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青石の精霊術士  作者: 下町
本編
32/46

やっと行ってみた

 翌日。トルクは寝坊した。

 一瞬、自分がどこにいるか分からずに呆然と天井を見上げてしまう。それから周りを見回して、見慣れた自分の部屋だと気付く。ベッドの横には昨日持ち帰ったままの荷物が落ちている。

「そうか、帰ってたんだった。あ、掃除……。」

部屋の外からは様々な音が聞こえていた。外に面している窓から、がさがさと草の擦れる音。部屋を出るドアの向こうからは、何人かの話し声。朝の掃除をしているのだろう。

 ベッドを降りながら、頭を掻いた。

「そういえば休んで良いって言われたんだっけ。」

服を着替え、荷物袋の中身を出す。適当に部屋の棚に置いた。いつの間に紛れたのか、干し肉が一欠片入っていた。しばらくそれを眺めて、机の上に置く。

「……喉乾いたな。水飲んでくるか。」

 部屋を出て、食堂へ行った。


 食堂で水を飲んで、精霊宮の外へ向かう。途中、何人かの精霊術士に会った。久し振り、とかおう、とか短い挨拶や会釈を交わして通り過ぎる。大通りに出て、街の市場を抜けて、街の外へと出た。街道に出て森へと脚を進める。

「こっちの方だったかな。」

 半ば勘だよりに歩いた。


 あった。小さな家、というよりも小屋が佇んでいた。森の中、木々に紛れるようにぽつりと一軒。外側の壁には木の陰が映り、隙間の陽と模様を作っている。

 周りを遠巻きに眺めてみた。慎重に近付く。入り口であろうと思われる扉を、叩いてみた。

 間が開く。

 窓が開いた。扉ではなく、扉と同じ壁面に並ぶ窓だ。正面ではなく横でばたんと音が鳴ったので、トルクは面食らった。

「うわ。」

「あ、こんにちは。いらっしゃい。」

窓からル=トゥが顔を出していた。目を細めて、顔を引っ込める。

 今度は扉が開いた。ささっとトルクは姿勢を正す。

「こ、こんにちは。」

ル=トゥは中へと手招いた。

「来てくれたんですね、どうぞ入って。お茶でも飲みます?」

入ってすぐ、テーブルが1つと椅子が3つあった。勧められて、トルクは椅子に座る。ル=トゥは水入れを取り出し、コップに水を注いだ。その上に、小さな壺から取り出した葉を浮かべる。それをトルクの前に置き、自身も椅子に腰を下ろした。

 じっと、トルクを見ている。

「あ、あの?」

トルクは照れ臭くなって、耳を赤くした。それでもル=トゥはトルクの顔を見ている。髪と同じ、森の木の葉と似た緑の澄んだ瞳が、トルクを映していた。

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