子と、そっくりで。



「夢じゃない。現実ですよ、何もかも」



 少女は、穏やかな微笑みを浮かべている。それが不気味だった。



 もし彼女の言うことが本当だったとして――自分を殺した犯人の前で、どうしてそんな表情ができる? さっきからずっと楽しそうにニコニコと――



「ああ、勘違いしないでくださいね。別に呪い殺しに来たのではありません。むしろその逆です。私はお礼をいいに来たんです」



「お礼――だと?」



「ええ」



 少女はゆっくりと頭を提げて、三つ指をついた。



「私を殺してくれて、本当にありがとうございます」



 顔を上げた少女の表情には、まだ穏やかな笑みが張り付いている。



「…………」



 僕は、言葉を失っていた。



 殺した相手にお礼をいうなんて、馬鹿げている、と。



 真っ白になった頭の中で、それだけを考えていた。

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