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青石の精霊術士  作者: 下町
本編
27/46

一休み

『ありがとう。』

 声だけが、静かな水面に落ちてきた。上を見上げ、トルクの膝から力が抜ける。ぺたりとその場に座り込んでしまった。

「大丈夫か?」

バイスが駆け寄り、トルクに手を伸ばす。トルクは苦笑してその手を掴んだが、体に力が入らない。

「……あー、動けなさそうです。」

 上方から入っている外の光。それを受け、内に包み込み輝く湖。澄んだ空気がその場に満ちている。

 トルクは掌を開いて見た。ほんの一部、青い石が顔を覗かせている。親指の先ほどしか表面に出ていない。手の中に異物感はない。明らかに入る前の石よりも薄い手の、どこに入り込んでいるのだろうかと思える。ゆっくりと、握りしめてまた開いてみた。

 そうして、バイスを見上げる。

「しばらく休めば、多分大丈夫なんで。」

そうか、とバイスは安堵の息を吐く。

「いや、そんなに大変な事だとは思っていなかった。私も軽く考えて、君に勧めてしまった。すまない。」

不安の残る表情で、頭を下げた。トルクは手を横に振る。

「ああ、俺の力不足です。気にしないでください。それに、できる事ならあの精霊も早く解放したかったし……。できて良かった。」

ごろり、とその場で体を倒した。腕を台座にぶつけそうになり、頭に乗せる。水の傍の、冷たい空気が心地良い。すう、と大きく息を吸い込むと途端に眠気が湧いてきた。


 ランタンの中で、心細そうに灯が揺れていた。辺り一面が音のない暗闇に覆われている。

 がばっとトルクは体を起こした。ランタンのすぐ横に座っていた、バイスが振り返る。

「お、目が覚めたかな。」

逆光で表情は分からない。トルクは自分の頬を撫でた。

「……俺、寝てた? すいません、どれくらい経ちました?」

小さく笑い、バイスは上を見上げる。

「そうだな、日が沈んでしばらく経つくらいかな。」

よっと飛び跳ねるように立ち上がった。その腕には、台座の前に置いてあった像が収まっている。水の精霊に似た姿の、青白い像だ。

「動けるか? とりあえず、外に出て改めて休もうか。ここは冷えてくる。」

荷物に手をかける。トルクは腕を回してみた。普通に動く。地面に手を突いて、腰を上げた。

 ランタンの明かりを頼りに、外へと出る事にした。

 外は空気が柔らかく感じた。洞窟の中が、水で冷えて感じたせいだろうか。頭上は木々に覆われ、未だ鬱蒼と暗かった。来る時に掻き分けた道を引き返していった。

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