副隊長の下っ端時代。
暗いです。
副隊長が下っ端の時、任務を行っていた時の話です。
人が死にますのでお気をつけ下さい。
薄暗い空の下、廃墟が立ち並ぶたった数週間前までは町だった場所を数人の仲間と共に隠れながら進む。
既に魔力は切れて姿を隠す事なんて出来ないから物陰に隠れて進むしかない。
温かい食事を取ったのはどのくらい前だったろうか。
戦況が佳境に入ってから節約するようになり栄養剤と練り固めた固形物しか口にしていない。
原料はいったいなんだろうか後腰に着けたポーチに入っている三日分しかない食料に手を当てる。
水はまだ余裕があると考えていると気配を感じ右側にいる敵に向かって銃を向け引き金を引く。
仲間も気付いていたのか五人居た敵は全て倒せた。
無意識に撃つ事が出来るようになったと言ったら人の良い教官は泣いてくれるだろうか。
それともあのお綺麗な笑顔を見せてくれるのだろうか。
どちらにせよ酷く苦しい気分になる。
ぼんやりと敵だった物を見ると頭を打ち抜かれ倒れている。
まるで映画の中の出来事のようだ。
あの時自分はいったいどんな事を考えていただろうか。
可哀想だと思っていたのだろうか。
実際は無意識と本能で動いている。
死にたくないから、ご飯を食べたいから、褒賞がもらえるから、家に帰れるから。
そういえば、この任務が終われば昇進するだろうと上官が言っていた。
そう言った上官は誰だったか、慌ただしく出動した自分には顔を覚える余裕など無かった。
任務に就くのはこれが初めてでは無いというのにまだ馴れない。
最初のように怖くて震えるようにならなかったというのが救いだろうか。
その代わり頭の中の何かが無くなってしまったけどもそれは何処か小さな部品だろうから大丈夫だと思う。
だって皆可笑しいと言わない。
これは普通の事だから考えるだけ無駄だという事も分かっている。
あぁまた敵が現れた。
こちらの気配に気付いたのか銃を構えている。
先輩が腕を撃ち抜かれた。
下手糞だな。
一撃で殺せないなんて。
次を撃とうとするその間に相手を撃ち殺せた。
たった一人だったから、はぐれたか仲間は全て死んでしまったのだろう。
先輩の腕の弾は貫通していたから応急処置の回復魔法をかけておいた。
後二回くらいしか使えないだろう。
もう三ヶ月この状況が続いている。
もっと長引けば自分も死んでしまうだろうな。
今回の戦いの理由は何だっけか。
前回は政権争いに友好国として助ける為で今回はクーデターか何かと言っていたけど結局はどうだったんだろうか。
上層部のことなんて下っ端には関係無いと言ってしまえばそれでおしまいだから。
殺せと言えば殺すし笑えといわれれば笑うんだろう。
どちらも大差無いのだから言われた通りにすればいい。
先輩からお礼にともらった飴玉の味が苺味でこの場所に酷く不釣合いだと笑ってしまった。
帰れたのは二日後で食料が尽きるギリギリだった。
その一ヶ月後にはまた人を殺していた。