川の洗い場で
ばしゃーん。
「うわっ!」
不意に横から突き飛ばされて、トルクは川に突っ込んでしまった。水の飛沫が跳ね上がり、トルクは全身がずぶ濡れになる。押された方を見上げると、ロビーが腹を抱えて笑っている。
「見事に飛んだな、トルク。」
そんなロビーを、ぽかんとリーンが眺めている。
トルクはゆらりと立ち上がった。濡れた服が重たい。しかしそれをものともせず、トルクは素早い動きでロビーの足をつかんだ。思いっきり引っ張って引き込む。
「うおっ!」
ばしゃーん。
「うわあ。」
ロビーも水に飛び込み、その際に派手に跳ねた水がリーンまで濡れ鼠にしてしまった。
「やりやがったな、ロビー!」
さらに両手を駆使して、トルクはロビーに水をかける。
「やるかっ? 負けないぜ!」
ロビーも負けじと、両手で水を飛ばした。ものすごい量の水が、2人の間やその周りを飛び交う。
「あーあ……。」
それを横目で見ながら、リーンは上の服を脱いだ。ぎゅっと絞ると水が落ちる。絞るが、その傍からまた飛んできた水が服を濡らす。
「やれやれ。」
ぽいと服を傍に放り、リーンもざぶざぶと水に入った。いつの間にかトルクとロビーは声に出して笑いながら水をかけ合っている。
川の近くで遊んでいた何人かの子ども達も、横の方までやってきていた。
「おっ、一緒にやるか?」
ロビーが手を止めて、声をかける。その隙にトルクとリーンに水をぶつけられた。
「うわっぷ、ちょっと待て。」
顔の水を片手で払う。子ども達は顔を見合わせている。そのうちに1人、2人と川に入り始めた。今度は手加減をしつつ、3人の精霊術士は水を飛ばす。
全身からぽたぽたと水を落としながら、大通りを歩いた。流石に道行く人々は3人を避けて歩く。近付くと濡れそうだったからである。
「いやあ、つい熱中してしまった。」
トルクは自分の前髪を摘んだ。水滴が指を伝う。
「おー、結構楽しかったな。」
ロビーは明るく笑っている。ひょいとリーンは肩をすくめた。
「まぁ、泥は綺麗になったよね。」
確かに、体や服についていた泥はすっかり落ちている。
精霊宮の前にガランが出てきた。帰ってきた3人に気付く。3人は足を止めて、ぺこりと頭を下げた。
「何をしてきたんだ? 中に入る前に裏に行って、着ている物をもっとしっかり絞って来い。」
ガランは3人の水の滴り具合を見て、呆れていた。




