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レンと人形

作者: 麻原苺香

まだ魔法が存在する世界でのお話です。あるところにレンという少年と、リアという少女がいました。レンとリアは互いに愛し合い、森の入り口にある小さな家で幸せに暮らしていました。2人はどんな苦しみも悲しみも共に乗り越えてきました。そして、永遠にお互いを愛し合うことを心に誓っていました。


ところが、重ねる年月が長くなると共に、レンはリアにキツくあたるようになりました。他の男と話していると怒るだけでなく、女友達と遊ぶことすら許しませんでした。寝る時間も、自分よりも早くてはならないと、拘束していました。そして、愛し合っている事が当たり前になって、愛を伝えようともしませんでした。それでもリアは、いつも笑ってレンのことを受け止めていました。


ある日のことです。その日も、いつもと同じようにレンはリアをきつく叱りました。リアはいつものように苦笑いをし、「ごめんね」と言いました。その瞬間、リアは白い光に包まれました。そして光が消えた時、リアは球体関節の陶器人形になっていました。レンは驚き、慌てて、森の奥の魔女の元へと人形のリアを連れ、相談に行きました。


人形になったリアを見た魔女は、真剣な顔で言いました。

「この子は今までずっと我慢していたんだ。しかし、ついに我慢が出来なくなってしまった。もう何も聞きたくない、見たくない、考えたくないと深く思ってしまった。そして、自分に魔法をかけてなにもする必要のない人形になってしまったんだ」

レンは初めて、今まで自分がリアに対してしていたことの重大さを知りました。そして、彼女を深く愛していた事を思い出しました。


「あぁ、僕はなんて事をしてしまったのだろう。リアはとても大切なんだ。また僕の隣で笑ってほしい、抱きしめたい。お願いします、リアを元に戻す方法を教えてください」

レンは深く頭を下げ、魔女にお願いしました。

「お前は、何がそうさせてしまったのかを全てわかっているのだろう?それならば、そこを改め、彼女のことを信じて待つしかない。ただし、彼女は自ら人形になるほど辛い思いをしていたのだ。そう簡単なことではないぞ?」

「それでもいいです。それでも僕は、また彼女と笑い合いたいんだ」

レンはリアを元に戻すことを深く決意しました。


それからレンは毎日、人形となってしまったリアの世話をしました。髪をとき、車椅子で散歩させ、寝かせました。たくさん話も聞かせました。そして、リアがそうしてくれたように「ごめん」と「愛している」を伝え続けました。しかし、リアが笑って答えてくれる事はありませんでした。


そうしているうちに、リアが人形になって1年が経ちました。レンは、それでも毎日毎日彼女のために尽くしていました。しかし、ついに我慢することが出来なくなり、人形のリアに抱きつき泣きながら、何度も何度も「ごめん。愛している」と繰り返し叫びました。


その時、人形はあの日のように白い光にに包まれました。そして、同じように光が消えた時、そこには涙を流し微笑んでいるリアがいました。リアは言いました。

「私のために、毎日尽くしてくれてありがとう。沢山のごめんと、愛している、全て届いていたよ。」

レンは泣きながら、もう一度伝えました。

「今まで本当に悪かった。二度と、君に厳しくしない。もう、手放したりしない。心から愛している。これからもずっと、僕の隣で笑っていてほしい」

リアは笑顔で頷きました。


それからは、レンがリアにキツくあたる事はありませんでした。レンはリアに前よりも優しくし、毎日愛を伝えました。リアも同じように、たくさんの愛をレンに伝えました。二人は前よりもずっとお互いのことを愛し合っていました。そして、最期の時まで幸せに暮らしました。


これは私が誰かに伝えたい思いを、自分の体験の一部を元に、童話調にしたお話です。

物語の話ではありますが、同じような体験をする人もいると思います。

レンと同じ立場になる前に、大切な事に気付いてほしいと願い書きました。

どうか、皆さんはレンのようにはならないでください。

自分と相手の気持ちを大切に、特別な事を当たり前とは思わないでください。

少しでもそんな思いが伝わったならば、嬉しいです。

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