呼び出しの用件
ごくり、とトルクは唾を飲んだ。意外な名前の出た事に驚いて、思わず身を引いてしまった。もう一度座り直して、体をバイスへと向ける。
「バイスさんは、ル=トゥを知っているんですか?」
バイスは肩を竦めて見せる。
「まあ、茶飲み友達みたいなものかな。時々会いに行っては、他愛もない雑談をしてくる。」
座ったままでずずずと椅子を後ろに押し出し、体を傾ける。
「先日、行ってみたら新しい友人ができたと教えてくれたんだ。ル=トゥが人の話をするなんて、珍しいからね。名前を聞けば、なんと最近聞いたばかりの名じゃないか。トルク君に興味が湧いてね。」
「はあ……。この間初めて会ったきりなんですが。」
ぽりぽり、とトルクは後頭部を掻いた。
ぽん、と思い出したようにバイスは手を打った。右拳を左の掌にぶつけた。
「おっと、本題をまだ話していなかったな。」
体勢をまっすぐに直す。足を組み替えて、揃えた。
「私の興味のために君をここに呼び出したわけではない。この度、遺跡へ行く事になったんだが、同行して欲しいんだ。精霊宮の方にも許可をとってある。だから、こうして来てもらえた訳なんだが。」
トルクは頷いた。
「何日か前にラフィに少し聞いてたんで、そうではないかと思っていました。」
バイスは片眉を上げる。
「それなら話は早い。言い出した王子も行きたいとは言い張っていたんだが、そういうわけにも行かなくてね。王子は1人しかいないし。何かがあっては困る。」
言葉に苦笑を混じらせる。手の平を上に向け、両手を広げた。
「最近見付けられた古文書に、載っていた遺跡だ。精霊が関わるものらしいから、精霊術士も居てくれると心強い。私は精霊とかはサッパリでね。」
ふう、とため息をつく。改めて、トルクを真っ直ぐに見た。
「王の誕生日に帰りが間に合うよう、早めに出発をしたい。どのくらいで準備をできる? いやその前に、一緒に行ってもらえるだろうか?」
トルクは少しの間考える。腕を組んで、見るでもなく窓を見た。明るい空が向こうにうかがえる。ぽっかりと太った雲が浮かんでいた。
組んだ腕を解き、親指の腹で顎を撫でた。
「せっかく自分に回してもらった話ですしね、断る理由もありません。昼までには準備できると思います。」
安堵したようにバイスの頬が緩む。
「では、昼過ぎに。街の門で会おう。準備してきてくれ。」
椅子から立ち上がった。
やっと話が進んできたような気がします。




