洞窟の中には
間もなく、洞窟の入り口があった。山の急な斜面に、ぽっかりと口を開けている。石積みの、明らかに人工の物だった。入り口のすぐ横に、先ほどまでと同じ石柱が置かれていた。
トルクとバイスは、まず入る前に入り口の天井を見上げた。それほど高くはない。頭を擦るほどでもない、普通の姿勢で歩くのに支障ない高さではある。中は暗い。外からの明かりが届くのは、入ってほんの数歩分のようだ。一歩踏み込めばひんやりとした、冷たい空気が流れてくる。
バイスが荷物からランタンを取り出した。石を打ち合わせて、火を点ける。2人は顔を見合わせて、洞窟へと入った。
ごくり、とトルクの喉が鳴った。
2人の歩く足音が反響する。入り口は石で組み立ててあったものの、洞窟の中は自然にできたもののように思えた。つるりとした岩肌が、微かに揺れる灯の明かりを受けている。
トルクは辺りを見渡した。森の時に居る時もそうだったが、妖精の気配がない。たまたまいないだけなのだろうか。
ぱしゃん、と音がした。
「おっと。」
前を歩いていたバイスが足を止める。ランタンを持つ側とは反対の手で壁に触れながら歩いていたが、その手を離した。一歩横に体を動かす。しゃがんで、足元を照らした。トルクもその明かりを視線で追う。
「水があるな。横の方に水路……とまではいかないか、この先も水が溜まっているな。足元に気を付けて行こう。」
すっと立ち上がり、また先へと進む。
道が広くなってきていた。歩いている横を通る水が、静かで暗い。
「おや、奥の方が明るいな。」
バイスの声で、トルクは横を見ていた顔を上げた。通路の先、前方に明かりが見えた。
「うわあ……。」
思わず、トルクは感嘆の声を上げた。バイスも手元の明かりを消し、息を呑んでいる。
空間が開けていた。2人の立つ場所が足場となり、その数歩先は水が広がっている。上方に穴があるのか、外の明かりが差し込んでいた。線を引いたように、光が降りてきている。
水の広間。そう呼びたくなるような場所だった。その広間のような場所の大部分が湖のようになっていた。水の中で深く、青く、光が揺らぎの模様を描いている。
「美しいな……。」
呆然と、バイスが声を漏らした。トルクも頷き、ただ水面に心を奪われる。
湖の手前に台座があった。その横に立ち、2人は水を見ていた。
残念ながら、滑って転びませんでした。




