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山中の白い女

作者: ぎょにく

ある冬の日の夜、翌朝食べるパンと歯磨き粉が切れていることに気がついた。仕方が無いので、夜も更けていたがコンビニに買い出しに行くことに一大決心をした。


山にある大学の近くに下宿しているため、コンビニに行くのにも下山しなければならなかった。道中には明かりが少なく怖がりの自分は外に出たくないというのが正直な心の声であった。22年生きてきたが今まで霊感というものは皆無だと自負している。いかし以前この地方に関わる怪談話を聞いたことがあるためか、噂の神社の前の道は小走りで走り抜けるくらい小気味が悪く感じていた。


早歩きで歩を進め、曲がる目印にしている自動販売機の明かりが見える場所まで来た。コンビニまであと少しなので自然と気を緩める。近づくにつれその自販機の隣に何かがあるのに気がついたのだった。見たくないのに目を離すことができない。自販機の横にあるそれがなんなのか認識できる距離まで近づくと血の気が引くのを感じた。


そこには白い服を着た黒髪の顔面蒼白の女性が横たわっていた。


ゾッとした理由が単に驚いただけなのか、霊的なものが働いたのかはこの時はわかっていなかった。驚きのあまり足が止まり長い間沈黙が続く。このままでは埒が明かないので距離を開けたまま話しかけることにした。


「あの……どうしたんですか?」


返事がない。


「あのー」


今度は大きめの声で話しかけた。すると反応が返ってきた。


「なぁに?」

「えっと、大丈夫ですか?」

「ええ、なぜ?」

「いや、つらそうだったんで」


「ふふ、あなた優しいのね。あなたに決めたわ」


この言葉を聞いて背筋が凍り、どういう意味なのかを解釈しようとする前に僕はコンビニの方へ走っていた。コンビニに到着し、駐車場で息を切らしているとタクシーの運転手が声をかけてきたのだった。僕は事情を話しどうすべきかの意見を求めた。するとその運転手は自分が様子を見てくると言った。僕は止めたが運転手は慣れているし、知り合いに住職がいるから任せろと豪語し、僕には走って帰るように促したのだった。僕は目当てのものを買い、全力疾走で家まで帰った。その夜なかなか寝付けなかったのは言うまでもない。


あの運転手は大丈夫だったのだろうか。


それから2日後。テレビでニュースを見て私はあまりの恐怖に一気に鳥肌が立った。近所の山中で遺体が発見されたというニュースだった。私はあの時自分の犯した間違いに気がつく。


ニュースのアナウンスは続いた。


被害者の女性は28歳の女性で、事件当日のお見合いパーティで最後に目撃されたそうです。白い服を着て相当酔っ払っていたとの証言があり、パーティの帰り道で事件に遭ったと思われます。犯人の消息は不明ですが、状況を見るに暴行目的であったと推測されています。


僕は震えながら警察に電話をした。

読んでいただきありがとうございます。感想いただければ幸いです。

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[一言] 初めまして。 こちらの作品を拝読させていただきましたので感想を書かせていただきます。 読み終えて真っ先に思ったのが「そっちか……」という思いでした。見事なミス・リードにやられてしまいまし…
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