第6話 『内部破壊工作──揺らぐ秩序と、領主の覚悟』
砦建築が進み、魔物被害も減少。
領地は確実に良い方向へ向かっていた。
だが──その裏で、静かに“異変”が起き始めていた。
◇ ◇ ◇
◆ 中心街──不可解な騒ぎ◆
「領主様の改革は失敗する! 税が上がるぞ!」
「砦なんて無駄だ! 金の無駄遣いだ!」
中心街の広場で、数人の男たちが大声で叫んでいた。
周囲の領民が不安そうにざわつく。
ロイドは駆けつけ、男たちに声をかけた。
「君たち、何を言っているんだ。税は上げないし、砦は領民を守るためだ」
だが男たちはロイドを見るなり、目をそらした。
「……ちっ、領主が来たぞ。引き上げるぞ」
男たちは逃げるように散っていった。
ロイドは眉をひそめる。
(……あいつら、普通の領民じゃない。動きが不自然だ)
レベッカが静かに言った。
「ロイド様。あれは“扇動”です。
公爵側が送り込んだ工作員でしょう」
「やっぱり……」
ロイドは拳を握りしめた。
◇ ◇ ◇
◆ 情報屋カイの報告◆
その日の夜。
情報屋カイが、屋根からひょいと降りてきた。
「ロイド様、調べてきたよ。
今日騒いでた連中、やっぱり“帝都の人間”だった」
「帝都……ゲルドラン公爵の差し金か」
「間違いないね。しかも──まだ続きがある」
カイの表情が険しくなる。
「公爵は“内部破壊工作”を本格的に始めた。
領地の倉庫に火をつける計画や、砦の材料を盗む計画まである」
ロイドは息を呑んだ。
「……そんなことまで……!」
レベッカが冷静に言う。
「ロイド様。
改革が順調だからこそ、敵は焦っているのです。
ここが踏ん張りどころですよ」
ロイドは深く頷いた。
「……わかった。絶対に領地を守る」
◇ ◇ ◇
◆ 破壊工作、発生◆
翌日。
ロックフォードの鉱山近くで、警備兵が慌てて駆け込んできた。
「領主様! 倉庫に火が──!」
ロイドはすぐに馬に飛び乗り、現場へ向かった。
倉庫の一部が燃え上がり、職人たちが必死に消火している。
「水を回せ! 急げ!」
ラウルが叫び、バルドが火の回りを抑えるために土をかける。
ロイドも加わり、全員で火を消し止めた。
幸い、被害は最小限で済んだ。
だが──
「領主様……倉庫の鍵が壊されていました。
これは……誰かが意図的に……」
ロイドは歯を食いしばった。
(……やっぱり、公爵の手が伸びてきている)
レベッカが静かに言う。
「ロイド様。
敵は“領地の混乱”を狙っています。
ですが──こちらにも対抗策があります」
◇ ◇ ◇
◆ 新たなガチャ職人、召喚◆
その夜。
ロイドはガチャの光の輪に手をかざした。
「……今必要なのは、“治安”と“内部対策”だ。
頼む……力を貸してくれ」
光が弾け、ひとりの女性が現れた。
●《監察官》リディア(SSR)
黒髪のポニーテール、鋭い眼光。
規律と秩序を重んじる、冷静沈着な女性。
「監察官リディア。
内部監査、治安維持、規律整備──すべてお任せください」
レベッカが目を見開く。
「……SSRの監察官……!
ロイド様、これは大当たりです」
ロイドは息を呑んだ。
「リディアさん……領地の内部を揺さぶる者たちを、止められるか?」
リディアは迷いなく頷いた。
「もちろんです。
この領地に巣食う“裏の者”は、私がすべて炙り出します」
ロイドは強く頷いた。
「……頼む。
俺は絶対に、領地を守り抜く」
◇ ◇ ◇
◆ 公爵の次の策◆
その頃──帝都ゲルドラン邸。
「倉庫の火事も失敗……?
あの小僧、運がいいな」
公爵はワインを揺らしながら、冷たく笑った。
「だが──次は“もっと大きな混乱”を起こしてやる。
領地が立ち直る前に、必ず潰す」
その目は、獣のように鋭く光っていた。
◆ ◆ ◆
ロイドはまだ知らない。
公爵が次に仕掛けるのは──
“領地全体を巻き込む大規模な混乱”だということを。




