救済者と破壊者
「ああ、お前か」
黒ずくめの青年はかなり近づいてから気付いた。
「ああ、君か」
顔を上げて白い服の少年は答える。
髪に眼の色、服装まで漆黒の青年と金の髪に碧い眼、白い服の少年の対比は鮮やかだった。
ただし、それを目撃する者はいない。
「相当壊したね」
「分かるか?」
「見れば」
白の少年が指さした青年の向こうに、抉られた道ができていた。それは大体真っ直ぐに伸び、黒の青年の足元に続いていた。
「お前も相当だな」
「全く」
少年は肩をすくめて笑う。
「救った命で戦争されちゃ、ね」
少年は青年より若いが、精神においては老人のような静かな諦めを滲ませる。
「好きでやってるわけじゃないのに」
青年が見やると、少年の足元に野花が咲いていた。向こう側からずっと、彼が歩いてきた軌跡に寄り添うように小さな花が点々と続いている。
「まあ、お陰でお前は俺が唯一この距離で言葉を交わせる存在なわけだが」
口の端をあげてやると少年も目を細めた。そして二人して笑いだす。心底おかしいのと愚かしいのと虚しいのとその他とで、何かを嘲笑って二人は止まった。
顔を上げた少年は青年を見て言う。
「早く滅ぼされたい」
青年も返す。
「言うな、俺だって救われたい」
その時丁度、昼の月が眩く二人の表情を隠す。
一点、素早い動作で黒衣を翻し少年の横を通り抜けた。振り返った少年に後ろ手で手を振る。
「もう行くぜ。そろそろヤバイだろ?」
言われて周囲を見遣った少年はため息をついた。
「そうだね。さすがに二度目はヤバイか」
あーあとこぼして黒の青年が行くのと反対方向に向けて歩き出す。
そうして二人は離れていった。別々の道を行く二人の周囲には、果てしなく広がる瓦礫の山。つい先ほどまでそこに活気溢れる街が広がっていたなど誰も信じられないほどに壊れた風景。
どこかから聞こえるみしみしと軋む音。それは二人の距離が離れるにつれてだんだんと小さくなっていった。
救う力と壊す力。近付くことで拮抗する力はぶつかり合い、周りに飛び散る。
これまでも、これからもそうして二人は出会って別れる。
これはその一瞬の話。




