表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

期待のバレンタインデー

作者: カフェラテ

 よお。

俺はどこにでもいる勉強もスポーツもできるわけでもないごくごく平凡な学生、片江だ。

そんな俺に良いことが起きたんだ。聞いて欲しい。


 

 それは2月13日。

そう、いわゆるリア充並びにモテない男子には憂鬱でしかない日の前日である。

机に向かうとラジオからはバレンタインデーの特集、かと言って外に出ると女子が彼氏や好きな人のためにチョコを買いあさっている。

まあチョコが安くなっているからそこだけはいいとしてやろう。


そんな前日も俺は学校でそわそわするリア充系の男女を尻目に読書をしていた。

悲しいことに本の題名が「モテる秘訣十選!」

察してくれ・・。

そんな時クラスで隣になった同じく読書をしている扇原が肩を揺すった。

「おい。片江。お前はバレンタインデーは貰う予定とかあるのか?」

なんて奴なんだろうと思った。貰えるんだったらこんな本読むかよ。

「あ?んなわけあると思うか?」

「ないなー笑」

こいつ何なんだ!

相変わらずの人を怒らせるのが上手い扇原である。

そんなの持っててもデメリットしかないと思う。

それからいつものように淡々と授業を受け家帰った。


学校に筆箱を忘れたのにも気付かず延々と考えていた。

本当に俺は一つも貰えないのだろうか・・。

自分の容姿や今までに貰ったことが母からしかないことは重々耐えてきた。

お願いだから神様。一つでいいんだ、誰でもいい!

俺にもバレンタインデーを満喫させてくれぇぇぇぇぇぇぇええ!!

学校ではクールにしていたがつい家に帰ると本音が出てしまう。

思春期よ、残酷だ。


そんな事ばかりを考えてろくに眠れなく朝になってしまった。

まあ金曜日だ、帰って爆睡しよう。

そんな俺の頭の中からはバレンタインデーの事は綺麗さっぱり忘れ去られていた。考えすぎは良くないのだな。

俺はいつものように支度をしてゆっくりと学校に向かった。そこで俺は思い出したのだ!

最初はなんで女子は紙袋をたくさん持っているのだろ?と疑問に思っていた。

しかしよく考えるとすぐに疑問は晴れた。そう。今日はリア充デイズ、バレンタインデーだ・・・。

そこからの俺のテンションは下がるとこまで下がりいつもは通常の一人登校も恥ずかしくなってきた。

なぜ?察しろ。

しかし、どこか期待はしていた。なぜならいつも読んでいる「モテる秘訣十選」には、特別ページとしてバレンタインデーの事について書いてあったからである。そのことを一言一句、頭に入れてきた俺はなぜか期待していたのである。

愚かだ。俺。

しばらくして学校に到着。さあここでまず一つ目だ。

下駄箱。そうドラマなどでよく目にするだろう。中に手紙やチョコが入っているアレだ。そしていつもと変わった気持ちで下駄箱の扉を開けた。

「ん、んんー」

そこには俺の薄汚れた上履きしかなかった。洗うよ、明日には。

期待していたのかなかったので変な声まで出ていまった。

だがこんなことでは俺は諦めなかった。まだ手はあるから。

そんな思いを胸にまたもや期待して教室に入った。

英語で言うならば教室にintoである。なぜ英語で言ったのかは気まぐれである。

二つ目の場所、そう、机の中!ここもドラマなどでよく見るであろう。

俺は今度こそとばかりに少しニヤッとしながらさりげなく手をいれた。

な、ない!それは一瞬のことだった。またもや無念である。そんなことを知ってか知らずか扇原が話しかけてきた。

「お!もしかして片江、チョコ探してんの?笑」

「ち、ちげーよ。ただ教科書を探してただけだ。」

なんていう言い訳だ。これでは探してましたよと言うのと同じではないか。

「ふーん。あ、見ろよこれ!」

「おい、もしかしてそれって・・。」

「そう!正真正銘女子からの手作りバレンタインデーチョコ!!」

「お、お、お、お、よ、良かったな」

動揺しすぎだ俺。それにそんなにチョコを疑ってはいない。

「まあな、これで7つ目だな」

な、なんだと?!お前俺と同じく前日に本読んでたじゃねーかよ!なのにおい・・なんでだよ。

もうお前は知らん。さよなら扇原。

「おう。おめでとう。あ、用事あるからまたー。」

もう扇原には興味がなかった。もとからだが。

さあ三つ目の場所、ロッカー。

意外に知られていないがある可能性はあるのだ。

ん?あるある?

またもや期待に胸を膨らませ後ろのロッカーに急いだ。こんなこともあろうと中を整頓しといたのである。用意周到とはこのこと。

そして見てみる。

「え?」

また変な声が出た。決して変声を出しているのではない。もちろんなかったのだ。せっかく奥にスペースを作っといたのに。これまた用意周到である。自慢ではないぞ。

さあ困った俺の頭では今までの三つの場所しか頭にないぞ。意外に少ないな。

まあ特別ページだから仕方ない。

俺は悩んだ。本当に俺にはバレンタインデーはないのか?女子たちは義理チョコだって言って他の男子にあげてるのに俺には義理でもないのか?などと一人、心でつぶやいていた。

お願いだ神様・・・。

そんな願いも虚しく時は過ぎて結局何も収穫はなく家に帰ってきたのだった。

あいにくの家に誰もいないこの状況。惨めだ。

こんな時に親は仕事が遅く帰るのが夜中だという。親がいないのは少し気が楽だが今日はなんだがいて欲しかったような気がする。

いや、いて欲しかった。

机の上の千円で寒い中近くのコンビニで弁当を買い家に戻ってきた。

すると家の電話の留守番電話のボタンが点滅していた。見慣れない番号なので俺は放置することにした。これは居留守なのかな?

しばらくして弁当も食べもう寝るだけで少しテレビを見ていたその時、家の電話が鳴った。もう9時を回っていた。こんな遅くに誰だと思ってみると前の見慣れない番号だった。

少し気味が悪かったが人にも我慢の限界があるので受話器を取った。

「あ、やっと繋がった!」

電話の主は女の声だった。

「ねー聞いてるー?」

動揺していて言葉が出なかった。だって女子と話すの滅多にないから。あ、コミュ障?

「ね!無視しないでよー」

「あ、ごめんなさい。どちら様ですか?」

「え?同じクラスの中村だよー?」

「あ、中村さんねー。ごめんごめん。」

「もしかして忘れてるとかないよねー?」

「あ、いや忘れるなんてありません!」

そう忘れるはずがないのだ。だって中村は俺がずっと皆には言わずにずっと片思いをしていた相手なのだから・・。

なぜこんな時間に中村が?

もしかしていやそんなわけないよな。

「で何か用事でもあるの?」

「え、あ、まあね」

「なに?」

「だから・・。あれ。」

「あれ?」

「だーかーらあれ!」

「なんだよ。」

「今日は何の日・・?」

「バレンタインデー?」

あ、待てよ・・。

「そうそれ!ちょっと外来て!」

「お、おう・・」

な、なんだこの急展開!

最後の最後に神が微笑んだのか?だとしたら神様ありがとう。


「あー寒い寒い。」

これでも冷静な振りである。下手な演技だが。

「もー遅いよー寒かったー」

中村は口調は少しチャラめかもしれないが外見は黒髪で清純みたいな子だ。

「ごめんごめん。・・」

俺は見た、中村の手にあるどこか可愛げあふれる紙袋を!

「は、はい!これあげる!!」

「え、これは?」

「チョコ・・。」

「え、てことは・・?」

「もー!聞かないで!わかるでしょ?私の・・気持ち?」

「分かったよ。今日は遅いから帰りな。明日話すよ。」

無駄にカッコつけたのは思春期だからかもしれない。

「うん・・。バイバィ・・」

「おう!またなー」

俺の体は震えていた。寒さかもしれないが多分違うアレだアレ。ここも察しろ。

家に帰ると時刻は11時だった。時間って経つの早いんだなと思いソワソワ感が収まらぬ中無理やり眠りについた。


コケコッコーーー

無論そんな鳴き声などしないが冷めないソワソワ感で聞こえたのかもしれない。

なんだかその日は目覚めが良かった。理由は一つだが。

そしてそのソワソワ感は学校についたときピークに感じた。無論トイレではない。

俺はいつ返事を返そうか迷っていた。下手にカッコつけるのもアレだしだからといって::などと考えていた。

もちろん返事はOKだ。断る理由が見つからない。見つけたくもない。

その日はいつもより授業を長く感じ心が落ち着かなかった。当たり前だな。

そしてホームルームが終わったあと中村にさり気なく手紙を渡し教室を出た。

手紙にはこう書いた。

屋上来て。

この一言だ。なんてベタなんだろうと思ったがうちの学校は人がいないのがゆういつそこだけでこれ以上の場所はなかった。

俺は先に屋上に着くと景色を眺めていた。普通イメージトレーニングとかするかもしれないが俺はもうすでに練習をしてきているので問題はない。やはり俺は用意周到だな。自慢ではないぞ。

それから数分後・・・。

「あ、ごめん。遅れてごめんね。」

「いやいや、平気平気。わざわざここまで呼び出してごめんね。」

「ううん。こちらこそ。」

「・・・・」

「・・・・」

しばらく沈黙が続いた。この時、俺は時間の経過を体で感じたような感じがした。初めての感覚だ。

そして俺は、練習通り告白した。中村の返事はOKだった。内容は恥ずかしいのでやめにしよう。

中村は泣いていた。何故か俺までも泣いていた。恋ってうん・・・。

それから俺たちは二人で帰った。



それは俺にとっての甘くてほろ苦い初恋だった。

はい。カフェラテです。

もうすぐでバレンタインデーということで書かせていただきました。

これはすべて妄想のため内容が薄っぺらいですが楽しんでいただけたら幸いでございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ