表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青石の精霊術士  作者: 下町
本編
35/46

花の奥さん

 バイスが片腕を机に乗せた。半身を乗り出す格好になる。

「私の話が出ていた、という事は遺跡に行った話でもしていたのかな?」

ル=トゥは小首を傾げた。手の平を上に向け、トルクの右腕を指差す。

「遺跡の、というよりはトルクの石の話をしていたんです。」

トルクは飲んでいたお茶のコップを置く。コトリ、と控えめに音が立った。

「石?」

バイスは顔を傾けている。トルクは両手を合わせて、指を組んだ。

「そういえばバイスさん、遺跡の物は受け取ってもらえそうですか?」

ん? とバイスは顔だけでトルクを振り返る。ぽんと手を打った。

「ああ、そうだ。精霊の像は王への献上品にする事になった。王自身が使わなくても、飾りとして置いておく分には問題ないだろうという事だ。それと、水の精霊の石は精霊宮に回される。精霊宮で役立ててもらえたら、とね。」

口元をきゅっと引き締め、愛嬌のある笑みを浮かべる。トルクもほっと息を吐いた。

「良かった。行った甲斐がありましたね。」

バイスは頷いた。


 雑談をしているうちに、女性が帰ってきた。

「ミリィ、お帰りなさい。」

ル=トゥが入り口に立ち、出迎える。バイスも椅子を立ち、そちらへと体を向けた。

「ただいま、ル=トゥ。お待たせ、バイス。」

身軽に入り口を潜り、女性はバイスの横に立つ。机の上に、腕にかけていた籠を置いた。

「おかえり、ミリィ。」

横からぎゅっとバイスが抱き締める。そこでトルクはやっと、女性の名前を知った。籠の中には、色とりどりの木の実が詰まっている。ミリィはバイスの背中に腕を回し、ポンポンとその背中を叩いた。

「バイス、人前よ。」

「それもそうだ。」

さっとバイスは腕を離す。さっと、これまた素早い動作でトルクにミリィを示した。

「改めてトルク君、私の奥さんだ。」

ぺこりとミリィは頭を下げて、にこりと微笑んだ。ぱっと花の咲くような笑顔だった。

「はじめまして、ミリィです。よろしくね。」

慌てて、トルクも椅子から腰を上げる。

「は、はじめまして。トルクです。」

ル=トゥは机に置かれた籠の中を覗いている。1粒2粒、指先でつまんで見た。

「たくさん拾ってきましたね。」

ミリィはうふふ、と肩を竦める。

「つい、夢中になっちゃった。思ったよりたくさんあったわ。持って帰って、ジャムにしようかな。」

バイスが部屋の奥から椅子を運び出した。自分の席の横に並べる。

「それは楽しみだな。」

口元がほころんでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ