12月26日
私はどこかの高校の文化祭に行った。しかし何故か模擬店などを催しているのは小学生くらいの年齢の子供ばかりで、高校生はみんな客側に回っていた。
私は模擬店のひとつである散髪屋で髪を切って貰った。僕の髪を切る小学生の手つきはたどたどしく、若干怖い。しかも彼は一言も話さず、なんか空気が重い。私の方から話しかけても「はあそうですか」とつれない返事で会話を終わらされる。
空気を変えることを諦めて私が鏡をただひたすらに見つめていると、一人の少女の姿が目に止まった。
美しい小学生だった。流れるような黒髪と透き通るような白い肌のコントラストが目に強烈に焼き付く。
私は散髪の途中にも関わらず、席を立ち少女を追いかけた。髪が変になっていたので、途中にあったウィッグ屋からカツラを失敬し着用する。肩くらいまである黒い髪のカツラだった。
私は少女に追いつくと、彼女を抱きしめてキスをした。彼女は拒まなかった。十秒くらいの口付けの後、
「会いたい人がいる」
と彼女は言った。誰に会いたいのか尋ねると、
「死んだ母親に会いたい」
「それは無理だ。死んだ人は生き返らない」
「それなら──」
彼女はそこで言葉を詰まらせる。
「……それなら?」
私が先を促すと、少女は逃げるように女子トイレへと駆け込んだ。私はそれを呆然と見送る。
「お前は何のためにいるんだ?」
それを見ていたNという人間が私に言った。私はむっとしてNに近づいていく。するとNは逃げ出した。私はそれを追う。階段を一階まで降りて、廊下を走り抜け、今度は四階まで登ってはまた降りる。そんなことを幾度か繰り返したのち、私はNに追いついた。私は躊躇なく右拳を彼の左頬にねじ込んだ。難波はたまらずもんどり打って倒れ込んだ。私は彼の上に馬乗りになり、拳を振り下ろし続ける。
しばらくしてNが死んだので、文化祭は終わった。別に後悔はしていない。