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吸血鬼との邂逅


 高坂 燈火(こうさか とうか)に対する僕の第一印象は、「死んでるな」という一言に尽きる――

 いや、腹に風穴を開けて血だらけで倒れている少女を見たら、誰だってそう思うだろう。


 どんな個性も死んでしまえばただの飾りで、鮮やかな流血、その色と比べたら霞んでしまう。


 人通りの少ない、路地裏。


 気が付いたときには既に、彼女(その時は名前すら知らないただの少女だった)は動かなくなっていた。


 土砂降りの中、彼女の胴体から湧き出る綺麗な川が、側溝に向かって流れていた。

 白いセーラー服を着ていたせいで、嫌でも赤が目立った。

 彼女の表情は驚きに満ちており、その周辺だけ時間を切り取ったようだった。


 僕はその光景を、ぼんやりと眺めた。


 綺麗な女の子だった。長いまつ毛に、透き通るような黒い髪。白くて柔らかそうな肌。きっとお淑やかで、凛とした少女だったのだろう。


 ――死んでしまっているけれど。


 彼女はどんな風に笑い、どんな家族を持ち、どんな友達と過ごし、どんな夢を抱いていたのだろう。


 ――そんな想像も、もう無駄だけど。


 人を殺す奴ってのは、一体何を考えて生きているんだろう。何が楽しくてこんなことをするのだろう。僕には全く理解できない。


 雨の中、僕は傘もささずに立っていた。雨の冷たさは気にならなかった。


 それよりも、右手をぬっとりと伝う不快な温もりが、まとわりついて離れない。


「また……やってしまったのか、僕は。」


 震える唇で、他人事のように呟いた。現実感などまるでない。


 それどころか――前後の記憶すら曖昧だ。


「どうして……一体どうして、こんなことに……」


 その問いに応える声はない。 


 咎めるように、ただ雨は降る。

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