第4話 『砦建築と魔物討伐──動き出す領地改革と迫る影』
エヴァレント領の八つの町に砦を建てる計画が始まって三日。
ロイドは朝から現場を巡回し、職人たちの働きぶりを見て回っていた。
「ロイド様! こっちは基礎工事が終わりました!」
建築技師ラウルが汗を拭いながら手を振る。
その横では、設計士サラとグレンが図面を広げ、砦の構造を確認していた。
「風向きはこの角度。魔物が来る方向を考えると、監視塔はここが最適です」
「了解。じゃあ俺が現場に指示出してくる!」
二人の息はぴったりだ。
ロイドは胸が熱くなる。
(……すごい。本当に領地が変わり始めてる)
◆ 魔物警備隊、始動!◆
砦建築と同時に、警備兵の訓練も始まっていた。
「隊列を組め! 魔物が来たらまずは報告だ!」
狩人エルナが鋭い声で指示を飛ばす。
彼女の指導は厳しいが、兵士たちは真剣そのものだ。
「エルナさん、魔物の出没状況は?」
「北の森に動きがあるわ。偵察隊を出しておく」
「ありがとう。頼りにしてる」
エルナは少し照れたように鼻を鳴らした。
「……当然よ。領主なんだから、しっかり守りなさいよね」
◆ 各町の砦建築、順調に進む◆
レベッカは中心街の執務室で、全体の進捗をまとめていた。
「ロイド様、各町の状況を報告します」
● グレイヴ村
バルドの指揮で砦の骨組みが完成。
魔物の侵入が減り、領民が安心し始めている。
● ミルダの丘
水路工事と砦建築が同時進行。
作物の芽が出始め、村に笑顔が戻りつつある。
● ハーベン町
交易路の整備が進み、商人が少しずつ戻ってきた。
● ロックフォード
鉱山の安全確保が進み、採掘再開の目処が立つ。
● サンリーフ村
薬草の供給が安定し、病気の流行が収まりつつある。
● ウィンデール
耐風構造の砦が建ち始め、家屋の修繕も進行中。
● オルド街
治安が改善し、盗賊の出没が激減。
● 中心街
税制改革の準備が進み、領民の不満が少しずつ和らいでいる。
ロイドは思わず息を呑んだ。
「……すごい。こんなに早く成果が出るなんて」
レベッカは微笑む。
「ロイド様の決断と、皆さんの努力の賜物です。
ですが──油断は禁物です」
◆ 魔物討伐、初の大規模戦闘◆
その日の夕方。
北の森から、緊急の狼煙が上がった。
「魔物の群れが出たぞーッ!!」
エルナが駆け込んでくる。
「ロイド! 中型魔物の群れよ!」
「わかった! 全員、配置につけ!」
ロイドは剣を握りしめ、兵士たちと共に北の森へ向かった。
砦の建設途中とはいえ、監視塔が早期発見に成功したおかげで、
魔物の侵入は最小限に抑えられた。
「来るぞ! 構えろ!」
エルナの号令と共に、兵士たちが槍を構える。
バルドが作った簡易防壁が魔物の突撃を受け止め、
エルナが矢を放ち、兵士たちが連携して応戦する。
ロイドも剣を振るい、前線で戦った。
「はぁっ!」
魔物が倒れ、森に静寂が戻る。
「……勝った……!」
兵士たちが歓声を上げる。
エルナがロイドの肩を叩いた。
「やるじゃない。領主として、合格よ」
ロイドは照れくさく笑った。
◆ ゲルドラン公爵、次の一手◆
その頃──帝都ゲルドラン邸。
「……砦建築が順調? 魔物討伐も成功?」
報告を聞いた公爵は、ワインを置き、苛立たしげに舌打ちした。
「小僧が……調子に乗りおって」
側近が恐る恐る口を開く。
「どういたしますか、公爵様……?」
公爵はゆっくりと笑った。
「決まっているだろう。
“外側”が駄目なら──“内側”から崩すまでだ」
その目は、冷酷な光を宿していた。
◆ 改革は順調、だが不穏な影が迫る◆
砦建築は進み、魔物討伐も成功。
領地は確実に良い方向へ動き始めていた。
だがロイドは知らない。
ゲルドラン公爵が、
“内側から領地を揺さぶる策”を動かし始めていることを──。




