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青石の精霊術士  作者: 下町
本編
23/46

洞窟の中には

 間もなく、洞窟の入り口があった。山の急な斜面に、ぽっかりと口を開けている。石積みの、明らかに人工の物だった。入り口のすぐ横に、先ほどまでと同じ石柱が置かれていた。

 トルクとバイスは、まず入る前に入り口の天井を見上げた。それほど高くはない。頭を擦るほどでもない、普通の姿勢で歩くのに支障ない高さではある。中は暗い。外からの明かりが届くのは、入ってほんの数歩分のようだ。一歩踏み込めばひんやりとした、冷たい空気が流れてくる。

 バイスが荷物からランタンを取り出した。石を打ち合わせて、火を点ける。2人は顔を見合わせて、洞窟へと入った。

 ごくり、とトルクの喉が鳴った。


 2人の歩く足音が反響する。入り口は石で組み立ててあったものの、洞窟の中は自然にできたもののように思えた。つるりとした岩肌が、微かに揺れる灯の明かりを受けている。

 トルクは辺りを見渡した。森の時に居る時もそうだったが、妖精の気配がない。たまたまいないだけなのだろうか。

 ぱしゃん、と音がした。

「おっと。」

前を歩いていたバイスが足を止める。ランタンを持つ側とは反対の手で壁に触れながら歩いていたが、その手を離した。一歩横に体を動かす。しゃがんで、足元を照らした。トルクもその明かりを視線で追う。

「水があるな。横の方に水路……とまではいかないか、この先も水が溜まっているな。足元に気を付けて行こう。」

すっと立ち上がり、また先へと進む。

 道が広くなってきていた。歩いている横を通る水が、静かで暗い。

「おや、奥の方が明るいな。」

 バイスの声で、トルクは横を見ていた顔を上げた。通路の先、前方に明かりが見えた。


「うわあ……。」

 思わず、トルクは感嘆の声を上げた。バイスも手元の明かりを消し、息を呑んでいる。

 空間が開けていた。2人の立つ場所が足場となり、その数歩先は水が広がっている。上方に穴があるのか、外の明かりが差し込んでいた。線を引いたように、光が降りてきている。

 水の広間。そう呼びたくなるような場所だった。その広間のような場所の大部分が湖のようになっていた。水の中で深く、青く、光が揺らぎの模様を描いている。

「美しいな……。」

 呆然と、バイスが声を漏らした。トルクも頷き、ただ水面に心を奪われる。

 湖の手前に台座があった。その横に立ち、2人は水を見ていた。

残念ながら、滑って転びませんでした。

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