騎士との対面 o
ラカラの街の最も奥にある城は、市街地よりも高い丘の上にある。精霊宮は街の中でも特に城に近い建造物なのだが、それでも、城へ行くためには城門を抜けて丘の上へと続く坂を上らなければならない。
まずは坂の手前に立つ城門に入る。そこに待機している兵にトルクは軽く挨拶をした。通行人を確認した兵も頷き、先へと促す。奥へは、上る階段が続いている。
城に入って間もなく通される部屋。トルクも伝達当番の時に、この部屋で手紙を渡したり連絡を受け取ったりした事がある。入り口に近い、応接間である。
部屋の半分近くを占めるテーブルに、いくつかの椅子が置いてある。壁側には燭台が佇んでいる。火は灯していない。窓が開けてあり、外の明かりが入ってきていて十分な明るさが取り込まれているからだろう。
トルクが椅子に座ってそれほど待つ事もなく、部屋の扉が開いた。1人の青年が入ってくる。
「やあ、待たせたかな。」
軽やかな身のこなしで、トルクの近くへとやってきた。明るい緑色の短く切られた髪に、引き締まった口元。まだ、中年には入らないような年齢に見えた。トルクより年上なのは間違いない。
トルクは椅子から腰を上げる。
「いえ、先ほど来たところです。」
青年は小首を傾げて、手の平をトルクに見せた。
「ああ、座っていて良いよ。私も座るとしよう。」
手近な椅子を引き、腰を落ち着ける。トルクの横に並ぶ形になった。トルクも座り直す。青年はテーブルに両手を置き、顔をトルクへと向けた。
「精霊術士のトルク君、だね。私はバイス。騎士だ。」
口元がふっと緩み、愛嬌のある笑顔を浮かべる。
「いや、なるほど。会ってみたいと思っていたんだ。」
トルクは顔を上げる。
「へ?」
自然に目が合った。にこやかにバイスはトルクを見ている。
「友人がね、君の事を話していたんだよ。」
「友人? ラフィですか?」
トルクは首を捻る。バイスは頭を横に振って否定した。そうして、顎に手を添える。目線をちらっと、上へと泳がせた。
「そういえば確かに、君の名前を初めて聞いたのはラフィからだな。いや、違うんだ。滅多に人に会わない森の友人がね。」
言葉を切り、一呼吸置く。声を落として、密やかに名前を口にした。
「ル=トゥと言うんだが……会っただろう?」
「あっ!」
トルクは驚いて目を丸くした。がたり、とトルクの座る椅子が音を立てた。




