第一話 一人目の仲間
第一話です。
おい、おかしくねぇか?
急に召喚されたと思ったら、
「魔王を討伐してください」って、いや俺も魔王なんだけど…
いくら可愛いご令嬢に言われてもなぁ。別の世界とはいえ、魔王が魔王を
討伐しに行くってさすがに気が引けるわ。だって言うなればこれ
同族殺しだよ?ホントに。
「お願いします、勇者様。」って、俺化ける為に人間の格好してるから、
勇者だって信じ込んでるし。もう、良いかな?もうこっちで
ヒーローになろうかなぁ。うん、よしっ!
「じゃあ、殺るよ」
「本当ですか!」
ご令嬢の顔がパァーっと明るくなる。
いや、もう反則でしょ、その顔は。
そんなこんなで、勇者になった魔王であった。
◆
って、街に出てきたものの
「平和だな~」
ホンッッ………ト平和、ザ・平和。本当に魔王とか来てんの?
「キャーーー!」
女の悲鳴!よし!助けに行こう!
逃げる人混みに逆らって進む。
すると小さな鬼が一人の女を取り囲んでいた。
どうやら小鬼の群だな。
「助けてください!」
小鬼の群を飛び越えて中心(女の元へ)に向かう。
「大丈夫ですか?」
「えっ」
女はひどく驚いたように涙を流した眼で俺をみていた。
年齢は20くらいか、顔はまだ少し幼く見えた。
髪は緑色で、服も緑で身を納めていた。
この世界で緑は、【回復】を表す、とお嬢(ご令嬢)が言っていた。
ということは回復系のスキルを持っている、【癒道士】
(ヒールガー)だろう。顔立ちも可愛いし…よしっ!ヒロイン決定!
「あなた…は…?」
「私ですか?私は…」
「擬ャ嗚ァァーーー!!」
小鬼か…今、良いところだったのに……
「擬ャ亜ォォォーーーー!」
【黙れ】
「亜ッ」
小鬼が固まる。全く、俺は魔王だぞ。
「あなたは…何者なんですか?」
何者…か……、魔王は駄目だしなぁー。あっ、そうか俺は…
「勇者ですよ」
◆
例のごとく、彼女は共に旅をさせて欲しい、と言ってきた。
「キュア・アピース・クウェンチ・ヒールです!
癒道士をやってます!
一緒に旅をさせてください!」
「良いよ」
魔王倒すのに回復は必要だしな。まっ、多分俺は使わないけど
「良いんですか!?」
少し驚いているようだった。ここは優しく言おう。
「あぁ、良いよ」
「やった!」
小声で言って両手でガッツポーズをしている。
小声で言う必要なかっただろ。まっ、いいや。準備できたな。「よし!じゃあヒール!」
「は、はいっ!」
嬉しそうだな。ヒール、で良かったか。
「さて、行くぞ!」
こうして魔王が魔王を討伐する冒険が、幕を開けた。