明日は休み
ロントが手を伸ばして、トルクの手の平に触れる。爪で石の周りをひっかいてみたりもしているが、取れそうにはない。くすぐったくてトルクは指を曲げたり伸ばしたりした。特に気にする様子もなく、ロントは手を離した。
「うん、完全にくっついているな。」
ガランが、じっとトルクを見る。
「トルク、しばらく精霊術は使わない方が良い。かなり消耗したはずだ。」
素直にトルクは頷いた。視線を外し、ガランは自身の顎を撫でる。
「それに……この辺りは火の属性が強い場所柄だからな。何しろ火の精霊の祭壇だ。水の属性側としてはどうなんだ、落ち着かなかったりするのか?」
ロントも天井を見上げて考えている。
「場に固定する契約ではないので、精霊が常に居るわけではないが……。次の王までは火の精霊に保護されているんですよね?」
短く、ガランは頷いた。
「そう聞いている。」
トルクも天井を見上げた。板張りの天井には、特に汚れは見当たらない。腕を組んで、うーんと唸る。
「いや、特に居辛いとか調子が悪いとかは……今までなかったと、思うんですが。」
そう言った後で気付く。あ、と腕を解いた。
「そういえばここに居るよりは森に行っていた方が落ち着いたような。気分的に。」
ロントはガランを見た。ガランも視線をちらりと動かし、ロントに応じる。
「……そうか。」
ガランの一言の後にロントは机の上に手を乗せ、指を組んだ。考えながら口を開く。
「森には土の精霊力。土は水と協調する。火のように水と相対するわけではない。という事か。」
ふと、トルクの足元の荷物に目を留めた。
「今日はまだ帰ってきたところだ。……トルク、明日まで休んで良い。そうだ、朝の掃除も明日はしなくて良いな。また、後ほど話をしよう。」
がたり、と席を立つ。部屋の奥側にある、事務作業用の机に戻った。その上にある物に視線を落とす。
「ガラン様も祭壇付きお疲れ様でした。次の当番は明後日ですね。それまで、ゆっくりお休みください。」
ガランも腰を上げた。
「ああ。まずは睡眠をとる事にするよ。」
では、と手を挙げてゆらりと部屋を出て行った。それを見送り、トルクも荷物を持ち上げる。
「では、失礼します。」
ぺこりと頭を下げて、荷物を背負った。事務係の部屋を出て、自分の部屋へと向かう。
荷物を置いたら、食堂へ行こう。食事を摂って、一眠りしよう。そう考えながら廊下を歩いた。




