やっと行ってみた
翌日。トルクは寝坊した。
一瞬、自分がどこにいるか分からずに呆然と天井を見上げてしまう。それから周りを見回して、見慣れた自分の部屋だと気付く。ベッドの横には昨日持ち帰ったままの荷物が落ちている。
「そうか、帰ってたんだった。あ、掃除……。」
部屋の外からは様々な音が聞こえていた。外に面している窓から、がさがさと草の擦れる音。部屋を出るドアの向こうからは、何人かの話し声。朝の掃除をしているのだろう。
ベッドを降りながら、頭を掻いた。
「そういえば休んで良いって言われたんだっけ。」
服を着替え、荷物袋の中身を出す。適当に部屋の棚に置いた。いつの間に紛れたのか、干し肉が一欠片入っていた。しばらくそれを眺めて、机の上に置く。
「……喉乾いたな。水飲んでくるか。」
部屋を出て、食堂へ行った。
食堂で水を飲んで、精霊宮の外へ向かう。途中、何人かの精霊術士に会った。久し振り、とかおう、とか短い挨拶や会釈を交わして通り過ぎる。大通りに出て、街の市場を抜けて、街の外へと出た。街道に出て森へと脚を進める。
「こっちの方だったかな。」
半ば勘だよりに歩いた。
あった。小さな家、というよりも小屋が佇んでいた。森の中、木々に紛れるようにぽつりと一軒。外側の壁には木の陰が映り、隙間の陽と模様を作っている。
周りを遠巻きに眺めてみた。慎重に近付く。入り口であろうと思われる扉を、叩いてみた。
間が開く。
窓が開いた。扉ではなく、扉と同じ壁面に並ぶ窓だ。正面ではなく横でばたんと音が鳴ったので、トルクは面食らった。
「うわ。」
「あ、こんにちは。いらっしゃい。」
窓からル=トゥが顔を出していた。目を細めて、顔を引っ込める。
今度は扉が開いた。ささっとトルクは姿勢を正す。
「こ、こんにちは。」
ル=トゥは中へと手招いた。
「来てくれたんですね、どうぞ入って。お茶でも飲みます?」
入ってすぐ、テーブルが1つと椅子が3つあった。勧められて、トルクは椅子に座る。ル=トゥは水入れを取り出し、コップに水を注いだ。その上に、小さな壺から取り出した葉を浮かべる。それをトルクの前に置き、自身も椅子に腰を下ろした。
じっと、トルクを見ている。
「あ、あの?」
トルクは照れ臭くなって、耳を赤くした。それでもル=トゥはトルクの顔を見ている。髪と同じ、森の木の葉と似た緑の澄んだ瞳が、トルクを映していた。




