炎の祭
騎士達と王族の行進の間、精霊術士達は精霊宮前の大通りで待機していた。城を出発した騎士達が、目の前を並んで進む。始めは歩く者達、そして騎乗している者達が続く。白塗りの馬車が数台並び、乗っている人々が周りを見たり手を振ったりしている。王と王妃、王子はそれぞれに別れて傍仕えの者達と居るようだ。
大通りをゆっくりと進み、街の外へと繋がる門を一度出たらそこでぐるりと回ってまた大通りを逆戻りする。そうして、城の方へと戻ってくる。行進はそれで終わりとなる。その内に街の中は食べ物を食べたり、酒を飲んだり、賑やかになってくる。様々な物を売り、また振る舞い、語り合う。楽器を鳴らしたり踊ったりする者も居る。このお祭り騒ぎが2、3日続くのだ。
行進が終わったとはいえ、精霊術士達はまだ解散にはならない。夜に行われる出し物の準備をする事になる。町の中心を流れる川にかかる橋の傍に予めとってある場所を整えたり、妖精達の力となるかがり火や精霊石を用意しておかなければならない。出し物自体は精霊宮の中で位の高い祭位が1人と3人の助祭位が担うので、始まってしまえば残りの精霊術士は終わるまでのんびり眺めている事もできる。
日が傾き、暗くなってくる頃には出し物の準備は終わっていた。川の傍の場所で、中位と従位の精霊術士達は腰を落ち着ける。かと思えば、すっかり盛り上がっている市場の方向へ紛れ込む者も居る。
適当な場所に座り、トルクはふーと長く息を吐いた。祭礼用の服の首元を指先で軽く引き、心もち緩める。
「お、トルク。」
横から顔をうかがい、並んで座る人影があった。反射的にトルクは見上げる。
「ん? ラフィか。」
ラフィだった。冗談交じりの調子で、にやりと口元を上げた。
「一緒に見る相手はいないのか?」
肩をすくめて、トルクはすまして見せる。
「当然だろ。ラフィの方こそ、1人なんて珍しいんじゃないか?」
ぱっ、と明かりが飛び上がった。闇の広がった空に、走る火の残像。まずは大きく、それから幾多の小さな火が踊り始める。
眺める人々が感嘆の声と吐息を漏らす。トルクとラフィも、火の妖精達の舞を見上げた。
パチパチと、上空で細かく火が爆ぜる。徐々に小さくなった火が、ぽっと明るく燃える。一斉に消え、間もなくまた灯った。
「……あのさ、ラフィ。」
空を見上げたまま、トルクは口を開く。出した声が火花の音や周りのざわめきに溶け込むような気もしたが、続けた。
「俺、西の街へ行くんだ。あ、追放じゃないからな一応。」
ラフィがぱっとトルクを振り返った。開きかけた口を、一度閉じる。すっと息を吸った。
「……もしかして、俺が遺跡行きを押し付けた事が関係しているのか?」
トルクは首を横に振る。
「いや、俺の体質の問題。」
じっと、ラフィは切れ長の目でトルクを見た。
「……そうか。」
また、空で明るく火が瞬いた。




