12月28日
水泳の授業があった。
周りにいるのは中学の時のメンバー。でもプールは高校。世代を超えた邂逅。
プールサイドに列を成して待機する。私はいつも背の順だと後ろの方だったのだが、なぜか列の中ほどに座っていた。
泳ぎ出す前に体育教師が、今回が水泳の授業を受けるのが初めてのやつはいるか、と尋ねる。そう言えば、水泳の授業はすでに三回目だったが、私はずっと欠席していたのだった。なんでだったかは忘れた。体育教師は辺りを見渡して、私も含めていくつか手が挙がっているのを見て続ける。
「泳げるかどうかというのには個人の資質が大きく影響する。しかし泳げないからと言って楽をするのはいただけない。カナヅチの者も最後まで泳ぎ切ること」
私は右前に座っているM君に目を向ける。何故かすごいムキムキだ。彼はたしか泳げなかったはずだが、やる気に満ち溢れた雰囲気を纏っている。彼を見習わなくてはなるまい。
というわけでついに泳ぎが始まった。列の前の方から順番に入水していき、私の順番。そう言えばこれはどれだけ泳げばいいのだろう。隣のレーンの誰かに聞くと三往復という答えが返ってきた。ということは三百メートル。しんど。
ホイッスルの音。私はプールの縁を蹴りスタート──しようとしたがミスる。足が縁に届かなかった。盛大に出遅れる。
そう言えば、私は全く泳げないのだった。ほとんど犬かきみたいにして必死に前に進む。
いつの間にか、私は別の場所にいた。
ここは船の上だろうか。私はそこのプールで泳いでいた。プールの中にはイルカだかクジラだかが二匹いて、私はそれらと一緒に泳いでいた。
私がプールから上がると、船が私のいる側に傾いた。私の体重が重すぎるらしい。だんだんと傾いて行く船は、最終的にほとんど垂直にまでなった。プールの水が海へと流れ出る。同時にイルカも海へと放り出された。私はそれを見て喜んだ。何故だろう。
船は沈み始めている。このままじゃ死ぬ。私がパニックになっていると、どこかから同級生の声が聞こえてくる。
「落ち着け! 大丈夫だから!」
全然大丈夫じゃない。こちとら泳げないんだぞ。
「足着くから! 落ち着いてゆっくり力を抜け!」
そんな馬鹿な。私は船に掴まっていた手を離して、そろりそろりと足元を確かめる。水が首の辺りまで来たところで足が着いた。