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第7話 『監察官リディア、動く──裏切り者の影を暴け』

第7話 『監察官リディア、動く──裏切り者の影を暴け』

 倉庫の火事から一夜明けたエヴァレント領。

ロイドは早朝から執務室に集まった仲間たちを前に、険しい表情で立っていた。


「……昨日の火事は、偶然じゃない。

 誰かが意図的に領地を混乱させようとしている」


レベッカが頷く。


「はい。内部に“公爵側の協力者”がいる可能性が高いです」


ロイドは拳を握りしめた。


「だからこそ──リディアさん、頼りにしてる」


監察官リディアは静かに一礼した。


「承知しました。

 この領地に潜む裏切り者は、私が必ず炙り出します」


その声は冷たく、鋭く、揺るぎなかった。


◆ ◆ ◆


◆ 監察官リディアの調査開始


リディアはまず、倉庫の火事現場を調べた。


「……鍵の破壊痕。

 これは素人の仕業ではありませんね」


彼女は地面に落ちた小さな金属片を拾い上げる。


「帝都製の特殊工具……。

 やはり、外部の者が関わっています」


次に、リディアは警備兵や職人たちに聞き込みを行った。


「火事の前、見慣れない男を見た者は?」


「はい……黒い外套の男が倉庫の周りを歩いていました」


「その男はどこへ?」


「……北門の方へ向かっていきました」


リディアは目を細めた。


「北門……。

 あそこは帝都へ向かう街道に繋がっていますね」


レベッカが頷く。


「つまり、工作員は帝都から送り込まれた……」


ロイドは息を呑んだ。


(……公爵は本気で領地を潰しに来ている)


◆ ◆ ◆


◆ 裏切り者の存在


その日の夕方。

リディアはロイドの執務室に戻ってきた。


「ロイド様。

 内部に“情報を漏らしている者”がいます」


ロイドは驚き、椅子から立ち上がった。


「……まさか、領民の中に?」


「いえ。

 もっと“近い存在”です」


レベッカが眉をひそめる。


「近い……?」


リディアは静かに告げた。


「職人の中に、帝都から送り込まれた“スパイ”が紛れています」


ロイドは息を呑んだ。


「……そんな……!」


「ガチャで召喚された者ではありません。

 領地に元々いた職人の中に、帝都と繋がっている者がいます」


ロイドは頭を抱えた。


(……誰だ? 誰が裏切っている?

 みんな、領地のために働いてくれているのに……)


リディアは冷静に続けた。


「ですが、心配はいりません。

 すでに“候補者”は絞れています」


ロイドとレベッカは息を呑んだ。


「明日、証拠を揃えて報告します」


リディアはそう言って部屋を後にした。


◆ ◆ ◆


◆ 公爵の次の策


その頃──帝都ゲルドラン邸。


「……内部の工作がバレた、だと?」


公爵ゲルドランは報告を受け、苛立たしげに机を叩いた。


「役立たずどもめ……!」


側近が恐る恐る口を開く。


「ですが、公爵様。

 次の策はすでに準備が整っております」


公爵はゆっくりと笑った。


「そうだ……“あれ”を使えば、辺境などひとたまりもない」


側近が頷く。


「はい。

 すでに“魔物の巣”に刺激を与える準備が進んでおります」


公爵の笑みは、冷酷そのものだった。


「ロイド・エヴァレント……

 お前の領地は、魔物の群れに飲み込まれる運命だ」


◆ ◆ ◆


◆ ロイドの決意


夜。

ロイドは書斎でひとり、窓の外の砦の灯りを見つめていた。


(……裏切り者がいる。

 公爵は次の策を打ってくる。

 領地はまだ危険だらけだ)


だが──


(それでも、俺は守る。

 父さんが命を懸けて守ったこの地を。

 リーナやセバス、仲間たち、領民たちを……絶対に守る)


ロイドは拳を握りしめた。


その時、扉がノックされる。


「ロイド様。

 明日、裏切り者を炙り出します」


リディアの声は、冷たく、しかし頼もしかった。


ロイドは深く頷いた。


「……頼む、リディアさん。

 俺は絶対に負けない」


こうして、領地改革は新たな局面へと突入する。


次に待つのは──

裏切り者の摘発と、公爵の“魔物を使った大規模工作”の発動。


エヴァレント領の運命は、さらに激しく揺れ動こうとしていた。


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