第2話 入学
アパートを借りてから一週間が過ぎ、今日は入学式だ。制服に着替え、準備をすませて家を出た。
入学初日だ。はあぁ、いやだな。行きたくないなあ。友達できるかなぁ。彼女できるかなぁ。とりあえず担任の先生はやさしいお姉さん的な人がいいな。まあ、そんなマンガみたいにうまくいかないと思うが。
駅に着くと待っていたかのように電車が停まっていた。その電車に急いで乗り込み空いている席に腰をおろした。
学校の最寄りの駅までは二駅なので持ってきたラノベを読む暇もなくあっという間に着いてしまった。ここからは歩いて学校まで行くしかないので仕方なく歩いていると、周りにちらほらと同じ制服を着た人たちが歩いている。その人たちのうしろを着いていくことにした。
ついに学校に到着したぜ!っていうかこの学校くそデケェー!俺は三年間ここで学校生活を送ることになるのか。
あまりの広さに戸惑いながらも自分のクラスである1-Aの教室を探した。教室に入るとすでに俺以外の生徒は席に座り、前の黒板の方へと視線を向けていた。その視線の先の教卓には高い背丈に筋肉のついたムキムキな体、スキンヘッドにサングラスでいかにもスーツの似合わない男が立っていた。俺のほうを見ると男がサングラス越しでもにらんでいるということが容易に理解できた。
「お前、名前は?」
スーツの男が低音のきいた渋い声で聞いてきた。
「か、華澄麼繼龝です。」
あまりの威圧にびびりながら返すと男は視線を外して言った。
「遅刻だが、今回は許してやる。早く自分の席につけ」
こわい。こわいよ。えっ?まさかこの人って先生じゃないよね?スキンヘッドにサングラスってこわすぎだろッ!!
席につくとスーツの男が話を再開した。
「俺がこのクラスの担任の鮫垣だ」
担任・・・・・・。マジかーーー
「俺が担任になったからには、このクラスには俺の作ったルールに従ってもらう」
ルール・・・・・。マジかーーー
「ルールといっても、そんな難しいことではない。俺の命令は絶対、ただそれだけだ」
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休み時間になった。しかし担任である鮫垣先生の発言によってクラスは静まり返っている。
今日からあの先生が担任になるのか。しかも入学初日にいきなり目をつけられたし、もう最悪だーー!!
しばらくその場でおとなしくしていると後ろからさわやかでとてもカッコいい声がした。しかし、どうやらその声の主は俺に話しかけているわけではないようだ。
振り返ってみると後ろの席に座っている男は隣の席の女子生徒とイチャイチャしていた。
くそがッ!!チャラチャラしやがって!!声だけじゃなく顔までカッコいいだとッ!!羨ましすぎる!!きっとああいうやつのことを人生の勝ち組って言うんだろうな。あいつとはきっと仲良くなれないだろうな。まあ、あんなやつとは関わりたくもないけどな。
後ろの席のチャラ男が俺の視線に気付くと会話をやめて立ち上がり俺の前へとやって来た。
なんだよ!!やんのか!?
警戒しているとチャラチャラした男はニヤリと笑った。そして俺の肩に手を置き言った。
「お前、入学初日から遅刻するとはやるじゃねえか。どうだ、俺と一緒に世界をひっくり返さねえか?」
チャラ男の意外な言葉に衝撃が走った。
もしかしたらこいつは中二病側の人間なのかもしれない。