【断片的な夢】
いよいよ夢の世界に堕ちる。
この時を待っていた俺?がいた。
やけに冷静な俺だが、その夢は…。
俺の名前は、伊達武志。
年齢は36歳。
四捨五入をすると40代になる青年とも言えない年代の男だ。
決まった時間に会社に出勤するとサービス残業の毎日の中で、
起きると仕事、寝ると起きる…と言う単調な毎日を暮らしていた。
この単調で平凡な毎日を暮らせる事で幸せを感じていた。
そして、言うまでも無く、俺は独身である。
ただ一つ、人に言えない事がある。
それは、現実的な夢を…信じている、体験している事だ!!
7月19日。
今日も、いつもの様に酷使した体を酒で癒すと、心地よい気分の中でベッドに体を沈める。
少し湿った感じの布団の中に潜り込むとすぐに眠りについた。
…いつもの事だが…
しかし、今日の眠りの感覚には少しだけ違う感じがしていた。
眠った感覚が…。
そう思ったその時!!
冷たい風が体を通り過ぎる。
俺はゆっくりと瞳を開けた。
そこは、あの洞窟だった。
10年以上も前に体験した【現実的な夢】の舞台の洞窟…。
俺は、自分がやけに冷静な事に驚いていた。
…時が来たか…。
この時を待っていたかの様な気持ちが体を駆け巡った。
俺は、深呼吸をすると、あの扉へと歩き始めた。
…同じ風景だ…。
扉に着くと、あの時の子供らがいない事に気付いた。
静かな空気が流れる。
少し辺りを見渡してから、大きな扉の取っ手に手を当てた。
そして…。
扉を開けると同時に激しい光に包まれ、俺は瞳を閉じた……。
次の瞬間。
瞳を開けた俺は、地元大館市を走るバイパスの中央線の上に立っていた。
……。
冷静な自分がそこにいた。
そして、何かの気配で振り返る。
その先には…。
白髪の少年が立っていた。
俺は、少年を凝視していた。
少年は、動く気配すら感じられなかった。
その気配は、確固たる自信に満ち溢れている様に感じられた。
俺は、少年の自信とも感じられる態度に聊か恐怖を感じていた。
それから間もなく腰から剣をゆっくりと抜くと、俺を見た。
そして…。
あっと言う間に俺の前に来ると、その剣で俺の胸を突き刺した。
…うっ。
痛みは無いが衝撃が心に走った。
俺は、後ろに倒れ込み、静に瞳を閉じた……。
次の瞬間。
俺は、水の浸る感じに目が覚めた。
そこは、同じ大館市にあるドーム前にある、浅い池の淵だった。
俺は、ゆっくりと立ち上がると、あたりを見渡した。
すると、浅い池の真ん中から、少女が上がってきた。
濡れた髪は背中まであり、鋭い眼孔で俺を見ていた。
そして、俺に向かって何かを投げた。
…ナイフ……。
数本のナイフが俺の体に突き刺さった。が、
やはり、痛みは無い。
しかし、俺の心に衝撃が走った。
再び、俺は後ろの砂利に倒れ込んだ。
そして、ゆっくりと瞳を閉じた……。
次の瞬間。
俺は、雑踏の中でゆっくりと瞳を開けた。
そこは、市内にあるショッピングセンターIONEの中だった。
無数の黒ずくめの人が入り口から入って来ていた。
……今度は何が起こる?
俺は、その人達を、目を細めて見ていた。
すると、白いスーツのスレンダーな少女が目についた。
…今度はあいつか?
と思った瞬間。
雑踏がとまり、一気にこちらを向いた。
…今度は…なぶり殺しかぁ?
よく見ると全員仮面をしている。
…まじかょ……。
俺は、その雑踏に押し倒されると、かきむしられた、着ているものがボロボロになり、鋭い爪が肌を裂き始めているのを感じた……。
俺は、意識を失いかけた。
その時、俺の右手を掴み、力強くその雑踏から引き抜かれた。
…なんだぁ?
俺は……懐かしい香りと糸の様な髪、そして、オレンジ色の唇が見えた、
彼女は何かを言っている…が俺には分らなかった。
そして…やさしく体を覆う様な風が足元から感じた時に目が覚めた。
俺は、ゆっくりと瞳を開ける。
そこは…。
俺が住んでいるアパートだった。