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月夜に鳴く兎。  作者: 葛谷雅。
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桃色兎は夢を見る 3




「あ〜、それにしても、これ持って行くのめんどくさいわね〜」


柊華代が、李月に聞こえるように大きな声で文句を言いながら、預かった手紙の束を片手でぶらぶらと振り回す。

李月が千尋に会いたい理由、華代はなんとなく察していた。

李月はそれに気付かない。


「誰か優しい人が持って行ってくれないかしら〜」


お世辞でも上手いとは言えない演技で、わざとらしく言ってみる。

李月はそれでも気付かない。


「…直接言いに行った方が早いんじゃない?」

「……そうみたいね」


諦めたら?とでも言うように輝が小さく溜息を吐き出したあと、今度は、会話の内容が聞こえないようにひそひそと囁く。

電柱の陰からの目線に気付かれていることにも、李月は勿論気付いていない。


「…あら桃瀬さん、偶然ね」


突然ぱっと振り返ったかと思うと、ここからでは遠く見えにくい位置にいた李月へと声をかける。白々しいにも程がある。


「えっ、あ、ぐ、偶然ですね…」


彼女はどこまで鈍感なのか。掛けられた声に、あたふたしながらも、悪魔でも偶然だと装って答える。わかりやすく彼女の目が泳ぐ。


「あなたこっち方面だったかしら?普段はこっちでは見かけなかったと思うのだけれど」

「あ、それは、あのっ、たまたま、こっちに用がありまして…」

「ああ、そうだったのね。あ、じゃあ千尋の家にこれ渡してきてもらえないかしら」


今までの話の流れから、その話題への振り方にはかなり無理があったが、李月には、隠れていたのにあっさりとばれたことでそこまで考える余裕がなかったのか、またはその役目が今の自分に都合がいいと思ったからか。


「……わっ、わかりました…!」


受け取った紙束にぎゅっと力を込める。それでも「私なんかが、」という目で華代に訴えかけてはいたのだが、彼女にはその思いは届かなかった。



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