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第5話 『揺らぐ民心──忍び寄る影と、領主の決断』

 砦建築と魔物討伐が成功し、エヴァレント領には久しぶりに明るい空気が流れ始めていた。


「ロイド様! 砦の壁が完成しましたよ!」


「交易路が整備されて、商人が戻ってきました!」


「薬草の供給が安定して、病気が減ってきたよ!」


領民たちの声は希望に満ちていた。

ロイドは胸が熱くなる。


(……本当に、みんなのおかげだ)


だが、その明るさの裏で──静かに、確実に“影”が広がり始めていた。


◆ ◆ ◆


◆ 中心街──不穏な噂


「なぁ聞いたか? 領主様は税を上げるつもりらしいぞ」


「えっ……本当か? 最近ようやく生活が楽になってきたのに……」


「いや、俺は聞いたぞ。砦建築に金を使いすぎて、領地は赤字だって」


「また苦しくなるのか……?」


ロイドが改革を進めるほど、なぜか“悪い噂”が増えていく。


レベッカは眉をひそめた。


「……明らかに意図的ですね。情報が歪められています」


「誰が……?」


「考えるまでもありません。ゲルドラン公爵側の工作でしょう」


ロイドは拳を握りしめた。


(……やっぱり、あいつらか)


◆ ◆ ◆


◆ 情報屋の召喚


その日のガチャ。


ロイドは光の輪に手をかざし、祈るように呟いた。


「……頼む。今は“情報”が必要だ」


光が弾け、ひとりの男が姿を現した。


●《情報屋》カイ(SR)


黒いフードを被った青年。軽い笑みを浮かべているが、目は鋭い。


「情報屋カイ。依頼があれば何でも調べるよ、領主様」


レベッカが目を細める。


「……有能そうですね」


「まぁね。で、最初の依頼は?」


ロイドは迷わず言った。


「領地で流れている“噂”の出どころを調べてほしい」


カイはニヤリと笑った。


「了解。三日あれば十分だよ」


◆ ◆ ◆


◆ 各町の状況確認へ


ロイドはレベッカと共に、再び八つの町を巡ることにした。


● グレイヴ村


砦の完成で魔物被害が激減。

だが──


「最近、税が上がるって噂があって……不安で……」


ロイドは首を振る。


「そんな予定はない。安心してほしい」


● ミルダの丘


水路が完成し、作物が育ち始めていた。

だが──


「砦の建築費で領地が赤字だって聞いたんだが……」


「それも嘘だ。むしろ収入は増えている」


● ハーベン町


商人が戻り、活気が出てきた。

だが──


「領主様が帝都に売り渡されるって噂が……」


「そんなこと、絶対にない!」


ロイドは声を荒げてしまった。


レベッカが肩に手を置く。


「ロイド様……落ち着いて」


ロイドは深呼吸した。


(……こんな噂、誰が流してるかなんて……わかりきってる)


◆ ◆ ◆


◆ カイの報告


三日後。

情報屋カイが書斎に戻ってきた。


「調べてきたよ。噂の出どころは──“帝都から来た商人”だ」


ロイドは目を見開いた。


「帝都……ゲルドラン公爵の息がかかった連中か」


「その通り。金をばら撒いて、領民に不安を植え付けてる」


レベッカは静かに言った。


「……公爵は、外側から攻めるのを諦め、内側から揺さぶる作戦に切り替えたのでしょう」


ロイドは拳を握りしめた。


「……許せない。

 領民を不安にさせて、俺たちの努力を踏みにじるなんて」


カイが肩をすくめる。


「まぁ、敵も必死ってことだね。

 でも──対抗策はあるよ」


ロイドとレベッカが同時に顔を上げる。


「対抗策……?」


カイはニヤリと笑った。


「“真実”を広めればいい。

 領主様が何をして、領地がどう変わっているのか──

 俺が全部、領民に伝えてくる」


ロイドは息を呑んだ。


「……頼む。カイ」


「任せなよ。情報屋の本領発揮ってやつだ」


◆ ◆ ◆


◆ ロイドの決意


その夜。

ロイドは書斎でひとり、窓の外を見つめていた。


砦の灯りが、夜の闇を照らしている。


(……俺は、まだ弱い。

 でも──みんなが支えてくれている)


レベッカが静かに部屋に入ってきた。


「ロイド様。

 領地改革は順調です。

 噂も、カイさんが必ず止めてくれます」


ロイドは頷いた。


「……ありがとう、レベッカ。

 俺は絶対に負けない。

 父さんが守ったこの地を、必ず繁栄させる」


レベッカは微笑む。


「その意気です。

 ロイド様の決意こそが、領地の未来を変えます」


こうして、ロイドは新たな一歩を踏み出した。


だが──

ゲルドラン公爵の“次の策”は、すでに動き始めていた。




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