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初秋の嵐

作者: 桂螢

引きこもりになった。三日間だけだが。福祉職に五年も従事し、働きながら国家資格まで取得したというのに、職員間の人間関係で鬱病になってしまい、引きこもった。私はただ、利用者の命を最優先にしたかっただけなのに、どこの事業所からも、その熱い思いを無視され、否定された。福祉職が、こんなにも冷酷な世界だという現実を目の当たりにして、愕然としている。


三日間、延々とベッドに仰向けに横たわり、天井ばかりを茫然と睨みつけ、「何て自分は、こんなに生き方が下手くそなんだ」と自分を責め続けた。昼夜逆転し、食事はレトルトで済ませ、ラインも一切無視した。


引きこもっている間に、奇遇にも猛烈な台風が、私の街に接近した。どうでも良かった。台風に殺されたかった。


自転車並の速度の台風が過ぎ去った頃には、徐々に私は立ち直りつつあった。窓を開けると、心地良い涼しい風が部屋に入り込んできた。涼風に誘われるように、三日間振りに外へ出てみると、目に映る景色全てが荒れ放題。家の前の田園は、渦を巻くように、黄金色の数多の稲穂がなぎ倒されていた。隣の家の真っ赤なハイビスカスは泥まみれ。暴風雨のすさまじさを物語っていた。


何かに導かれるように、主治医に電話をかけた。心療内科医という肩書きどおりの主治医は心配し、「すぐに来なさい!」と言ってくれた。


タクシーを電話で呼ぶと、直ちに来てくれた。行き先である病院名を告げると、運転手も何か問題を背負っているのか、神仏のような言葉をかけてくれた。

「世の中の人、みんな障害者だよ。数え切れないくらい精神疾患ってあるでしょ?数ある精神疾患の特性を、私は一つも持ってませんなんて人、僕は半世紀以上生きて会ったことがない」

救われた。嬉しかった。もう少し頑張って、もう少し生きようと思った。

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