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呪われし魔王の安寧秩序  作者: 鳳仙花
第一章・魔王軍
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魔王とシャルの朝

翌朝、魔王は太陽の光りを感じて重くなった瞼を上げる。

いつの間にか眠ってしまっていたのかと、魔王は自室のベッドの上でぼんやりとしながら意識を覚まし始めた。

何度か瞬きをして目を覚ましながら、乱雑にかけられていた布団をどかす。

それから体の感覚を取り戻すように軽く背伸びしていると、魔王はシャルの気配を感じて窓際の方へ視線を移した。

すると、窓際には下着姿にブラウスを着ていたシャルが、窓から外の風景を覗き込んでいる姿があった。

太陽の光りがシャルの緑の髪を鮮やかに照らし、いつもの暗い様子とは対照的に輝いて見えた。

シャルの薄く透明な羽も、反射でもしているのか光って見える。


「あ、魔王……。おはよう……」


シャルは魔王の起床に気づくと、魔王に顔だけを向けていつもの落ち着いた声で挨拶をしてきた。

魔王は結局一晩シャルと自室にいたのかと思いながらも、挨拶を返す。


「あぁ、おはよう。……いつの間にか眠ってしまっていたな。特訓に付き合うと言っておいてすまない」


「大丈夫……、私もさっき起きて………着替えて…、来た所だから……」


……もしかして黒色のローブをシャルの部屋で着替えてから、わざわざ今の姿になって俺の部屋へ戻ってきたのか。

そういうふうに魔王は捉えたが、多分だが間違いではない。

寝る前までシャルが着ていたはずの黒色のローブが、魔王の部屋の中には見当たらない。


「いつの間にそんなブラウスなど持っていたのだな。俺は支給した覚えはないぞ」


「鷲の側近さんが……用意、してくれたんです…。同じように翼があるから……、子ども用の鳥族の………使うといいって……。下着も……」


シャルはそう言いながらブラウスを少しだけめくって、身につけている下着である水色の模様が入った白のパンツを強調するように言ってきた。

シャルは小さい体だから別に何とも思わないが、少しは恥じらいを持つべきだと魔王は少し呆れ気味に思うしかない。

魔王は視線をシャルから外して、会話を普通に続けた。


「そうか。側近はそういう所にも気が利く奴だからな」


「そうです…ね。それにしても……、ここって…あまり寒く……ない、ですね」


「この魔城に張っている結界魔法の力だ。城内の環境は常に最適にするようにしているからな。そのほうが何かと仕事に捗りが出る」


「そう…、なんだ…」


魔王の返答にシャルは納得して、また窓から外の光景へと視線を戻す。

そんなに外を見ても何もないだろうに、よく外ばかり見ていられるなと感心してしまう。

とりあえず魔王はベッドから出て、どれほど眠ってしまったのかと室内の壁掛け時計を見上げる。

すると時間はすでに十時三十分となっていた。

かなり時間の感覚が狂ってしまっている。

この時間となると、さすがに鷲の側近が何事かと一度は様子を見に来ているはずだ。

魔王は自室の扉の方を見ると、扉の下の隙間からは手紙が一枚置いてあった。

おそらく鷲の側近からの置き手紙だ。

魔王は指先で風の魔法を操り、置き手紙を自身の手元へと飛ばした。

そして手紙に書かれた文面を黙読していく。


『お疲れのようでしたので、失礼ながら置き手紙にさせて頂きます。参謀の紹介及び会議は午後の2時、作戦室と予定しております。それまではどうぞごゆっくりおやすみください。また、なにかあればすぐにお申し付けください。すぐに私めか、使いが対応しにいきます』


そう丁寧な字で書かれていた。

魔王は読み終わると炎の魔法で一瞬で紙を燃やして、塵すらを室内に残さないようにと風魔法で燃えかすを手のひらに集めて外へと転移させる。


「シャル、今日の2時から会議がある。お前も出席しろ、大事なことだ」


「…?うん…、わかった……」


「それまでは時間が空いている。朝食はとったか?中途半端な時間だが、まだなら一緒に行くぞ」


魔王の何気ない誘いにシャルは過敏に反応したようで、声のトーンが上がるほどにいつもより明るい声を出す。

しかも飛びつくように魔王へかけよって、魔王の手を掴んでまできた。


「うん、いく…!朝食まだ、だったから…!」


「そうか……。それなら着替えるんだな。さすがにその格好で城内をうろつくわけにもいくまい」


「わ…わかった…!着替えるから……魔王、待ってて……!ね…?」


そう早口で喋りながら、シャルは魔王を逃がしまいと抱きつく。

ここまでシャルがリアクションを取るなんて今ままでなかったのもので、さすがに魔王はわずかに驚いてしまう。

まさかここまで反応してくるとは予想外すぎた。


「わかった、待ってるから早くいけ」


「うん…!」


シャルは嬉しそうに言いながら、ブラウスの首元の下から結晶石を取り出してきた。

どうも首飾りとして身につけるように工夫していたらしい。

シャルが付加魔法を結晶石にかけると、転移が発動して結晶石の輝きと共にシャルの姿が一瞬で消えた。

本人が使うところは初めてみたが、これでシャルの部屋へ転移されているはずだ。

あの様子だと飛んですぐに戻ってきそうなので、その間に魔王も着替えようとクローゼットへ歩み寄った。

すると扉がノックされた。

一瞬シャルかと思ったが、さすがに早すぎる。

それにノックの力がシャルにしては強いので、別の誰かだとすぐに認識し直した。


「誰だ?」


魔王が問いかけると、答えが返ってくる前に扉は開けられ、ノックしてきた本人が入ってきた。

そのノックをした魔物は、一見は魅力的な体型をしている女性の姿の魔物だった。

豊満な胸、艶やかな肌黒い肌に、見るものを惑わしてきそうな黄色い瞳、鮮やかに輝いてで明るさを目立たせたようなロングの銀髪。

そしてミニスカで引き締まりながらも揺れる太ももをさらけ出し、胸元までが見えたりとやたらとその体を強調するかのような露出が多すぎる服。

小さな角に長く細い尻尾、そしてコウモリに似た翼を持っている。

その姿で魔王は初対面にも関わらず誰なのかと察した。


「サキュバスか。お前が選定でみごと選ばれた一体だな?」


魔王がそう尋ねると、サキュバスは舌をかるくぺろっと出して唇を舐める。

舐めたことによる潤いによるものか、綺麗な桃色の唇が強調されだす。


「そうですぅ、魔王様。私が選定において輝き成績をだしたサキュバスですぅ。朝から押しかける真似してすみません。一度会議の前に挨拶と思いましてぇ…」


サキュバスは色っぽい声で、甘えるような口調で喋りだす。

いかにもサキュバスらしい動作、口調、雰囲気だ。

自分の本心をさらけ出してますよという演技臭さはあるが、大抵の人間の男なら興奮してしまうような魅力が体型を除いても仕草だけであるものだ。

魔王にまで、その魅力が通じるかは別の話だが。


「ところでさっき女の子がこの部屋に入るのを見かけていたんですがぁ、あれって…魔王様のお世話係かなにかですかぁ?あ、それとも魔王様には似てないですが、もしかして娘ですかぁ?」


「シャルのことか、あいつは娘でも召使いでもない。特別扱いはしているが、一応はただの魔王軍の一兵士だ」


魔王の言葉にサキュバスは目を一瞬だけ細めた。

サキュバスは相手の心に干渉をするのを得意とする種族だけあって、相手が魔王だろうと心や言葉の真意や変化には敏感だった。

そんな種族だからこそ、手のひらで踊らせながら人間の心を読み取っていくので参謀としては適任であったのだ。


「ふ~ん、そうなんですかぁ。じゃあ…私が魔王様のお世話係になってあげましょうかぁ?朝、昼、晩。いつだって魔王様のお世話できますよぉ。むしろ相手が魔王様なら喜んで一日中だってお世話しますぅ」


「……サキュバスのお世話だけはごめんだ。きっとろくでもないだろう」


「ん~?そうかなぁ。一応は炊事洗濯掃除とか何でもできますよぉ?そういうのを求めてくる獲物もいますからぁ」


サキュバスの言う獲物は、異性限定をさしている。

同性でも問題ないらしいが、一番の獲物は異性を喰らうことらしい。

サキュバスとはそういう種族だ。


「悪いが、サキュバス。これから俺は食事を取る。ちゃんとした挨拶は会議の時にでも頼む」


「あー食事ですかぁ。いいですよぉ、私もご一緒しますぅ。普通の食事も取れますしぃ」


「……そうか、わかった。お前への歓迎も含めて一緒に食事をしよう。ただし、お前の言っていた女の子も一緒だ。異存はないな?」


魔王はそう言うとサキュバスは優しさと妖艶さが交じった微笑みを見せる。

それから嬉しそうに了承した。


「あぁ、あの女の子もですかぁ。大丈夫ですよぉ、可愛い子とならぜひとも一緒にご飯食べたいですもん。やったね、サキュバスちゃん。あの魔王様と可愛い女の子とお食事だぞ~ってね」

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