南へ出発
賑やかな市街地を抜けて、街の外へと繋がる門の下に立つ。街の中ほど人通りはないが、それなりに行き来する人の姿がある。
トルクは上を見上げた。石造りの頑丈そうな外壁が、そびえている。ぎっしりと石を積み上げられた壁。頭上では曲線を描いている。その通路の影の中に、トルクは立っていた。街側に大きな分厚い扉が付き、現在は開いている。トルクは視線を街の外へと移動させた。別の場所へと繋がる街道。広がる草原。その向こうには森も見える。
背負った荷物を片手で引っ張って持ち上げ、止めた足を進める。間もなく、声がかかった。
「トルク君、こっちだ。」
振り返れば、門の外側にもたれる格好でバイスが立っていた。片手を挙げている。トルクがそちらへ足を向けようとするのと同時に、バイスもトルクの方へと来た。
「バイスさん、お待たせしました。」
トルクがぺこりとお辞儀をすると、バイスは軽く首を横に振る。
「いや、それほど待っていないよ。準備は良いかい?」
トルクは頷く。
城で話を聞いた後に精霊宮に戻り、荷物をまとめた。それから事務係に出かける旨を伝えに行くと、既に話は通っていたようであっさりと送り出されてしまった。前日には当番も代わっていたし、それもそうかとトルクは力抜けしつつ出発したのだった。
バイスも荷袋を背負っている。上着のポケットからガサガサと紙を出した。
「大体の場所を書き留めてはみたんだが……。まぁ、行きながら話をしよう。」
指先で紙を摘んだまま、道の先を示す。促されて、トルクも歩き始めた。
目的の遺跡は、しばらく街道を進んだ後に道を外れた先にあるらしい。ラカラの街を出て、南へと向かった。
ラカラの街は、東の大陸と西の大陸を結ぶ場所の近くにある。街の南側に門があり、街道は西へと東へと別れている。西へ向かえば、すぐに川がありそれを渡る橋がある。今回はまず東への道へ入った。東へ行くとまた、東へ進む道と南へと別れている。どちらへ行っても東側の都市へ行く事はできるようだ。
なだらかに広がる草原を、南へと進む。時々、ぽつりと建っている家が見える。街の外にも住む人は居る。平坦な道のようでも、若干の高低差がある。気付けば上り坂になっていたり、下っていたりもする。
時々休憩を挟みつつ、進む事にした。




