第1話 『SSR参謀レベッカ、降臨』
女神アウレリアが姿を消した後も、ロイドの胸は高鳴り続けていた。
──《スキル：職人ガチャ》
一日一回限定で、領地再建に必要な職人を召喚できる。
本当にそんな奇跡が起きるのか。
半信半疑のまま、ロイドは書斎の中央に浮かぶ光の輪へ手を伸ばした。
「……頼む。俺に力を貸してくれ」
光が弾け、眩い粒子が舞い散る。
──SSR《参謀》レベッカ、召喚。
「初めまして、ロイド様。参謀レベッカ・アークライト、着任いたします」
現れたのは、銀縁眼鏡をかけた黒髪の女性。
凛とした立ち姿、鋭い眼差し。
一目で“できる女”とわかる雰囲気を纏っていた。
「え、えっと……参謀？」
「はい。頭脳労働全般、戦略立案、組織改革、経営改善……何でもお任せください」
レベッカは軽く微笑むと、ロイドをじっと見つめた。
「スキル鑑定EX──発動」
淡い光が彼女の瞳に宿る。
「……なるほど。ロイド様は誠実で、領地を守る強い意志をお持ちですね。
ただし、政治・経営・軍略の知識は壊滅的です」
「ぐっ……そこまで言うか……」
「事実ですので」
淡々と告げるレベッカに、ロイドは苦笑するしかなかった。
◆ ゲルドラン公爵の話◆
ロイドは、先日訪れたゲルドラン公爵家の使者の話を説明した。
「半年以内に領地を立て直せなければ、没収される……」
レベッカは目を細める。
「……なるほど。あの公爵家、裏で動いていますね。
領地を奪う気満々です」
「やっぱりか……」
「ですが、ご安心を。
私が来た以上、領地の運営は必ず向上させます」
その言葉は、ロイドの胸に強い光を灯した。
◆ レベッカの要求◆
「まずは、この世界の知識を把握する必要があります。
屋敷にある本をすべて読ませてください」
「全部……？ 何百冊もあるぞ？」
「三日あれば十分です」
「三日で……？」
「参謀ですので」
さらりと言ってのけるレベッカに、ロイドは言葉を失った。
◆ 三日後──書斎から現れた天才◆
三日間、レベッカは一睡もせず書斎に籠もり続けた。
そして三日目の朝、扉が静かに開く。
「お待たせしました、ロイド様」
レベッカは目の下にクマひとつなく、完璧な姿勢で立っていた。
「この領地の歴史、地理、産業、魔物の生態、帝国法……すべて把握しました。
今から改善案を提示します」
「は、早い……！」
「その前に──仲間の紹介をお願いできますか？」
◆ 三日間で増えた仲間たち◆
ロイドは頷き、三日間でガチャから召喚された三人を呼び出した。
●《農業技師》マルコ（ＳＲ）
陽気な青年。土壌改良と作物研究の専門家。
「畑の土、完全に死んでるけど……逆に燃えるね！」
●《防衛工匠》バルド（Ｒ）
筋骨隆々のドワーフ。防衛施設の設計と罠作りが得意。
「任せろ坊主。城壁も砦も、全部作り直してやる」
●《交易案内人》ミーナ（ＳＲ）
小柄な獣人少女。流通路の開拓と商人交渉が得意。
「えへへ、あたしに任せれば物資はすぐに回るよ！」
レベッカは三人を見て、満足げに頷いた。
「良い人材です。これなら改革が進みます」
◆ 今後の課題──参謀の分析◆
レベッカはロイドの前に立ち、指を三本立てた。
「まず、領地再建の最優先課題は三つです」
① 魔物被害の抑制
「防衛線の再構築が急務です。
バルドさんと協力し、砦と監視塔を増設しましょう」
② 食糧難の解消
「マルコさんの技術で土壌改良を行い、
短期間で収穫できる作物を優先的に育てます」
③ 流通の復活
「ミーナさんに新たな交易路を開拓してもらい、
帝都との取引を再開します」
レベッカはロイドを真っ直ぐ見つめた。
「ロイド様。半年で領地を立て直すのは、容易ではありません。
ですが──あなたと皆さんなら、必ずできます」
ロイドは深く息を吸い、頷いた。
「……やろう。みんなで、この領地を救うんだ」
こうして、若き領主ロイドの“辺境再生計画”が本格的に動き出した。
