裏切り者 2
この章は、ちょっと携帯では分かり辛いものがあるかも知れませんっ!
いや……パソコンでも厳しいかも。
ただ今ホームページを作成しておりまして、その中なら少しは分かりやすくお伝え出来る筈なのですが……。(^_^;)
雰囲気だけで、少しでも伝わる事を祈っております。
訳分からなかったらすいませんです。m(__)m
馬は、新しいもやもやが生まれてしまったメルメルと、俯いて肩を落としたトンフィーの心も揺らしながら、どんどん前へと進んで行く。
ペッコリーナ先生の馬には四匹も猫が乗り込んでいて、眠ってしまったアケとシバを抱きかかえてあげながら、ペッコリーナ先生は少し疲れた顔になっていた。
「少し休憩しようか」
そんなペッコリーナ先生の様子に一早く気付いたラインがみんなに声をかけた。
「あそこに川がある。馬に水をやりがてら休もう」
指差した先には確かに小さな川が流れている。
(あそこで顔を洗って、頭を冷やそう……)
メルメルは誰より早く馬から飛び降り、川に駈けて行った。
「転ぶわよメルメル! ……コーヒーくらい欲しいわね。少し薪を取りに行きましょうか? トンフィー、一緒に行きましょう」
メルメルはペッコリーナ先生の呼びかけに早歩きになって、川に辿り着いた途端にジャブジャブと顔を洗い出した。肩に下げたうさぎのアップリケのついた鞄がずり落ちてきて、何度も掛け直していると、
「ずいぶん豪快に顔を洗うんだな~。ほら、持っていてあげるよ」
ニレが隣に来てメルメルの鞄を持ち上げた。
「あ、ありがとう……」
「わ! なんだいこれ? ずいぶん重いなー」ニレは驚いて鞄を覗き込んでいる。
「わ~。本がこんなにたくさん入ってる。――あれ? これ教科書じゃないか! わざわざ持って歩くなんて、ずいぶん勉強熱心だなー」表紙に『算数』と書かれた本を取り出して眺めている。
「あ、ちがうの。ワタシのじゃなくてトンフィーのなのよ」
ハンカチを探し出そうと、メルメルはニレの持っているうさぎの鞄をゴソゴソあさっている。
「あー、なる程。それは納得……ん? この本も参考書か何かかい?」
ニレは『算数』の本を鞄に戻して、代わりに別の本を取り出した。ナンブラカラコッツ著『闇の王国の謎』という本だった。
「そうよ。歴史の授業に使うのよ」
ニレは本をパラパラとめくりながら、なるほどと言った。
「闇の王国の謎かぁ。そりゃあ今の子共達は、闇の王国や暗黒王の事もしっかり学ばなきゃいけないもんなぁ。あ――」
その時、めくっていた本から紙が数枚滑り落ちた。
メルメルは慌てて拾い集めようと追い駆けた。トンフィーが勉強している時にメモか何か取ったのだろう。大切な物かも知れない。飛ばされては大変だ。
「――あららら!」
まんまと風に飛ばされて、一枚がグッターハイムの足元に落ちた。
「お? ――よっと……」
「ありがとう!」手を差し出すメルメル。
しかし、拾い上げた紙を渡そうとはせずに、グッターハイムはそれをじっと見つめている。
「……これは――なんだ?」
「え……?」メルメルは自分の手元にあるもう一枚を見てみた。
「…………?」
えしよう。それは、王
。皆様は、かつて彼が
ているだろうか? そ
操る軍師となった。
のはフィメロのみだろ
事でも知られている。
触れる事に成功した。
レプリカを作った。実
そのいしょうを身にま
も、おつなものではな
に開催される私の展示
来ればの話だが……。
訳のわからない内容だ。
(何だかこの字……)
――見覚えがある。だが、トンフィーの字ではない。トンフィーも字がとても綺麗なのだが、それよりもっとずっと綺麗な字だ。
そう――これは、
「おじいちゃんの字だわ!」
メルメルの叫び声に、ハッとした顔でグッターハイムは紙を見直す。今度はメルメルの手から残りの紙も全部取り上げて、まじまじと見始めた。
「こ、これは――」
「返して!」
突然、背後から怒鳴り声がして、メルメルはハッとして振り返った。トンフィーが両手に薪を抱え、真っ青な顔で立っていた。唇がわなわなと震えている。
「返してよ!」薪を放り投げグッターハイムから紙を奪おうとするが、高々と掲げられて手が届かない。「返せ!」
グッターハイムの体に掴みかかるトンフィー。尋常ならぬその様子に、メルメルは何だか怖くなってドキドキしてきてしまった。トンフィーに掴みかかられてもびくともせず、グッターハイムは紙を見つめ続けている。
「……そういうことか」
グッターハイムは呟いて、ようやく紙から視線を外した。じろりとトンフィーを見下ろす。トンフィーはよろよろと後ろに下がった。
「一体何事よ! この騒ぎは――」
トンフィーと同じ様に、薪を抱えてペッコリーナ先生が現れた。驚いた顔で、グッターハイムとトンフィーを見比べている。
「……ペッコリーナ、これを見てくれ」
グッターハイムが、紙をペッコリーナ先生に手渡す。トンフィーはもうそれを奪い取ろうとはしなかった。全てを諦めたかのようにガックリと肩を落としている。メルメルは駆け寄りたかったが、何故か全く足が動かなかった。
ペッコリーナ先生は、首を右に左に傾げながら紙を見ている。「……一体、これが何よ?」
グッターハイムが無言で、懐から新たな紙を取り出した。例の、あの手紙だ。
「これは……だって……」
手紙を広げ、戸惑うように見る。その時、突然、ペッコリーナ先生の顔付きが変わった。プラムじいさんの手紙の上や隣に、トンフィーの本から出てきた紙切れを並べたりし始めた。
何故、そんな事をするのかは分からない。分からないけれども、それは何だかとても恐ろしい行為に思えて、メルメルは小さく震えた。その時、ポンと肩に手が置かれて、メルメルはその手の主を見上げた。ラインが透き通るような透明な青い目で、トンフィーを見つめていた。
「……この紙はどこから出てきた物なの?」
ペッコリーナ先生が、いつもより低い声のトーンでグッターハイムに問いかける。
「トンフィーの物らしい」
グッターハイムの返答に、ペッコリーナ先生は目を見開いた。
「……トンフィー、どういう事なの?」
強い口調で問われたが、トンフィーは俯いて黙り込んでいる。答える気はなさそうだ。
「メルメル……、あなた何か知っているの?」
トンフィーから返事が期待出来なさそうなので、ペッコリーナ先生は矛先を変える事にしたらしい。
メルメルにはまったく訳が分からなかった。しかし、
――その紙切れはトンフィーの物だからワタシは何も知らない――と言ってしまったらトンフィーが傷つくような気がして(だって、既に傷ついたような顔をして、立っているのが精一杯といった感じなんだ)黙ってペッコリーナ先生を見返した。
「メルメル……」
「メルメルは何も知りませんよ! その紙切れは、さっきトンフィーの物だと言う、この本をめくっていたら突然出てきた物なんですから」
ニレの言葉に、ペッコリーナ先生まで何故か傷ついたような顔になった。ニレの手にした本を凝視している。
「トンフィー……」
「一体どうしたんですか? その紙切れが何だと言うんですか?」
ニレは、まったく訳が分からないと言う顔で、ペッコリーナ先生が手にしている紙を指差している。 ペッコリーナ先生は自らを落ち着かせるように、深く深呼吸した。
「……これを見れば分かるわ」
手紙をニレに差し出す。メルメルも恐る恐る横から覗き込んだ。
無敵の闇の軍隊を
まかす事が出来る
技法を編み出した
たいしょうに直接
に伝えたいので、
是非きてほしい。
プラムじいさんからグッターハイム宛てに出されたと言う手紙だ。もう何度も見ている。特に前と変わったところも無い。ニレとメルメルは一緒に首を傾げた。
「だから、これが一体――」
「そして、トンフィーの本から出てきたこの紙切れを――」
ニレの言葉を遮って、ペッコリーナ先生はトンフィーの本から出てきた三枚の紙を、手紙の上、下、右、左にと並べた。すると――。




