才色兼備は光に堕ちる 3
霜月千尋は、幼少から今までを2人の友人と共に過ごしてきた。
家が近所で親同士も仲が良かったということで、毎日のように遊んでいた記憶がある。
1人は、柊華代。なんでもできて、自分を偽ったりしない。その身体には似つかわしくない程、よく食べる。
もう1人は、泉田輝。基本的に無表情で、周りの男子より少しだけ、髪が長い。
2人共に何でもできる美男美女だった為、運動と元気しか取り柄のない千尋にとっては、自慢の幼馴染であり、自分が劣っていると、珍しく頭を悩ませる原因でもあった。
だが、寂しさと劣等感で空いた大きな溝を埋めてくれるのもまた、2人の幼馴染だった。
自分は2人といてもいいのかと、今でもふと思う時がある。
もしかしたら自分のことを、出来損ないの劣等生だと思っているかもしれない。
「なんだか今日は元気がないのね、千尋の癖に。」
輝と勉強会をした一週間後の学校の帰り道、先程コンビニで購入したピザまんを、華代が頬張る。その前には確か、アメリカンドッグやドーナツも食べていたような気がするのだが。
一体、そんな病弱そうなくらいの細い身体のどこに吸収されているのか。
千尋も華代に負けず劣らずよく食べるが、帰り道の10分間の間に、彼女ほど食べれるかと聞かれると、流石に自信がない。
「気のせいだろ、俺は元気が取り柄なんだから、元気がなきゃ俺じゃないよ。」
元気しか取り柄がないのだから。自虐的に笑う。
幼少時代から思い知らされてきたことを、ふと吐き出す。
「そうかしら?貴方の運動能力は私も認めていたのだけれど」
こちらも見ないままそう言った後、華代は最後の一口のピザまんを口に入れる。
それから、その言葉が本当だと信じられないと、驚いた表情で彼女を見つめている千尋に一言、「何?」と不思議そうに首を傾げてみせた。