とったどー!
潮の香りを目一杯吸い込んでいると、エルダの町に辿り着いた。
シェスタやエルダのある、このアルフェ伯爵領には大型の貿易港も有るらしいが、このエルダの辺りは漁村が発展して町になったレベルだ。
そもそもの海の香りと言うのは海草や魚の腐敗臭も含むので苦手な人がいるのは仕方ない。海際に暮らさない人にはかなりの刺激臭だ。だが、この香りが、これこそが最強の香辛料。
大陸暮らしの人間にも人類の故郷は海だったと分からせてやろう! やるぞ! このメシマズ世界に本当の魚介料理を教えてやろう!
うふーん、私自身が貝とか海老が楽しみで仕方ない。イカ刺し食べたぁいー。まあスーパーで買ったヤリイカとか臭かった事が有るんでそこは怖いけどね。昔旅行で行った小豆島で食べた獲り立てのイカの刺身が美味しかったんだよね。あれは何イカだったんだろう。コウイカかアオリイカだと思う。
イカって噛まれたら大出血するから生きたイカには気を付けてね。イカのくちばしは鋭くてヤバイ。食べたら美味しいけどね。歯は食べられないけど。
まあイカの話はこれくらいで良いか。……。
海老が食べたい。エビチリやエビ餃子は得意だけど、そのまま塩焼きとか塩茹ででも十分に美味いよね。
日本の中華は日本人好みに作られた日本生まれの中華だけど色々と有るよね。天津飯とか冷やし中華とか。餃子を食べたくなってきた。
生春巻も作りたいなあ。春巻生地は小麦粉とか片栗で作れたっけ。米粉と片栗粉でも作れるよね。生春巻はベトナム料理だっけ?
片栗粉はジャガイモが有るから作れる。まあ私は手軽に召喚するかな。生春巻生地で召喚できないかなあ。
唐揚げも片栗粉が有った方が美味しいしね。油が高いからフライパン揚げ焼きだけど、油少な目な美味しい揚げ焼きの方法は有る。重要なのは油の温度を下げない事なんだよね。カリっと仕上げたいじゃない?
食材が半分浸かる量の十分に加熱した油に一個一個、ゆっくりと油の温度を下げないように間を開けて入れて、焼き加減を何度か引っくり返して見るのがコツだ。揚がったら順番に油を切って並べていく。
時間が開きすぎないように最初は強めの火にかけ、全部入ったらぱちぱちと言う揚げ音が消えない程度に火を弱めよう。
食材を入れたらその分は油の水位が上がるからそこも気を付けよう。まあ油が多くて駄目と言うことは無いけどね、普通なら。この世界の油は高いから少な目で焼くだけだし節約したいなら揚げ焼きにしよう。
揚げ物に大量の油が必要と言うのは間違ってない。油の温度を下げなければ油が少量でも作れると言う話だよ。
うーん、そうだ、揚げ海老春巻作っちゃおうかな。竹の子が食べたいけど流石にこの世界では無理か。サトナカさんも竹の子は知らないらしい……。エセ日本人め……。
キノコと海老でエビ春巻作るかな。ウフフ、美味そう!
そうだ、魔物も美味しい世界なら美味しい大きな貝柱とかも有るかも!
ホタテ醤油バター美味しいよね!
私の作り方は、まず大きめの二枚貝、ホタテ等の貝柱をオリーブ油とほんの少し振った塩で焼いて、十分に煮えたらチーズを乗せ、醤油を少し垂らしタイムを掛けて、上からバーナーで炙る。焦がしたタイムとチーズの貝柱焼き! 最後に黒胡椒を少し振って食べたい!
味付けとして見るならば、オリーブオイルと塩を軽く振った貝が煮えて旨味を出し、香ってきた所でチーズと醤油で塩味と旨味を充分に調えて、最後にその醤油を焦がした香り、焦がしたタイムとフレッシュな黒胡椒少々で香り付け! うーん、不味い訳がない!
醤油召喚するかなあ。ほんと、料理を広める必要がないならこの世界に存在しない調味料を召喚しまくるんだけどね……。
海に辿り着いたのでハイテンションになったのは否めない。私は海鮮が大好きなんだ。
私のワクワクが伝わったらしいヒカリが凄い興奮している。あ! わさびを召喚した方が良いのか?
いや、この世界、わさびには実は代用品がある。辛子だ。
辛味成分はわさびと同じでプロの寿司職人も舌だけでは判断に迷うほど近い食材なのだ。この世界のメシマズを解消するためにはこの世界に有る食材を優先的に使う必要がある。
辛子と、醤油の代用品は、魚醤かな。魚醤はかなり古くから有る調味料だ。穀物を使った醤も、肉を使った醤も昔から有るらしいけど、なかなか見つからない。麹が手を出しづらいが手探りでも作れなくはないだろう。私はそこには時間を割きたくないから無ければ召喚するつもり。レシピは広めるけどね、そこが目的だし。原材料が無いとやってられないよね。
さて、やっと辿り着いた海なのだ。朝から出掛けたのでまだ日は高い。早速海に行こうでは無いか!
エリザに銛をもらって海に駆け込む。ちなみに水着もあらあらまあまあでお馴染みのイレーナさんに作ってもらってある。またお金が増えるよ! やったねサンちゃん!
何故か人格が破滅してるヒカリにも呆れた目で見られたけど、私は銛突き漁がやりたいの!
銛を持って海に突っ込むが、うおおおっ、エメラルドグリーンの凄い透明な海! これは楽しそうだ。季節は少し暑くなってきたくらいだし、魔力の膜が体を覆っているらしくて冷たさもそこそこで気持ちいい。
水中に沈んだ私の体の周りを小魚が回る。足元は白い砂だ。これは、美味いのが、いる。
砂浜ではハゼ、キス、コチ、カレイ等の白身の魚が多い。寿司でも天ぷらでも抜群に美味しいぞ! 食べたいー!
獲るしかないな、これは。
今回はハイテンション過ぎて済みません。だって海のさちー!
私は海の幸が大好きなのです! 私の名前の木砂傘は、き、すな、かさと読んだ場合、下から読めばさかなすきとなるのです! 魚好き!
少し沖の岩場で大きな鯛科の魚を見つけた! 狩るぞ!
美しい青く透明な海の中を、魚を目指してばた足で進む。冷たい水の感触も何故か私に熱をもたらしてくれるよう。大きな魚だ。多分六十センチは有るだろう。二から四キロかな、みんなで食べるには少し小さいけど、一匹で終わる訳ではないしね。
銛を、今の強化された身体能力だと爆散する恐れが有るので、出来るだけ力を抜いて、突く!
一発で魚に食い込んだ銛。銛には返しと言って魚が外れないように針先と反対向きの、下向きの棘が付けられている。これが付いているので魚がいくら暴れても簡単には抜けないのだ。返しが突き刺さると軽く縫い込んだ状態になるからね。
たまに体を切って逃げる魚もいるけど、多分弱って、死ぬ。なるべく一発で仕留めたい。
まあ銛突きなんて普通はする機会無いよね。
ビシビシと魚が暴れる感覚が銛を伝って来る!
魚が銛の返しで外れないことを認識した私は一気に海面に泳ぎ出る!
「とったどー!」
「とったどー!」
私が叫んだその時、何故か隣で小さい真っ裸の女の子も私と同じように魚を銛で突き上げてとったどー、と叫んでいた。真似された!
……で、どこの子?




