才色兼備は光に堕ちる 1
今日は中間テストの結果発表の日だ。
少年、霜月千尋は、平均点の半分以下の点数が書かれた答案用紙を両手で持ち、自分の席で肩を震わせていた。
少年は、勉強に対してだけは理解力と思考力が働かない。
そのため勉強机に座ってノートを開いても、何を、どこから、どうやって勉強すればいいのかわからず、そのまま眠りにつく。やる気はあるが、全く勉強をしていないのだ。
その結果が、今日のこの紙切れ。
やばい、なんて言葉では言い表せない程の点数。
「…じ、16点…」
たまたま苦手教科だったことも重なってか、取れた点数。取ってしまった点数。用紙に書かれた数の少ない点数が、少年を嘲笑う。
「あら、そんな点数取れる人っているのね。逆に凄いわ、尊敬する程」
およそ"尊敬"という感情は含まれていないであろう声色でそう言い、冷めた表情で少年の点数と顔を交互に見ているのは、少年の幼馴染の、柊華代。
彼女は生徒会長を務めている。
そして、テストはいつも、当然のように満点をとる。
病弱そうな白肌の細い腕は、触れるだけで折れてしまいそうだ。
二重の切れ目は、力強く美しい。
誰もが振り向く美人、とまではいかないが、才色兼備とは、彼女のことを言うのだろう。と、千尋は思う。
「な、なんだよ!自分がちょっと頭いいからって、俺だってやればできるんだよ!」
「その言葉、小学校の頃から何度聞いたかしら」
呆れたように溜息をつく彼女の点数は、当然今回も満点だった。